イスラエルにおけるアメリカのスパイ活動
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/08/16 03:12 UTC 版)
「米以関係」の記事における「イスラエルにおけるアメリカのスパイ活動」の解説
2004年に公開された情報によると、あるイスラエル政府の政府高官、おそらくは内閣の大臣、は1967年の六日戦争の頃にアメリカのスパイとして活動していたという。スパイは情報をアメリカの駐在武官を通して着実にアメリカに送り続けた。情報には六日戦争におけるイスラエルの活動についての詳細な情報とともに、軍事や政治に関する文書が含まれていた。 1986年、イスラエル軍の諜報員ヨセフ・アミットはアメリカのスパイとして活動に従事していた。アミットはCIA局員にレバノンとパレスチナ領域のイスラエル軍の動向や将来の計画について記された機密文書を売却しただけでなく、イスラエル国内の情報機関であるイスラエル総保安庁の極秘文書も売却していた。彼の友人がアミットとアメリカの情報機関とのつながりを報告したため、彼の活動はイスラエル総保安庁とイスラエル警察に知られることとなった。彼の自宅は捜索され、膨大な量の機密文書が見つかった。アミットは1987年に有罪判決を受け、1993年まで服役した。 リクードの中央委員および安全保障委員を務めていたポーランド系移民のアンドリェーズ・キエルチンスキーは、1985年にイスラエルで活動するスパイとしてCIAにリクルートされたと主張している。それから1991年までの間、キエルチンスキーはイスラエルに関する膨大な量の情報をアメリカに提供したと伝えられており、アメリカの情報機関はイスラエルの入植政策や核開発計画、政府とクネセトの外交安全保障委員会の議論について特に特に関心を示していたという。情報には国家監査官によるモサドやイスラエル総保安庁の報告も含まれており、イスラエルの地位はアメリカとの秘密会談で取り扱われた。キエルチンスキーの活動は発見され、容疑がかけられていることが明らかになったのち、1992年に彼はイスラエルを脱出した。キエルチンスキーはまずポーランドに行き、それからアメリカに向かった。そこで彼は政治的亡命や退職金、年金を要求したが拒否され、彼はイスラエルに追放された。彼はイスラエル総保安庁から尋問を受け、ジャーナリストと口を利かないよう警告された。しかし、イスラエル総保安庁は結局彼への捜査を中止した。 イツハク・ラビン元首相は、イスラエルはときにイスラエルの安全保障を脅かす情報を盗むこともあるアメリカのスパイを数年ごとに拘束していると主張した。ラビンによると、イスラエルはスキャンダルを放置し、通常はスパイを追放したという。 1996年、アメリカ国家安全保障局(NSA)はワシントンのイスラエル大使館で盗聴を行い、イスラエルはセキュリティコードを破られ、イスラエルの政策の最も深い秘密がアメリカに知られることになった。それだけでなく、NSAはチェビー・チェイスの大使館職員全員の自宅の盗聴まで行っていた。大使館の職員は数年後盗聴の事実に気付き、その後イスラエルは暗号のプロトコルの大幅な変更を行った。職員はもともと、盗聴の可能性について警告されており、電話線の盗聴対策や電報を極力送らないこと、また時には口頭で直接報告するためイスラエルに帰国したりしていた。さらに、イスラエルはアメリカの情報機関がイスラエル政府や世界のイスラエル大使館職員の会話を盗聴してきたと信じていた。イスラエルの情報機関であるイスラエル総保安庁は、海外で勤務するすべての外交官に対し、電話での会話はあたかも盗聴されているようにかのように考えて常に気を付けるよう指示し、また機密情報の暗号について話し合った。 2004年11月、イスラエル海軍はハイファの沖合18kmにアメリカの潜水艦がいることを探知し、追尾して追い払った。潜水艦はイスラエルについての情報収集活動を行っていたと考えられていた。イスラエルの関係者によると、そのようなスパイ行為はよくあることであり、西側諸国のスパイ潜水艦は以前にもイスラエルに捕捉されたことがあるという。事件後、アメリカはイスラエルがロケット弾攻撃の報復としてガザ地区に侵攻することやレバノンやシリアのヒズボラに対する防衛的な行為を防ぐため、イスラエルに対する諜報作戦の回数を増やしたと伝えられた。さらにアメリカは偵察衛星によってイスラエルの軍事活動の意思決定や兵器の輸出入、兵器の試験について監視する回数を増やし、また、イスラエル政府と軍事施設の通信の傍受も強化したと報道された。 アメリカの情報機関はディモナ近郊のネゲヴ原子力研究センターでイスラエルが秘密裏に行っている核開発計画に対してスパイ活動を行っている。アメリカの情報機関が施設の存在に気付いたのはU-2偵察機がその上空を飛行した1958年のことで、2年後、それが核施設であることが確認された。。イスラエルの情報機関について書かれた政府が出資した書籍によると、アメリカの情報機関は電子的盗聴とテルアビブの訓練された職員を使うことによって、イスラエルの非通常兵器について「その意思決定段階の背後で何が起こっているのか」情報収集を試みてきたという。 アメリカ外交公電ウィキリークス流出事件によって明らかになった2008年10月31日以降の国務省の機密公電によると、ブッシュ政権はCIAと国防情報局およびイスラエル、ヨルダン、レバノン、エジプトとサウジアラビアのアメリカ大使館を通じて、イスラエルの政治システム、社会、通信インフラ、軍に対するスパイ作戦を指揮していたという。外交官とスパイはパレスチナ領内やシリア、レバノンにおけるイスラエルの軍事作戦の計画について情報を収集するよう指示されていた。アメリカのエージェントはイスラエル軍の司令官の態度を細かく調査し、また、イスラエル軍の編成部隊の単位、装備品、メンテナンスのレベル、訓練、モラル、作戦への準備、戦術、対反乱作戦や対テロ作戦の通常と非通常の技術と手続き、占領された地域において軍事的準備のために投入された予備役の影響に関するイスラエルの査定について情報を収集した。情報機関はまた政府の計画、イスラエルの政治家が軍事攻撃を決断する際に影響を受けうる潜在的手法、政治家のアメリカに対する態度、軍事および文民指導者、イスラエル軍、情報機関、通信インフラの民間企業の公式および個人の電話番号、FAX番号、メールアドレス、また、パスポートや政府が交付するID番号を作成する際のコードの意味も得ようとしていた。さらに、アメリカのインテリジェンス・コミュニティーはヨルダン川西岸地区とゴラン高原のイスラエル人居住区に焦点を当て、様々な住民グループの境界線、入植政策関連の予算と補助金、入植者のロビー活動と入植の方法を含む政治家、軍人との関係についての情報も得ようとしていた。
※この「イスラエルにおけるアメリカのスパイ活動」の解説は、「米以関係」の解説の一部です。
「イスラエルにおけるアメリカのスパイ活動」を含む「米以関係」の記事については、「米以関係」の概要を参照ください。
- イスラエルにおけるアメリカのスパイ活動のページへのリンク