ホモ・ネアンデルターレンシス
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/24 20:57 UTC 版)
「人類の進化」の記事における「ホモ・ネアンデルターレンシス」の解説
ホモ・ネアンデルターレンシス ラ・フェラシー(英語版)洞窟から出土した骨格化石標本「ラ・フェラシー1(英語版)」 ホモ・ネアンデルターレンシス(学名:Homo neanderthalensis、別の和名:ネアンデルタール人、異称:古典的ネアンデルタール、ネアンデルタール人類)は、約40万年前に出現し、2万数千年前に絶滅したとみられる。ただし、新しい学説(2014年発表)は約4万年前に絶滅したとする。 ネアンデルタール人は、ホモ属の独立種ホモ・ネアンデルターレンシスと見なすのが今日の世界の定説であるが、未だ発見されていない理論上のサピエンス種の原初的グループから早期に分岐した1亜種ホモ・サピエンス・ネアンデルターレンシスと見なす説が一部にはある(cf. 学名と異説)。既知で最古のサピエンス種であるイダルトゥの出現時期は約16万年前であるから、それより大きく先行していることになる。 ネアンデルタール人と現生人類(ホモ・サピエンス)の間での大規模な遺伝子流動、すなわち「混血」の可能性については、マックス・プランク進化人類学研究所所属の人類学者マーク・ストーンキング(英語版)が、ペンシルベニア州立大学所属時代の1997年に「これらの(ネアンデルタール人の骨から抽出されたミトコンドリアDNAに基づく)結果は、ネアンデルタール人がミトコンドリアDNAを現代人に与えなかったことを示している。(...略...)ネアンデルタール人は我々の祖先ではない。」と語っており、ネアンデルタール人のDNAの塩基配列研究もこの結果を支持した。また、多地域進化説の支持者は最近の非アフリカ人の核DNAが100万年前まで遡る可能性を示すことを研究したが、現在この研究の信頼性は疑われている。古植物学者で地球生物学者 (geobiologist) のミヒャエル・クリングス (Michael Krings) らが2008年に発表したミトコンドリアDNA解析に基づく分子系統学的知見は、大規模な混血が起こらなかったことを示すとともに、両者が約66万年前という一層遠い昔に共通祖先をもつことをも示唆した(cf. 現代人との混血)。ところが、2010年になると混血の痕跡があるとする研究結果が[誰?]によって『サイエンス』誌上で発表され、議論が収束する様子は見られない。 絶滅については、アメリカの人類学者ナオミ・クレッグホーン (Naomi E. Cleghorn. テキサス大学アーリントン校所属) は、イタリア半島やコーカサス山脈で約4万年前に相次いだ火山噴火を理由に挙げている。このような環境的要因を指摘する説は以前にも発表されていたが、約4万年前に起こった事象はその種の災害とは規模が違っており、例えば、複数の火山がほぼ同時期に噴火する苛烈なものであったという。なかでもヴェスヴィオ山周辺地域で約3万9000年前に発生したプリニー式噴火であるカンパニアン・イグニンブライト噴火(英語版)は、ヨーロッパ大陸における過去20万年間で最も規模の大きい噴火であった。「当時のヨーロッパ大陸には現生人類の小集団も住んでいたので、噴火の影響を同様に受けたと考えられる。しかしながら、ネアンデルタール人のほとんどがヨーロッパに居住していたのに対し、現生人類はアフリカやアジアにより大きな人口を抱えていたため、絶滅を避けられたようだ。」とクレッグホーンは考える。 ネアンデルタール人は約3万年前に滅亡したと長らく考えられていたが、2005年、イベリア半島南端にある「ジブラルタルの岩」に属するゴーラム洞窟が化石人類の遺跡であると判明し、ネアンデルタール人に特有の石器類や、洞内で火を利用していた痕跡(炭化した松かさ〈イタリアカサマツの球果〉や焚火跡)が見つかったことで、細々にではあってももっと若い時代にまで命脈を保っていたことが分かった。これらの遺物のうち最も古いものは約12万5000年前に属し、そして、最も若いものは約2万8000年~約2万4000年前に属しているという、放射性炭素年代測定の数値が出たからである。洞窟の奥には約2万300年~約1万9500年前のものと推定されるネアンデルタール人以外の人類の手形が遺されており、住人の入れ替わりがあったことを確認できる。ゴーラム洞窟遺跡が真に最も若い時期のネアンデルタール人の痕跡であるなら、かつて豊かな草原の只中にあったのが厳しい半乾燥地帯に変わってしまい、いつしか侵蝕を受けてアルボラン海に面してしまった地域と考えられるヨーロッパ大陸南西端部の小さな洞窟で、彼らは最期を迎えたことになる。しかし当節の冒頭で述べたように、新たな学説は大きく異なる時期を示しており、統一的見解を得るには程遠い。
※この「ホモ・ネアンデルターレンシス」の解説は、「人類の進化」の解説の一部です。
「ホモ・ネアンデルターレンシス」を含む「人類の進化」の記事については、「人類の進化」の概要を参照ください。
ホモ・ネアンデルターレンシス
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/03 08:19 UTC 版)
「言語の起源」の記事における「ホモ・ネアンデルターレンシス」の解説
「ネアンデルタール人の行動:言語」も参照 2007年にネアンデルタール人の舌骨が発見されたことで、ネアンデルタール人は解剖学的に現生人類と同じだけの音声を発する能力があるという説が唱えられるようになった。舌下神経は舌下神経管を通って舌の運動を制御しており、その大きさが言語能力を表しているとされる。30万年以上前に生きていたヒト科動物の舌下神経管はヒトよりもチンパンジーのそれにより近かった。 しかし、ネアンデルタール人は解剖学的にはしゃべる能力があったとはいうものの、現生人類と全く同じ程度の言語を有していたかについては2004年にリチャード・G・クラインが疑問を呈している。彼の疑問は昔の人類の化石記録と石器一式に基づいている。ホモ・ハビリスの出現後200万年の間ヒト科動物の石器技術はごくわずかしか変化しなかった。古い石器を広範にわたって研究しているクラインは、昔の人類の粗製石器一式は機能に基づいて分類することができないと述べ、ネアンデルタール人は石器の最終的な形態にほとんど関心を持たなかったようだと報告している。ネアンデルタール人は身体の方は言葉を発するのに十分なほど発達した器官を持っていても脳の方は現生人類のように言葉を話すのに要求されるレベルの複雑さに達していなかったであろうとクラインは主張している。ネアンデルタール人の文化的・技術的洗練の程度の問題は今なお論争の的になっている。
※この「ホモ・ネアンデルターレンシス」の解説は、「言語の起源」の解説の一部です。
「ホモ・ネアンデルターレンシス」を含む「言語の起源」の記事については、「言語の起源」の概要を参照ください。
Weblioに収録されているすべての辞書からホモ・ネアンデルターレンシスを検索する場合は、下記のリンクをクリックしてください。

- ホモ・ネアンデルターレンシスのページへのリンク