チーズの歴史とは? わかりやすく解説

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チーズの歴史

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/05/10 16:57 UTC 版)

チーズは古くからある食べ物であり、加工食品としては最古の歴史を持ち[1]、その起源は先史時代まで遡る。自然にレンネットの恩恵に与ることのできる、反芻動物でつくった嚢にいれてを運搬する習慣があるところには必ずついてまわるといってよい。チーズづくりの発祥の地がどこであるかを示す決定的な証拠はなく、ヨーロッパ中央アジアあるいは中東かは定まっていない。中欧ポーランドでは紀元前5500年ごろのスウィデリアン文化時代英語版におけるチーズづくりの道具が発見されており、これが現在のところ最も古いチーズ製造の証拠である。そこから下って紀元前3100年ごろになるとサハラメソポタミア牧草地帯でエジプト人シュメール人によって酪農が営まれていたという有力な証拠が存在する。またチーズづくりがヨーロッパで古くから定着していたことはヘレニズム初期の神話からも読み取ることができる[注釈 1]大プリニウスによれば、ローマ帝国が成立する時代には経済活動としてすでに洗練されていて[2]、高価なチーズは上流階級のローマ人の舌を満足させるために長い距離をものともせずに取引されていた。


注釈

  1. ^ ギリシア神話における文化の英雄は アリスタイオスである。彼はギリシア養蜂とチーズづくりを伝えた神である。
  2. ^ 古代シュメールの時代には、牧夫が納めるチーズの割当が定められていたという記録がある。はかり には決まった量の液体が入る壺が使われていた(伝統的な穀物用のはかり でもある)。これは古典期にはチーズが固形物として計量されていたことを考えると対照的である[7]
  3. ^ NBC 11196[13], the〈abra's of Dumuzi, Ninkasi, and I'kur receive butter and cheese from the 'abra of Inanna(ドゥムジ英語版ニンカシ英語版、I'kurのアブラは、イナンナのアブラからバターとチーズを受け取っていたとされる[14]); a Sumerian/Akkadian bilingual lexicon of ca 1900 BCE lists twenty kinds of cheese.(紀元前1900年頃のシュメール語/アッカド語の対訳辞書にチーズ20種類の記載がある。)〉
  4. ^ implications of modern pre-industrial Cretan pastoralists and cheese production for interpreting the archaeological record, are discussed by H. Blitzer(考古学的記録を解釈する上で、現代のクレタ島の工業化以前の牧畜民とチーズ生産が示す意味について、H・ブリッツァーの論がある[16]).
  5. ^ The Columbia Dictionary of Quotations [25]によると『ニューズウィーク』誌1962年10月1日号に掲載。Numbers besides 246 are often cited in very similar quotes; whether these are misquotes or whether de Gaulle repeated the same quote with different numbers is unclear.(前出の「246」以外の数字も類似の引用文が示している。これらは引用者の誤りか、それともド・ゴール自身が異なる数字で同じ引用を繰り返したのかは不明である。)。
  6. ^ Details of the local costs and export duties in importing cheese from Apulia to Florence, ca 1310-40, are included in Francesco di Balduccio Pergolotti's Practice of Commerce[26](フランチェスコ・ディ・バルドゥッチョ・ペルゴロッティ著『商業の実践』にプーリアからフィレンツェへチーズを輸入する際(1310年頃-1340年頃)の現地コストと輸出関税の詳細を記載する。)
  7. ^ こうした中世における食品の階層化とでも呼ぶべき現象についてステーヴン・メネルが議論を行っている。 All Manners of Food: Eating and Taste in England and France from the Middle Ages to the Present,[27]; マネル[疑問点]によれば「酪農によって生み出されるものは低い序列におかれ、気取った人間は眉を顰める(ひそめる)ものとしてきわめて鮮明な区別がされて」、「プロヴァンスの山村に暮らす農民たちがアルルの大司教に食生活の面で勝る数少ない要因が、高いチーズの消費量だった」という。
  8. ^ "the advice to avoid peaches, apples, pears and cheese, etc., as injurious to health" as unintelligible to moderns.[28](桃、りんご、梨、チーズなどは健康を害するので避けなさいという助言は、現代人には理解できない。)

出典

  1. ^ a b 大谷 2007, p. 25.
  2. ^ The History Of Cheese: From An Ancient Nomad’s Horseback To Today’s Luxury Cheese Cart”. The Nibble. Lifestyle Direct, Inc.. 2009年10月15日閲覧。
  3. ^ Simoons 1971, pp. 431-.
  4. ^ 大谷 2007, p. 26.
  5. ^ Ridgwell, Jenny; Ridgway, Judy (1986). Food around the World. Oxford University Press  ISBN 0-19-832728-5
  6. ^ Reich, Vicki (2002年1月). “Cheese” (英語). Newsletter. 2010年8月22日時点のオリジナルよりアーカイブ。2009年10月15日閲覧。
  7. ^ Carmona & Ezzamel 2007, pp. 177–209.
  8. ^ トゥーサン=サマ (1998) 112ページ。
  9. ^ 大谷 2007, p. 27.
  10. ^ a b 7000年前にチーズ作り、土器に証拠発見 『ネイチャー』」『AFPBB News(ニュース 環境・科学)』、2012年12月13日、11:23。
  11. ^ 世界の雑記帳:7500年前にチーズ製造の証拠、土器から発見=研究」『毎日新聞ウェブ版(毎日jp)』毎日新聞社、2012年12月14日。2023年12月26日閲覧。オリジナルの2012年12月14日時点におけるアーカイブ。
  12. ^ Toussaint-Samat 2009, p. 103.
  13. ^ 5 NT 24, dated Shu-Sin 6.
  14. ^ Hallo 1972, "The House of Ur-Meme".
  15. ^ Ventris & Chadwick 1973, pp. 572, 588.
  16. ^ Blitzer, H. (1990年). “Expedition” (pdf) (英語). ペンシルベニア大学考古学人類学博物館. 2009年10月8日閲覧。
  17. ^ 大プリニウス 著『博物誌』第iii, 85.
  18. ^ a b トゥーサン=サマ (1998) 114ページ。
  19. ^ エンゾ、高石、村上 1986, p. 232.
  20. ^ Notker.
  21. ^ a b c d トゥーサン=サマ (1998) 115ページ。
  22. ^ a b 大谷 2007, p. 28.
  23. ^ Toussaint-Samat 2009, p. 106.
  24. ^ British Cheese homepage” (英語). British Cheese Board (2007年). 2009年10月15日閲覧。
  25. ^ The Columbia Dictionary of Quotations. Columbia University Press. (1993). p. 345 ISBN 0-231-07194-9
  26. ^ Lopez, Raymond & Constable 2001, pp. 117, no. 46.
  27. ^ Mennell, Stephen (1996). “Eating in the Middle Ages: the social distribution of food”. All Manners of Food: Eating and Taste in England and France from the Middle Ages to the Present. Illini books. pp. 41ff ISBN 9780631132448, 9780252064906, 0631132449, 0252064909
  28. ^ Mead, William Edward (1931). The English Medieval Feast 
  29. ^ Smith, John H. (1995). Cheesemaking in Scotland - A History. The Scottish Dairy Association. OCLC 635719562  ISBN 9780952532309, 0-9525323-0-1.
  30. ^ Cheesemaking in Scotland - A History”. 2006年6月29日時点のオリジナルよりアーカイブ。2009年10月8日閲覧。 “Full text (Archived link)”
  31. ^ Cheesemaking in Scotland - A History”. 2006年10月6日時点のオリジナルよりアーカイブ。2009年10月8日閲覧。 “Chapter with cheese timetable (Archived link)”
  32. ^ [29]. 全文のアーカイブ版[30]、チーズの歴史年表を示した章のアーカイブ版[31]を参照。
  33. ^ エンゾ、高石、村上 1986, p. 233.
  34. ^ Anon (2006年4月1日). “Hubble Resolves Expiration Date For Green Cheese Moon”. Astronomy Picture of the Day. NASA. 2009年10月8日閲覧。
  35. ^ 大谷 2007, p. 30.
  36. ^ 大谷 2007, p. 28-29.
  37. ^ 大谷 2007, p. 29.
  38. ^ McGee 2004, p. 54.
  39. ^ 大谷 2007, p. 33.
  40. ^ 日本酪農発祥の地 千葉県酪農のさと(2024年5月8日閲覧)
  41. ^ 福留奈美(著)、食文化研究部会(編)「19 世紀末から 20 世紀にかけての新聞広告を通してみる 牛乳・乳製品の普及のプロセス — 広告数の推移と牛乳の浸透を中心に―」『食文化研究』第16巻、日本家政学会、2020年、1-12頁、doi:10.50859/jfcj.16.0_1 
  42. ^ a b 大谷 2007, p. 34.


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