ひと‐あぞく【ヒト亜族】
ヒト亜族
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/08/26 09:04 UTC 版)
ヒト亜族 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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地質時代 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
約700万年前もしくは約600万年前[1] - 現世 (新生代新第三紀中新世末期[メッシニアン] - 第四紀完新世[サブアトランティック〈cf.〉]) |
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分類 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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学名 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
Hominina Gray, 1825 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
和名 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
人類 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
英名 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
humans | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
属 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
ヒト亜族(ひとあぞく、学名 Hominina)は、哺乳綱霊長目(サル目)ヒト科ヒト亜科ヒト族の亜族である。ヒト族には他にチンパンジー亜族(チンパンジー属のみの単型)が属し、ヒト亜族はチンパンジー亜族の姉妹群である[2]。
ヒト亜族にチンパンジー属を含める説もあるが、ここでは先に定義したチンパンジー属(チンパンジー亜族)の姉妹群について述べる。逆に、この系統に族などより上位の階級を充てる説もあり、その場合はヒト亜族というタクソン名(分類群名)は使われない。分類階級が不安定なため、しばしばこの系統を指すのに人類 (英語: humans) という語も使われる。
チンパンジー亜族と分かれ、直立二足歩行をする方向へ進化したグループである。分子系統学的知見から、両者が分化した時期は約600万- 約500万年前(新生代新第三紀中新世末期[メッシニアン中期])と推定されているものがある。しかしその一方、既知[1]で最古の人類である可能性が高いとされるサヘラントロプス属(トゥーマイ猿人)の化石は、約700万- 約600万年前(同・メッシニアン前期)の地層から産出している。約700万年前にヒト亜族とチンパンジー亜族に分岐したと推定されている[3]。DNAの変異にかかる時間に基づき推定すると800-700万年前に分岐した可能性が高いとの論文が発表されている[4]。
分類諸説
分子系統以前は、ヒト上科(人類と類人猿)は、人類のみからなるヒト科と、全ての類人猿を含むオランウータン科の2科、もしくはオランウータン科からテナガザル科を分離した3科に分類されていた。つまり、人類と類人猿もしくは人類と大型類人猿が互いに姉妹群だと考えられていた。
しかし分子系統により、人類の姉妹群はチンパンジー属と判明し(ただし初期にはゴリラを加えた3分岐が不確実にしか解けていなかった)、人類には科より下の階級が充てられるようになった。今では使われないものも含め、以下のような分類がある。出典の中には、諸説のうちひとつとして挙げているものを含む。
- ヒト科 - オランウータン科(全ての類人猿)と共にヒト上科となる。分子系統以前の分類。
- ヒト科 - オランウータン科(大型類人猿)・テナガザル科と共にヒト上科となる[5]。分子系統以前の分類。
- ヒト科 - テナガザル科・オランウータン科・ゴリラ科・チンパンジー科と共にヒト上科となる[6]。
- ヒト亜科 - ゴリラ亜科・チンパンジー亜科と共にヒト科となる[7]。
- ヒト亜科 - チンパンジー亜科(ゴリラを含む)と共にヒト科となる。(ヒト, (チンパンジー, ゴリラ)) という現在では否定された系統関係に基づく分類。
- ヒト族 - チンパンジー族と共にヒト亜科となる[6]。
- ヒト族 - チンパンジー族・ゴリラ族と共にヒト亜科となる[8]。
- ヒト亜族 - チンパンジー亜族と共にヒト族となる[5][9]。
- 階級なし(亜族相当?) - チンパンジー属・ゴリラ属と共にヒト族となる[8]。
- 階級なし(亜族未満) - チンパンジー属と共にヒト亜族となる[5][10]。
属と種
- †サヘラントロプス属 Sahelanthropus :トゥーマイ猿人。約700万年前[11]。
- †オロリン属 Orrorin :約610万- 約580万年前[12]。
- †アルディピテクス属 Ardipithecus :ラミドゥス猿人とカダッバ猿人。約580万- 約440万年前[13]。
- †ケニアントロプス属 Kenyanthropus
- †アウストラロピテクス属 Australopithecus :旧称「華奢型アウストラロピテクス」。約540万- 約150万年前[14]。
- †アウストラロピテクス・アファレンシス A. afarensis :アファール猿人。
- †アウストラロピテクス・アフリカヌス A. africanus :アフリカヌス猿人。
- †アウストラロピテクス・アナメンシス A. anamensis :アナム猿人。
- †アウストラロピテクス・バーレルガザリ A. bahrelghazali
- †アウストラロピテクス・ガルヒ A. garhi :ガルヒ猿人。
- アウストラロピテクス·ラミダス ラミダス猿人
- パラントロプス属 Paranthropus :旧称「頑丈型アウストラロピテクス」。約270万- 約120万年[15]。
- †パラントロプス・エチオピクス Paranthropus aethiopicus :エチオピクス猿人。
- †パラントロプス・ロブストス P. robustus :ロブストゥス猿人。
- †パラントロプス・ボイセイ P. boisei :ボイセイ猿人。
- ヒト属(ホモ属) Homo :約250万年前- 現世[16]。
- †ホモ・ハビリス H. habilis :ハビリス原人。
- †ホモ・ルドルフエンシス H. rudolfensis
- †ホモ・エルガステル H. ergaster :ホモ・エルガスターとも称す。
- †ホモ・エレクトス H. erectus :ホモ・エレクトス人類、直立原人。7亜種あり[1]。
- †ホモ・アンテセッサー H. antecessor :ホモ・アンテセッソールとも称す。
- †ホモ・ハイデルベルゲンシス H. heidelbergensis :ハイデルベルク人。
- †ホモ・ローデシエンシス H. rhodesiensis
- †ホモ・ケプラネンシス H. cepranensis
- †ホモ・ゲオルギクス H. georgicus :ドマニシ原人。
- †ホモ・ネアンデルターレンシス H. neanderthalensis :ネアンデルタール人類(ネアンデルタール人、ほか)。
- †ホモ・フローレシエンシス H. floresiensis :フローレス原人。
- †ホモ・ナレディ H. naledi
- ホモ・サピエンス H. sapiens :現生人類およびヘルト人。約16万年前 - 現世[17]。
- †ホモ・サピエンス・イダルトゥ H. s. idaltu :ヘルト人。
- ホモ・サピエンス・サピエンス H. s. sapiens :現生人類。
脚注
- ^ a b c 2009年の知見。
- ^ Wood and Richmond; Richmond, BG (2000). “Human evolution: taxonomy and paleobiology”. Journal of Anatomy 197 (Pt 1): 19–60. doi:10.1046/j.1469-7580.2000.19710019.x. PMC 1468107. PMID 10999270 .
- ^ 池田清彦、『38億年生物進化の旅』(2010年)、186頁、株式会社新潮社、ISDN978-4-1D-423106-5
- ^ 800万〜700万年前か=人類出現、DNA解析で―国際チームウォール・スリート・ジャール2012年8月14日
- ^ a b c Lewin, Roger (2005), Human Evolution: An Illustrated Introduction, 5th ed.
- ^ a b Cela-Conde, Camilo J.; Ayala, Francisco José (2007), Human evolution: trails from the past, Oxford University Press
- ^ McHenry, Henry M. (2009), “Human Evolution”, in Ruse, Michael; Travis, Joseph, Evolution: the first four billion years
- ^ a b Wolfe-Coote, Sonia, ed. (2005), “Definition of Primates Model”, The Laboratory Primate
- ^ Andrews, Peter; Harrison, Terry (2005), “The Last Common Ancestor of Apes and Humans”, in Lieberman, D.E; Smith, R.J.; Kelley, J, Interpreting the Past: Essays on Human, Primate, and Mammal Evolution: In Honor of David. Pilbeam
- ^ Bailey, Wendy J. (1991), “Molecular Evolution of the vq-Globin Gene Locus: Gibbon Phylogeny and the Hominoid Slowdown”, Mol. Bid. Evol. 8 (2): 155–184
- ^ 新第三紀中新世末期(メッシニアン前期)。
- ^ 新第三紀中新世末期(メッシニアン中期)。
- ^ 新第三紀中新世末期(メッシニアン中期) - 鮮新世初期(ザンクリアン初期)。
- ^ 新第三紀中新世末期(メッシニアン中期)- 第四紀更新世中期。
- ^ 新第三紀鮮新世中期(ピアセンジアン中期)- 第四紀更新世前期。
- ^ 第四紀更新世前期(ジェラシアン初期) - 第四紀完新世)。
- ^ 第四紀更新世後期(リス氷期[cf.])- 完新世(サブアトランティック[cf.])。
関連項目
外部リンク
ウィキスピーシーズには、ヒト亜族に関する情報があります。
ヒト亜族
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/04 16:03 UTC 版)
「ヒト亜族」を参照 1000万年ほど前、地球の気候は寒冷・乾燥期に入り、その結果約260万年前から氷河時代が始まった。その結果起こったことの一つとして、北アフリカの熱帯雨林が縮小し始め、まず開けた草原に置き換わり、ついには砂漠(現在のサハラ)になった。これは樹上生活をする動物に対し、新しい環境へ適応するか、死滅するかを迫るものだった。彼らの環境が一面の森林から、ひらけた平地で隔てられた継ぎはぎ状の森へ変わってゆくにつれ、一部の霊長類は部分的もしくは完全な草上生活へと適応した。ここに至り、彼らはそれまで無害だったライオン・トラなどの捕食者と直面することになった。 一部のヒト亜族(アウストラロピテクス)は、胴体を地面と垂直に保持し後ろ足で歩くという直立二足歩行を身につけることによってこの困難に適応した。また前足(腕)が歩行動作から自由になり、(代わりに)食物を集めるといった動作に手を使えるようになった。ある時点で、二足歩行の霊長類は利き手を身につけた。これにより彼らは棒、骨、石を手に取り、それを武器にしたり、小動物を殺したり、ナッツを砕いたり、死体を切り刻んだりする道具として使うことが可能になった。言い換えれば、それらの霊長類は技術の使用を発達させた。二足歩行し道具を使う霊長類はヒト亜族を形成し、サヘラントロプスのようなその最も初期の種は700-500万年前頃に存在した。 そして最も肝心な事は、直立二足歩行を行う事によって、頭部が胴体の直上に位置するようになった事である。これにより頭部の姿勢が極めて安定し、他の四足歩行の動物と比べ、体躯に比して極めて大型の頭部を支える事が可能になった。ひいては、他の動物に比べてより大型の脳を持つ事を可能にしたのである。その結果、約500万年前からヒト族の脳は大きさと機能分化の両面で急速に発達し始めた。
※この「ヒト亜族」の解説は、「人類の知能の進化」の解説の一部です。
「ヒト亜族」を含む「人類の知能の進化」の記事については、「人類の知能の進化」の概要を参照ください。
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