ひとり親家庭の貧困
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独立行政法人労働政策研究・研修機構の調査によれば、ひとり親家庭のうち、厚生労働省公表の貧困線を下回った世帯の割合は、母子家庭で51.4%、父子家庭で22.9%であり、二人親家庭の5.9%に比べて大きな差がある。さらに、可処分所得が貧困線の50%に満たない「ディープ・プア(Deep Poor)」世帯の割合は、母子世帯が 13.3%、父子世帯が 8.6%、ふたり親世帯が0.5%となっている。また、母子世帯の場合、子どもの年齢が高い世帯ほど、経済的困窮度が高い。 「有子世帯の所得格差は、過去15年間で拡大傾向にあり、とくに独立母子/父子世帯内部で所得格差が大きい」「高学歴化によりひとり親の教育水準が急速に向上したものの、ひとり親世帯の低学歴層への偏りは安定的に維持されている」「要因分解法の推定結果より、世帯所得の学歴間格差が独立ひとり親世帯の所得格差の拡大に寄与しているが、他の成人親族との同居はひとり親世帯の階層差を緩衝させる役割を持っていた」とする分析があり、ひとり親家庭の貧困は親の性別や学歴、同居形態によって実態が異なる。 厚生労働省は「子ども虐待対応の手引き」において、未婚を含むひとり親家庭を児童虐待のリスク要因の1つとしてあげている。とある保育園に通う児童虐待や虐待が疑われる家庭の半数以上がひとり親家庭であるとする調査や、育児放棄が低出生体重児のいる家庭やひとり親家庭で発生する確率が比較的高いとする考察などがある。 ひとり親の貧困は貧困の悪循環に陥る危険があり、行政支援をはじめとした公的支援のほか、子ども食堂や無料塾の開催などの民間支援も行われている。
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ひとり親家庭の貧困
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/15 23:58 UTC 版)
2012年度厚生労働省白書では、2000年代半ばまでのOECD 加盟国の相対的貧困率について日本が加盟国中大きい順から4位であったこと、うち子どもの貧困率は13.7%と30か国中ワースト12位であると記載されている。特に働いているひとり親家庭の相対的貧困率は加盟国中最も高くなっており、働いていない同家庭では28か国中ワースト12位と中位なものの6割が貧困と確率が高く、ひとり親が貧困に陥りやすいことが分かる。また、2003年以降のひとり親家庭の相対的貧困率は低減してきているが、子どもの貧困率はやや上昇傾向という状況にある。一方、父子世帯とふたり親世帯の貧困率については、母子世帯に比べると低いものの、税込所得ベースに比べて可処分所得ベースでは貧困率が逆に上昇している。子どものいる世帯には、社会保険料や税負担は重くのしかかり、所得再分配による貧困軽減は、十分に機能していない可能性が高い。 諸外国と異なり、日本のひとり親家庭の貧困については、働いている世帯58%、働いていない世帯60%と貧困率が殆ど変わらない。税等による所得の再分配機能後の方が分配前に比較して、高齢者では4割以上貧困率が減るのに対し、20歳未満ではわずか1%程度しか削減しないという再分配調整機能問題に加え、多くの無職世帯が受給しているであろう生活保護では、諸外国に比較しても高額であり30代単身者の試算でスウェーデン、フランスに対しては約2倍の所得保障水準となっておりカップルと4歳児の家族世帯においても各国より高額という生活保護費支給額の影響の可能性がある。 児童扶養手当の増減は生活保護受給の動きと似通っていることが分かっているが、不況に加え、離婚及び未婚の母の増加により、児童扶養手当の受給者は100万人を突破しており、新たな貧困層が増加している可能性がある。児童部会ひとり親家庭への支援施策の在り方に関する専門委員会で「未婚の母の娘さんがまた未婚となって親子2代にわたって児童扶養手当を受けるケースもございます。」と自治体職員が発言し、「未婚の母親の子どもがまた未婚になり児童扶養手当を申請に来るということがありましたが、子どもに対する支援策をきちんとしていくことが非常に大事だと思います」と母子家庭の連鎖や支援について審議されている。 なお、母子世帯の学歴はふたり親世帯の学歴より低く、中卒は同世代女性の約3-4倍となっており、母子世帯の貧困や諸困難の背景に低学歴という問題がある。学歴が低いほど就業率が低く、正規雇用率が低い。非婚(未婚)世帯は中卒割合が22.5%で、同世代女性の6倍強で、増加傾向にある。 生活保護を受給している独立母子世帯の数は、1997年以降に増えており、2000年代に入ってからは概ね7-8世帯に1世帯の割合で生活保護を受給している。生活保護を受給したシングルマザーは非受給者より正社員希望の確率が14.0ポイントも低いことが分かっている。生活保護期間中にできたキャリアブランクが長ければ長いほど、子供が成人した後も、母親が生活保護に頼らざるを得ない可能性は高くなる。 母親の就労別分析では、母親が 家族従業員、自営業(雇用人なし)の貧困率は男性と同様に突出して高く、母親が非正規雇用である場合に比べても二倍近くとなっている。利益の出ていない自営業者については、他への適正就労に転換させることが有益な可能性がある。 なお、養育費の不払いによるひとり親の困窮に対して行われる行政の福祉給付受給については、アメリカでは納税者に遺棄して去った父親の代わりを負わせることへの議論が高まったことにより、1975年社会保障法改正によって、子を監護していない親の養育費支払義務を強制することになった経緯があり、未払いの場合州によっては裁判所で拘禁まで課されることがある。イギリスにおいてもサッチャー政権下に母子世帯の福祉依存と父親の養育費不払いへの批判が高まった結果、ひとり親が所得補助等を利用している場合には1993年から導入された養育費制度の利用が義務付けられている。日本においても、生活保護において非監護親が養育費支払い能力を有する場合でも、監護親世帯が生活保護を受給することにより養育費受給が低減するという研究結果があり、またひとり親に給付される児童扶養手当では、費用負担は国が3分の1、都道府県、市が3分の2であるが2010年の国庫負担分の予算案が1678.4億円、都道府県、市等併せると年間約5,035億円となる。養育費未徴収の福祉給付受給者が増加することが福祉費増大の一因となるため、養育費徴収の実現は財政健全化にも寄与する。
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