ラインナップ・パッケージの変遷
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/07/30 09:56 UTC 版)
「モービル1」の記事における「ラインナップ・パッケージの変遷」の解説
昭和の時代、モービル1は5W-50のラリーフォーミュラと、5W-30のフォーミュラの2種のラインナップであった。これらは1L缶のみの販売であり、その缶はTVCMで馴染みが深い、銀と黒色を基調としていた。当時、ドライブショップなどでは5W-40のラリーという銘柄も売られていたが、これはフランス製のものであり、正規品ではなかった。 その後、大手カー用品店チェーンが広まり、4L缶も販売されるようになる。当時、あるカー用品店のオリジナルブランドのヴァンテージ<フォーミュラーラリー>の中身は、モービル1のラリーフォーミュラと同じであった。しかし、販売価格ではモービル1より幾分安価に設定されていた。ある店では国産ラリーフォーミュラ、それと同じフォーミュララリー、そしてフランス製ラリーフォーミュラと、同じオイルが並んで売られており、三重価格をなしていた。APIのサービス規格がSGからSHに改正された時、モービル1は「そのままの処方でSH規格を取得した」として、その素性の良さをアピールする。なお、この当時のモービル1の承認欧州規格はCCMC G5 PD2。 API規格がSJに変更される。この時、長らく「100%化学合成のモービル1は、ガソリンとオイル交換を節約するオイルなのです」というキャッチコピーと、銀色の缶(容器)、イメージカラーで親しまれてきたモービル1であったが、新たな処方である三種のベースオイルのブレンドを意味した、「トリシンセティックテクノロジー」を謳い、基油の表示も100%化学合成油からトリシンセティックに変更した。これを契機にイメージチェンジを図り、金色の缶で販売される。この時、SAE粘度のラインナップを増やしたが、5W-30のフォーミュラと、5W-50のラリーフォーミュラ(以下RF)は日本では廃番になった。代わりに0W-40の粘度にラリーフォーミュラの名が引き継がれた。しかし、当時はまだ「0Wはスポーツ走行には向かない」「走行性能を重視する者は高い粘度を選択する」という誤解が根強くあり、暫くして5W-50のRFが復活する。0W-40はレースプルーブン(以下RP)と名を変えて販売された。当時、省燃費規格のILSAC規格はGF-2の時代であったが、当初0W-40のRPはILSAC GF-2の認証を得ておらず、スターバーストマークがなかった。しかし、SL化待たずしてRPはフォーミュレーション(処方)を変更し、GF-2の認証を得た。この事からモービルのRPへの力の入れ具合が分かる。(但し、現在SAE粘度で40番のオイルは、ILSACのGF規格の認証は得られない。)ちなみに2009年のRPのHTHS粘度(高温高せん断粘度)は3.7mPasであるから、♯50、60番の高温要求値3.7mPasを最低基準ながらもクリアしている。モービル1は定価を設定しないオープン価格方式であるが、(純正部品ルートを除く)5W-50のRFは最も高い販売価格で売られ、モービル1シリーズのフラッグシップオイルとなっている。しかし、オイルの売価と品質、コストは必ずしも一致しない。RFはモービル1に高級イメージを与える販売戦略的なオイルである。5W-50のRFは「高粘度、ワイドレンジ、高価格程良いオイル…」という偏見を持ったユーザー向けのオイルであり、0W-40のRPの方がコストがかかり、製造技術的にも難しい。モービルもRPを看板商品に位置づけた。2009年現在の日本語版カタログでも表紙に写真が載っているのは一番高価なRFではなくRPであることからもそれが見て取れる。現在海外では5W-50より0W-40の方が高価格で販売されている。(中国などでは0W-40のみ金色のボトル入りで販売されており、他の粘度は銀色のボトルで販売されている。) トリシンセティックの名が市場に浸透せず、再び基油表示は100%化学合成油に戻すことになる。100%化学合成油という表示に戻してからも、金色の缶で販売されていたが、ある時期から10W-30のみハイドロプロセスト(グループIII)を配合し、ロードマスター(以下RM)と名付けられた。この時点でRMの基油の表示から100%の文字は消え、単なる「化学合成油」と表示を変更する。 API規格がSLに移行し、モービル1も処方を変更してSL規格になった。SL化当初はまだ金色の缶で販売されていた。その後「スーパーシン」(SuperSyn)という耐摩耗剤が添加される様になり、同時にコスト高なトリシンセティックベースを見直す。この時、容器の缶の色が、金色から黄土色基調のグラデーションカラーに変更された。またオートバックスのみの専売で5W-30が復活し、30Vという銘柄で販売された。その後、5W-30もカタログ商品となり、一般的にFPという名で販売されるようになった。30VもFPもハイドロプロセストの配合油であったが、30Vには欧州の省燃費、かつロングライフ規格であるACEA A5の認証を得ていたが、後発のFPは省燃費規格のA1のみであった。(但し、RMはA5の認証も得ていた。)また、この頃からハイドロプロセスト(グループIII)の配合の有無に関わらず、全てのモービル1の基油表示は化学合成油に統一された。 API規格がSMになり、モービル1もSM化に合わせて処方を変更する。SM化でさらなる品質の向上が期待されたが、0W-30のNAはSL時代にはACEA A5の認証を得ていたが、SM化でA1のみとなってしまった。また、一部の自動車メーカーのアプルーバル規格の認証に変更があった。 APIのSNへの移行を待たずして、2007年、SM規格の間にベースオイルの処方が変更された。RP以外のモービル1シリーズ全てに水素添加精製油のグループIII基油であるキャタリカリープロセストが配合された。合わせてRMとFPも「Hydroprocessed」から「Catalytically processed」に表記が変更されている。この時、5W-30のFPはACEA A5の認証にグレードアップした。またメルセデスベンツのシートNo.229.1の旧アプルーバル規格の再取得は見送られ、229.5のみとなる。この時の配合の変更に関しては何のアナウンスもなく行われた。カタログ、WEBサイト、そして容器(缶)の側面の説明書きが「高性能ベースオイル、(PAO)…」であったのが、「高性能ベースオイル、(PAO+Catalytically processed)…」と変更しただけである。webサイトはかなり遅れてから書き換えられた。これ以降、純粋な100%化学合成油はRPのみになってしまっている。 2009年夏、容器の缶のデザインが変更された。処方の変更は発表されていないがDEなどに、MB.229.1などのアプルーバル規格が再び記載された。粘度ごとにカラーリングが違うパッケージカラーの缶になっている。従来の黄土色のイメージカラーは0W-40のRPが引き継いだ。この時WEBサイトも一新され、PAOやCatalytically processedといった具体的な基油の表記がなくなり、残念な結果となっている。従来、化学合成基油であるPAOの優位性を声高くアピールしてきたモービルであったが、現在WEBサイト、雑誌広告、カタログ・パンフレット、そして容器にも一切PAO(ポリαオレフィン)の文字は見られない。 2010年10月から新規格であるSN/GF-5規格の運用が開始されたが、SN規格のモービル1は世界的にこの時点では発売されていない。SN規格にはならなかったものの同時期に日本製のモービル1の容器デザインおよび規格表記が変更された。SuperSynの表示がなくなり、EolcsのAPI CFが廃止になったことから、API SM/CFがAPI SMと表示され、CFは相当規格扱いでSMとは離して表示された。また0W-20、0W-30に表記があったACEA A1/B1規格がSN規格品となるまでの間だけ一時的に外された。(処方の変更はなし) 2011年4月より国内品のMOBIL1がSN規格品に切り替えられる。製造国および容器のデザイン変更と共に国内品において従来使用されていた粘度別の名称(RF,RP,DE等)が廃止された。またユーザーに違いがわかり易いようにパッケージにはそれぞれのオイルのコンセプトや特長が英語と日本語で表記される様になった。(例:0W-40 Ultimate Performance スポーツドライビングに最適/5W-30 Fuel Economy 優れた省燃費性能 など) 0W-30はSM規格品で無くなっていたACEA A5規格が復活している。 2020年5月からSP/GF-6規格が運用開始され、それに伴い同年8月頃より0W-20、0W-30、5W-30、10W-30のSP規格品が登場。 2016年11月、EMGマーケティング合同会社の東燃ゼネラル石油への吸収合併に伴い、2017年1月製造分からパッケージ上部に東燃ゼネラル石油の刻印が入るようになる。その後、2017年4月にEMGルブリカンツに変更。 ハイドロプロセスト、キャタリカリープロセスト 石油重質分やワックスを高温・高圧化で水素を添加し、金属触媒を用いて分解、あるいは異性化し、不純物が少なく、高い粘度指数を持つ鉱油系ベースオイルの精製法。(主な基油にVHVI、MC分解などがある。)PAOより摩擦係数が低く、省燃費効果が高い油種もあり、また油膜が厚くショックの緩衝効果は高い油種もあるが、酸化安定性、耐熱性、低蒸発性など総合的にはPAOには敵わない。特に流動点の低さと低温流動性は大きな開きがある(ただし高度なワックス異性化を行ったものなどであれば低温流動性などを含めPAOと同等の性能を持たせることも可能)。生産には水素処理等にある程度のエネルギーの投資が必要となるもののPAOなどと比較するとコストが安くつき、高品質オイルが製造できるので、多用されるようになってきている。APIではグループIIIに分類される。石油・精製会社により製法、品質が異なる。また、従来から化学合成油として販売されていた、原料に天然ガス(GTL)を用いた、フィッシャー・トロプシュ法による高性能ベースオイル(XHVIなど)も分類上はグループIIIに含まれる(便宜上、一定以上の品質を持つGrIII基油はGrIII+などと称される事もある)。
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