酒粕 酒粕の概要

酒粕

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/07/12 02:47 UTC 版)

酒粕[1][2]
100 gあたりの栄養価
エネルギー 227 kcal (950 kJ)
23.8 g
食物繊維 5.2 g
1.5 g
14.9 g
ビタミン
チアミン (B1)
(3%)
0.03 mg
リボフラビン (B2)
(22%)
0.26 mg
ナイアシン (B3)
(13%)
2 mg
パントテン酸 (B5)
(10%)
0.48 mg
葉酸 (B9)
(43%)
170 µg
ミネラル
ナトリウム
(0%)
5 mg
カリウム
(1%)
28 mg
カルシウム
(1%)
8 mg
マグネシウム
(3%)
9 mg
リン
(1%)
8 mg
鉄分
(6%)
0.8 mg
亜鉛
(24%)
2.3 mg
(20%)
0.39 mg
他の成分
水分 51.1 g
アルコール (エタノール)
8.2 g
%はアメリカ合衆国における
成人栄養摂取目標 (RDIの割合。
出典: USDA栄養データベース(英語)

酒米を醸造すると重量比で25%ほどの酒粕が取り出され、その成分は日本食品標準成分表によると、水分51%・炭水化物23%・蛋白質13%・脂質灰分となっており、他にもペプチドアミノ酸ビタミン酵母など栄養素に富んでいるので、健康効果が期待される食品としての価値が見直されている[3]1975年以降、年々、日本酒の生産量が減少していることと、大手を中心に一部の日本酒メーカーが高熱液化仕込み(高温糖化法)を採り入れていて液化粕になり、主に飼料肥料として処理されることから、副産物である酒粕も食用としての流通量は減少傾向にある。2013年7月 - 2014年6月までの産出量は41906トン弱。2014年7月 - 2015年6月までの見込み産出量は約42000トンである(食料新聞より)。

味醂のもろみから取れる味醂粕(こぼれ梅)はもち米を含むことから風味が異なり、焼酎のもろみから取れる焼酎粕はクエン酸を多量に含むので酸味を有する。

酒粕の種類

  • 板粕 - 清酒と分離、圧搾された酒粕を剥がしたもの(圧搾には醪自動圧搾機が使用されることが多く、その場合、板状で酒粕が残る)。地方によっては白い酒粕全てを板粕と呼ぶ。
  • ばら粕 - 板状にとれなかった酒粕。時間的・人手的にとれない場合と、大吟醸・吟醸酒の酒粕は米を低温醗酵させているので米粒が融けきれない場合が多く、圧搾機の濾布板から板状に取ろうとするとボロボロになったり、酒成分が多く残り、柔らかすぎて板状に取れない物理的要因の場合がある。地方によっては粉粕(こがす)と呼ばれる。
  • 練り粕 - 酒粕を柔らかいペースト状に練った物。酒精を加える場合もある。
  • 踏込み粕 - ばら粕及び板粕をタンクに足で踏込み、空気を追い出して、4 - 6か月熟成(発酵)させたもの。色も茶色・及び黄金色のものが多い。地方によって、「押し粕」「諸白(もろはく)粕」「練り粕」「踏みかす」「土用かす」等と呼ばれる。酢原料・漬物用に使用されることが多い。
  • 成形粕 - ばら粕を練りこんで棒状に押し出し、板粕状にしたもの。「ニュー板粕」と呼んでいる業者もある。近年、蔵元も機械化や人手不足により板粕を取らなくなっており、板粕が不足しているために製造されたもので、代替品の意味合いが強い。練り込んでいるため使いやすいが、練ることにより米麹が壊れ、また酸化されるため風味に欠ける[要出典]

家庭や飲食店での粕漬け、粕汁、甘酒づくり用といった従来用途に加え、近年では酒粕を加工したり更に乳酸発酵させたりした調味料[4]など各種料理用の製品や、酒粕を使った栄養補助食品などが開発されるようになった。

利用

酒粕は、そのまま食料としたり、料理の材料・原料として利用されている。粕はそのままで食べることができるが、直火で焼く(もしくは電子レンジオーブントースター等で軽く加熱する)と風味が引き立ち、砂糖をまぶして菓子のように食べる場合(「もみじ焼き」「雪もみじ焼き」等と呼ばれている)もある。乳製品と相性がいい。

酒粕を使う料理

粕汁
  • 甘酒 - 酒粕を溶かして甘味を加えたもの。(米と米こうじからつくる甘酒もある)
  • 漬物 - わさび漬け粕漬けや肉)・奈良漬け(踏込み粕を使う)などの漬物「床」に用いられる。
    • 酒粕焼き - 魚や肉の粕漬けを焼いたもの。味噌などを入れることもある。焦げやすいため、焼く前に酒粕を落とす必要がある。
  • 粕汁 - 味噌も同時に使用することもある。魚(主にブリ・皮クジラ)、油揚げ、蒟蒻、ダイコンが材料に使用されている。
  • 酒粕煮 - 鮭・ダイコン
  • しもつかれ - 栃木県郷土料理。鮭の頭と、野菜の切り屑など残り物を大根おろしと混ぜた料理である。
  • 酒粕に残っている酵母を製パンに利用することもできる。この酵母は「酒種」と呼ばれる。この場合、搾りたての酒粕を使用する必要がある。あんパンは、当初酒種を用いて作られた。
  • お好み焼き - 広島県竹原市では、お好み焼きの生地に酒粕や日本酒を練り込んだ「たけはら焼」を提供するお好み焼き店が存在する[5]。竹原市は東広島市西条地区・安芸津地区と共に、広島県の酒どころである。

酒粕を原料にする製品

  • 粕酢(酒粕酢) - 酒粕を酢酸発酵させることで作る食酢の1種。特に熟成させた酒粕を原料として作られた粕酢は、赤みを帯びていることから、赤酢と呼ばれている。主に寿司(鮨)酢として利用される。江戸時代、酒作りの副産物である酒粕を原料とした酒粕酢は、コメから直接作った米酢よりも安価だったため、この酒粕酢が、食酢を使った寿司の普及に一役買ったと言われている。戦後の物資不足と黄変米事件が原因となって、現在は一般家庭では出回らず、飲食店でも使う店は少数で、使う場合でも他の酢で割って使う場合が多い。
  • 酒粕焼酎 - 原料として、酒粕以外に、必ずが使用されている。まず、酒粕、麹、水を加えた状態、すなわち(もろみ)を作って醗酵させる。こうして醗酵させた醪を蒸留して作った酒。こちらは酒粕焼酎とだけ呼ばれ、粕取焼酎とは呼ばれない。
  • 粕取焼酎 - 戦後の密造酒を指していう「カストリ」と混同されることもあるが別物である。原料には「酒粕」とだけあり、麹は使っていない。酒粕を加熱し、酒粕に残っているエタノールなどの揮発成分を取り出して作った酒である。なお、蒸気が通るよう酒粕とモミガラと混合し、それを蒸して酒粕に残っていたエタノールなどの揮発成分と共に、モミガラの香りなどの成分も取り出して作った酒も存在する。また、酒粕を原料としていることには変わりがないことから酒粕焼酎に分類される場合もある。

食用以外の利用

俗に美白効果があるとされ、水で溶いて顔にパックを施すなどの方法で美容素材として用いられることがある。また、酒粕を配合した基礎化粧品なども市販されている。そうした際にはアルブチンリノール酸の含有が“美容成分”として強調されることが多い。


  1. ^ 日本食品標準成分表2015年版(七訂)より抜粋(100gあたりに含まれる栄養成分量)
  2. ^ 調味料及び香辛料類酒かす(食品番号17053番)参照
  3. ^ 日本伝統あの発酵食で 驚きコレステ減効果!”. ためしてガッテン. NHK (2010年11月24日). 2016年9月2日時点のオリジナルよりアーカイブ。2016年9月8日閲覧。
  4. ^ 一例として菊水酒造「スーパー酒粕」
  5. ^ どれもお好み焼!まだまだある広島県の“〇〇焼” ひろしま観光ナビ
  6. ^ 奈良漬400切れ相当!飲酒運転偽装もバレたスポーツニッポン、2009年1月8日)


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