ホモ・フローレシエンシスとは? わかりやすく解説

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ホモ‐フローレシエンシス【(ラテン)Homo floresiensis】

読み方:ほもふろーれしえんしす

《「ホモフロレシエンシス」とも》2003年インドネシアフローレス島発見され化石人類1万数千年前ごろまで生息した考えられている。身長約1メートルで脳の容積もかなり小さいが、石器や火を使用した跡がみられるフローレス原人フローレス人


ホモ・フローレシエンシス

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/08/07 03:15 UTC 版)

ホモ・フローレシエンシス
(フローレス人)
生息年代: 190–50 Ka
ホモ・フローレシエンシスの頭骨
分類
: 動物界 Animalia
: 脊椎動物門 Chordata
亜門 : 脊椎動物亜門 Vertebrata
: 哺乳綱 Mammalia
: 霊長目(サル目Primates
亜目 : 真猿亜目 Haplorhini
上科 : ヒト上科 Hominoidea
: ヒト科 Hominidae
亜科 : ヒト亜科 Homininae
: ヒト族 Hominini
亜族 : ヒト亜族 Hominina
: ヒト属 Homo
: ホモ・フローレシエンシス
H. floresiensis
学名
Homo floresiensis
P. Brown et al., 2004
インドネシアのホモ・フローレシエンシス、赤色の部分

ホモ・フローレシエンシスフローレス人 Homo floresiensis)は、インドネシアフローレス島で発見された、小型のヒト属と広く考えられている絶滅種。[1][2] 身長は1mあまりで、それに比例しても小さいが、や精巧な石器を使っていたと考えられる。そのサイズからホビットトールキンの作品中の小人)という愛称が付けられている[3]。新種説に対しては、反論もある[4]。このヒト属は、当初は12,000年前まで生存していたと考えられていたが、より幅広い研究の結果、最も近年の生存証明は、50,000年前まで押し上げられた。[5] 2016年現在では、フローレス人の骨は10万~6万年前のもの、石器は19万~5万年前前後のものであるとみなされている。[2]

発見

ホモ・フローレシエンシスの骨が発見された洞穴。

2003年に、オーストラリアとインドネシアの合同チームが発見し、2004年10月に公表[6]2005年3月[1]にヒト属の新種であるという詳細な発表を行った。

リアンブア (Liang Bua) の石灰岩洞窟に、当初3万8千年から1万8千年前と考えられたホモ・フローレシエンシスの骨7体と獲物と考えられる象(ステゴドン)の骨、石器などが一緒に発見された[7]。骨は化石化しておらず、かなり脆い状態だった。当初、小さいため子供の骨と思われていたが、詳細な検討により成人の骨であることが判明した[8]

2005年に、既に発見されていた個体の右腕部分と新たな個体と考えられる下顎骨が発見された[9]。その下あごの骨も他の個体と同様に小さく、小型のであるという説を強化するものとなっている。

分析

ホモ・フローレシエンシスが生息していた当時のフローレス島の想像図。コモドオオトカゲとL. robustusが見られる

孤立した島では、しばしばウサギより大型の動物の矮小化が起こる(島嶼化)。同島にはステゴドン等数種類の矮小化した動物が存在した。一方で、コモドオオトカゲや大型のハゲコウen:Leptoptilos robustus)のような大型の動物も知られている[10]

脳と体躯をつかさどる遺伝子は全く異なっており、体躯が小型化しても、脳は同一比率で小さくなるわけではないといわれている[11]。その点からも、フローレシエンシスが新種の原人であるという点について反論がなされている。フローレシエンシスの脳容量は426ccといわれており、体重に対する脳重量の比はホモ・エレクトスと大型類人猿の間に位置する[12]。この点について、マダガスカルの古代カバの研究により、島嶼化でより脳が小型化する可能性も指摘されている[13]

ホモ・フローレシエンシスは直接の祖先ホモ・エレクトス(84万年前ごろ生息)が矮小化したものと考えられているが、より原始的な祖先に起源を持つ可能性も示されており、ホモ・ハビリスから進化したという説もある[13][14]。脳容量は426立方センチで、平均的なエレクトスの半分程度、大型のチンパンジーよりも小さい。高次の認知に関する部分の大きさは、現代人と変わらず[15]、火を使った形跡や化石から考えて、かなりの知能があったと考えられている。足は第一指が他の指と平行であり、爪先が伸縮可能な点が人類と共通であるが、第一指の小ささや長くカーブしている外側の指で体重を支える点はチンパンジーに近い。土踏まずは存在せず、現代人と比べ二足歩行は苦手だったと見られている[13][14]

議論

発見された骨は脳の異常な小ささから、小人症ピグミーのように矮小化した、あるいはクレチン症ラロン症候群といった発育上の障害をもった、ホモ・サピエンス・サピエンスの骨だと主張する研究者も多い。これに対しニューヨーク州立大学ストーニーブルック校のウィリアム・ユンゲルスや、ロンドン自然史博物館のエレノア・ウェストン、エイドリアン・リスターなどは、新たな研究からやはり新種人類であるという説を唱えている。ペンシルベニア州立大学のロバート・エックハルは、新種人類説は以前の論文と矛盾し場当たり的だと批判している。ハーバード大学のダニエル・リーベルマンは、新種人類かを判定するにはさらなる化石が必要だと述べており、専門家の間でも評価は定まっていない。[13][14][16]

脚注

  1. ^ a b Morwood, Michael J., et al. (2005). “Further evidence for small-bodied hominins from the Late Pleistocene of Flores, Indonesia” (PDF). Nature 437 (7061): 1012-1017. doi:10.1038/nature04022. http://sydneybusinessschool.edu.au/content/groups/public/@web/@sci/@eesc/documents/doc/uow019094.pdf 2015年12月23日閲覧。. 
  2. ^ a b Homo floresiensis”. Smithsonian Institution. 2015年12月25日閲覧。
  3. ^ パラオ古代人ホビットやドワーフではなかった”. ナショナル ジオグラフィック. ナショナル ジオグラフィック協会 (2008年8月27日). 2023年11月25日閲覧。
  4. ^ “Consideration of more appropriate microcephalic syndromes and specimens supports the hypothesis of modern human microcephaly.” Martin, Robert D., et al. (2006). “Comment on" The brain of LB1, Homo floresiensis"” (PDF). Science 312 (5776): 999. doi:10.1126/science.1121144. http://users.clas.ufl.edu/krigbaum/4468/Martin_etal_Flores_2006_Science.pdf 2015年12月22日閲覧。. 
  5. ^ 文=Adam Hoffman/訳=三枝小夜子 (2016年4月1日). “フローレス原人を絶滅させたのは現生人類だった?”. National Geographic. 2016年7月25日閲覧。
  6. ^ Brown, Peter, et al. (2004). “A new small-bodied hominin from the Late Pleistocene of Flores, Indonesia”. Nature 431 (7012): 1055-1061. doi:10.1038/nature02999. 
  7. ^ Morwood, Michael J., et al. (2004). “Archaeology and age of a new hominin from Flores in eastern Indonesia”. Nature 431 (7012): 1087-1091. doi:10.1038/nature02956. 
  8. ^ "...who died around the age of 30..."LB-1”. Smithsonian Institution. 2015年12月22日閲覧。
  9. ^ "The new fossils consist of the right humerus, radius and ulna of the LB1 skeleton, the mandible of a second individual (LB6),..."Lieberman, Daniel E. (2005). “fossil finds from Flores”. Nature 437 (7061): 957-958. doi:10.1038/437957a. https://dash.harvard.edu/handle/1/3743585 2023年8月17日閲覧。. 
  10. ^ Meijer, Hanneke J. M.; Sutikna, Thomas; Wahyu Saptomo, E.; Tocheri, Matthew W.. “More bones of Leptoptilos robustus from Flores reveal new insights into giant marabou stork paleobiology and biogeography”. Royal Society Open Science 9 (7): 220435. doi:10.1098/rsos.220435. PMC 9277297. PMID 35845853. https://royalsocietypublishing.org/doi/10.1098/rsos.220435. 
  11. ^ 河合 2010, p. 263.
  12. ^ Falk, D. et al. (19 May 2006). “Response to Comment on 'The Brain of LB1, Homo floresiensis'”. Science 312 (5776): 999c. Bibcode2006Sci...312.....F. doi:10.1126/science.1124972. 
  13. ^ a b c d Marlowe Hood (2009年5月7日). “「ホビット」はヒトの新種、米英の研究者が論文で指摘”. AFPBBNews. https://www.afpbb.com/articles/-/2599993?pid=4119109 2012年3月15日閲覧。 
  14. ^ a b c John Roach (2009年5月8日). “走りは苦手なホビット、やはり新種か”. ナショナルジオグラフィック ニュース. https://natgeo.nikkeibp.co.jp/nng/article/news/14/1190/ 2023年11月25日閲覧。 
  15. ^ Falk, Dean; Hildebolt, Charles; Smith, Kirk; Morwood, Mike J; Sutikna, Thomas; Brown, Peter; Jatmiko; Saptomo, E Wayhu; Brunsden, Barry; Prior, Fred (2005). “The brain of LB1, Homo floresiensis. Science (American Association for the Advancement of Science) 308 (5719): 242-245. doi:10.1126/science.1109727. https://doi.org/10.1126/science.1109727. 
  16. ^ Rex Dlton, "Hobbit was 'a cretin'", Nature, 2008, 452, 12

参考文献

関連項目

外部リンク


ホモ・フローレシエンシス

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/24 20:57 UTC 版)

人類の進化」の記事における「ホモ・フローレシエンシス」の解説

ホモ・フローレシエンシス 生態復元像(男) ホモ・フローレシエンシス(学名Homo floresiensis別の和名:フローレス人)は、約19万年から約5万年前という比較最近生存期間とするタクソンである(※発見当初は約10万年~約1.2万年前と推定された)。彼らの体格極めて小さく、これは島嶼化よるもの考えられている。「ホビット」という愛称もこれに由来する。 フローレシエンシス種の主要な発見は、2003年ニュージーランド考古学者マイク・モーウッド(英語版)によってインドネシアフローレス島から発見され30歳前後思しき女性骨格化石であり、彼女の生存年代は約1.8万年前と見積もられた(※この数値は今では支持失っている)。この女性の推定される生前の姿は、身長わずか1メートルで、脳容量は380cm3とチンパンジー並み小さく現代人女性平均1400cm3)の3分の1程度でしかなかった。 フローレシエンシス種は、その矮小さと年齢から、実際に最近まで生きていた現生人類共通しない特徴をもつホモ属興味深い例考えられている。すなわち、いつの時点かで現生人類祖先共有するが、現生人類系統群とは異なる独自の進化過程辿った思われ多く研究者はエレクトゥスの系統群共通祖先含まれる考えている。しかし、彼らが本当に別の種であるかは未だ議論続いており、小人症患った現生人類考え研究者一部にはいる。@media screen{.mw-parser-output .fix-domain{border-bottom:dashed 1px}}この[どこ?]仮説は、フローレス島に住む現代人小柄であるために、ある程度説得力がある[要出典]。小柄さと小人症によって本当にホビットのような矮小な地域個体群生まれた可能性はある。別種説への他の主要な反論は、現生人類関連した道具類とともに発見されたという点である。 しかしいずれにしても、現在知り得る進化系統樹結果から見れば、彼らの先には何も生まれなかった。その意味で、進化上の完全な傍流終わった

※この「ホモ・フローレシエンシス」の解説は、「人類の進化」の解説の一部です。
「ホモ・フローレシエンシス」を含む「人類の進化」の記事については、「人類の進化」の概要を参照ください。

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