ギスヤンキの歴史
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/04/14 10:41 UTC 版)
遙か昔、現在知られている多くの世界が誕生する前、イリシッドはニヒラス(Nihilath)という広大な帝国を支配していた。彼らの版図は幾つかの次元界に跨る多くの世界に及んでいた。千年の建設期間の後、彼らは“半影(Penumbra)”という太陽の周囲を半径1億マイルに及ぶ星々の環で囲った人工的な世界を構築した。 帝国の保持には多くの奴隷を必要とした。ある資料(『Polyhedron』157号)では、かつてイリシッドが征服し版図に加えたPharagosという異世界から連れてきたとしている。『Dungeon』100号によると現在は「フォーゴトン・レルムやグレイホークのような魔法や神の奇跡に乏しい、注意を引かない物質世界」であり、その荒廃した砂漠の下に、ギスの祖先たちが崇拝していた神の石化した骸があると記述されている。別の資料(『ドラゴン』298号)では、グレイホーク世界(D&Dの原型となったミニチュアゲーム、『チェインメイル』の背景世界)にあるオアリク大陸西部に存在したザルム(Zarum)という、首都アニトゥル(Anithor)から他の種族を支配していた人間型種族の地下帝国について言及している。この帝国は古代の儀式によって厳密なカースト制度を築いていた。今日、ザルムの寺院や聖地の遺跡からは、彼らが崇めていた神の名は発見されていない。ザルムが隆盛していた期間がどのくらいであったか確証はないが、グレイ・エルフの賢者はオアリク大陸西部を破壊したデーモン戦争のおよそ2000~3000年前ではないかと推測している(ギスの祖先が永久にこの世界から去った後、アニトゥルの遺跡の一部にはドラウのキルセク(Kilsek)族が植民した。彼らはその新しい開拓地をカラン・ゲルド(Kalan-G'eld)と名付けた)。 ある時点で、イリシッドは別の次元界からザルムに侵入した。原住民は激しく抵抗したが敗れ、奴隷にされた。“怒れる魂の川”はイリシッドとザルム住人とも戦いの名残の1つである。多くがイリシッドの奴隷となるために異世界にある別の場所へと連行された。他のザルムの都市は数え切れないほどの世代の間、イリシッドの看守によって強制労働を強いられる奴隷置き場と化した。今日、ただ“先人”としてのみ記憶されているかつて人間だった者たちは何千年もの間ニヒラス帝国の奴隷だった。幾らかの者たちはグリムロック(英語版)の祖先となり、イリシッドの奴隷としてさまざまな次元世界へと分散した。全ての世界で、奴隷たちがイリシッドの精神支配から逃れることは出来ないと、イリシッドは疑う余地もなかった。もしアストラル界、エーテル界、そして彼らが締め上げている外界における拡張を止められるのなら、悪魔たちによる流血戦争の中断をも決意させるとまで言われた。 だが、イリシッドがヴォーア(Voor)と呼ばれる不思議な鉱物で形成された虫型生物と遭遇したことによって、イリシッドの帝国はこれまでに直面した最大の危機に直面する。宇宙空間を空気もいらず浮遊する胞子状の卵を飛ばして、あらゆる無機物をサナギにしてしまうヴォーアにはいかなる超能力も効かなかった。イリシッドの奴隷軍ではヴォーアの侵攻に太刀打ちできず、長期的な消耗に業を煮やしたイリシッドは肉体、精神、そして超能力を強化する“トゥメロジェネシス・タンク(tumerogenesis tanks)”なる装置を建設し、奴隷兵を強化した。それから千年が経過し、イリシッドの奴隷たちはもはや人間の姿をとどめておらず、古い象牙のような黄褐色の肌に、尖った耳、手足の長い現在のギスヤンキたちの祖先となった。 長きに渡るイリシッドとヴォーアとの戦争は、強化された奴隷兵の力によってヴォーアの絶滅という形で終結したが、帝国内のパワーバランスに変化が生じた。奴隷たちは戦場慣れし、超能力にも益々熟達していった。イリシッドは彼らに従順なままでいるよう一層残酷な仕打ちをしたが、それはより多くの反乱と残酷な報復を招いた。 そんな折、ギス(Gith)が登場した。誰かが述べるに、ギスは子供よりはほんの少し背が高いだけの下級兵士だったが、強力なイリシッド貴族の護衛だったという。だが、彼女の心身の力は素晴らしかったし、彼女の怒り、憎しみ、実力、カリスマ性は奴隷たちを勝利に導くに十分だった。そしてイリシッドの帝国は奴隷蜂起によって瓦解した。すべての牙城が破壊されたわけではないが、広範な帝国は分断され、今日でもイリシッドの勢力は回復していない。イリシッドは挽回と奴隷だった者たちへの復讐を誓い、各世界にあるアンダーダークへと身を眩ませた。 だが戦後、ギスは自らの身内(彼らは“ギスの子(children of Gith)”を意味するギスヤンキと呼ばれるようになる)を自由にはさせず、戦闘を継続する道を選んだ。終戦直後から、彼女はすべてのイリシッドを駆逐すべく永遠の征討軍を組織した。ギスヤンキの何割かはギス軍の規律に奮い立ったが、他の者は戦いに倦んでいた。そうした反体制派の指導者として、ゼルシモン(Zerthimon)が最も気炎を上げていた。彼はギスが過去の戦勝に驕り、自らがイリシッドの専制政治を継承せんとしている、人々を安全へと導くには不適切だ、すぐに辞任するべしと主張した。ギスは要求を拒絶し、ゼルシモンとその支持者は新たな暴君に支配されることを由としなかった。やがて両者の対立は内戦を勃発し、疲弊していた世界の多くが灰燼に帰した。 その内戦の最中、ゼルシモンに何があったのか、ある者(アストラル界のガイド)はゼルシモンが殺されたとも、他の者(地上世界の者)は彼がギスとの一騎討ちで勝利したものの助命したとも伝えている。いずれにせよ、ゼルシモンの支持者たちは外方次元界の1つ、混沌の地リンボに逃れ、やがて彼らはギスゼライの祖先となる。一方、ギスの征討軍によりギスヤンキが被った被害は余りに大きかったので、イリシッドとギスゼライ双方を絶滅するための拠点を作り直すためにアストラル界にあるイリシッドの城塞に後退した。 まもなく、ヴラーキス(Vlaakith)という魔術師がギスに、我らが生き残るためには同盟者の助けが必要だと説いた。神々との交渉が拒絶され、リンボを棲み家とする混沌としたスラードとの交渉が決裂した時、ヴラーキスは九層地獄に赴き、第2階層の主にして老獪なアークデヴィル、ディスパテル(Dispater)に面会した。ギスヤンキ全員の魂を渡すというディスパテルの要求に応じることはできなかったが、ディスパテルは代わりに、ドラゴンの女王ティアマトの配偶者エフェロモン(Ephelomon)を紹介し、ティアマトがデヴィルを借り入れる際に結んだのと同様の契約を結べばどうかと提案した。他の同盟がすべて頓挫したので、ギスはティアマトの元へと向かった。エフェロモンは、ギスヤンキがティアマトの要請に応じて助力することと引き替えに、配下のレッド・ドラゴンを乗騎とすることに合意した。そして、ディスパテルは契約のためには人質が必要とされるであろうと示唆した。かくしてギスは第2階層にある“鉄の街”に幽閉され、偉大なる指導者の魂はディスパテルの手に渡った。間もなく、アストラル界のギスヤンキの元にエフェロモンが到来し、契約の履行と、ヴラーキスを後継者として征服活動を継続するようにというギスの遺言を告げた。 ヴラーキスはギスの後を継いでギスヤンキの支配者となり、彼女が死ぬと後継者は代々ヴラーキスの名跡を継承した。現在の統治者はヴラーキス157世で、イリシッドへの反乱から長い時間(資料によって時間差があるが、フォーゴトン・レルムの小説、『Dawn of Night』によると約1万年が経過している)が経過していた。ギスヤンキの活動は断片的になり、根源的には尊敬すべきリッチ・クイーンに仕えてはいるものの、グループごとに独自の道を歩んでいる。
※この「ギスヤンキの歴史」の解説は、「ギスヤンキ」の解説の一部です。
「ギスヤンキの歴史」を含む「ギスヤンキ」の記事については、「ギスヤンキ」の概要を参照ください。
- ギスヤンキの歴史のページへのリンク