両生類 生活史

両生類

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/05/08 19:47 UTC 版)

生活史

卵から直接発生するカエルや幼体を産む卵胎生、ある程度成長した幼体を産むサラマンダーなど繁殖形態は様々である。産卵場所は多種多様で、池や川などの水中から伏流水中、地上、地中、地底湖や樹上で産卵し、卵は殻を持たない。また、幼生は基本的にはえら呼吸で水中で生活し、変態して陸上に上がることができるようになる。カエルは基本的に成体は肺呼吸をし、四本の足を持ち、ほとんどの種では陸上での活動が可能である。一部水棲でほとんどを皮膚呼吸に頼り、空気呼吸せずに生活する種もいる。有尾類の一部では生涯えらが無くならないものや、肺を退化させたものもある。また無足類は四肢が退化し全く無く、水棲アシナシイモリはえらは無いが、陸上生活は出来ない。他のアシナシイモリも地中性で陸上生活ではない。

  • 卵生のものが多く、基本的には水中に産卵する。産卵時に、水中で体外受精を行う無尾目やサンショウウオ上科など一部の有尾目と、多くの有尾目のように精包を受け渡す形で、体内受精するものと、無足目のように外部生殖器を持ち交尾するものがある。有尾目と無足目では卵胎生の種も多い。
  • 卵は殻を持たず、ゼラチン質で包まれ、水中に生み付けられる。しかし、ヤドクガエル科プレソドン科など陸上で産卵する種類も珍しくはない。有尾目と無足目には幼生や変態の終わった幼体を直接産む種類もいる。
  • 成長過程で、変態を行い大きく形が変わるものが多く、特に無尾類の幼体は親とは別にオタマジャクシと言う。幼体は四肢が無く尾鰭があるなど魚類に似ているが、無尾類の幼体はかなりずんぐりしており、有尾類の場合は発達した外鰓を持つ(無尾類は孵化直後にはあるがすぐに隠れる)など、一般の魚類[注釈 5]とは異なる所も多い。
  • 成体は基本的に四肢が生え(無足類やサイレン科は例外)、陸上生活を営めるものも多いが四肢があっても生涯を水中で生息する種類もいる。
  • 呼吸に関しては全種、幼体・成体を問わず皮膚呼吸が発達しており、特に有尾類では皮膚呼吸の割合が大きい(ハコネサンショウウオアメリカサンショウウオ科の成体では皮膚や口内粘膜による呼吸がほぼ100%になる)。
    また、前述の肺が退化した種類を除くと原則的には幼体が鰓呼吸・成体が肺呼吸とされているが、アフリカツメガエルなど幼体の時点で肺が発達し、逆に真の鰓がない[注釈 6]というものもいるほか、ウシガエルニホンアカガエルの幼体も空気呼吸や皮膚呼吸をすることが確認されている[6][10]
  • 有尾目の一部の種では、変態をしないで幼生の形態のままの成体になる幼形成熟ネオテニー)が知られる。また変態が途中で終了する種も存在する。例えばアメリカ合衆国に分布するヘルベンダー(アメリカオオサンショウウオ)は鰓孔が最後まで消えないためそういった考え方も出来る。逆に変態を終えた姿で生まれる種も多い。

注釈

  1. ^ メキシコジムグリガエルなど乾燥地帯に生息する種類もいるが、これも湿った地中に住むもので繁殖も雨季の水たまりを利用するなど、結局は水に依存している。
  2. ^ なお鰓呼吸をする幼体でも心臓の構造はそのままであり、1心房1心室の普通の魚類(魚類でも肺魚類は2心房1心室で心房中隔の構造は有尾類に近い構造をしている)とは異なる。
  3. ^ アンモニアは尿素より有毒なので溜めておけず、薄い状態で排出する必要がある(=同じ量の窒素分を捨てるのに大量の水がいる)。
  4. ^ 単位及び普通のカエルの属名が不詳なのは原文ママ。
  5. ^ 魚類でも肺魚類やポリプテルス類の幼魚は例外的に外鰓を持つ
  6. ^ 口内にある餌を濾す鰓耙(gill raker)という器官をガス交換に使用するが、これは厳密には鰓とは別の器官。

出典

  1. ^ 長谷川政美、『系統樹をさかのぼって見えてくる進化の歴史』p126、2014年10月25日、ベレ出版、ISBN 978-4-86064-410-9
  2. ^ 新撰理科書 2上 訂2版』 - 国立国会図書館デジタルコレクション
  3. ^ 新撰普通動物学 訂正増補3版』 - 国立国会図書館デジタルコレクション
  4. ^ 代表・内田亨「脊椎動物とはどんなものか」、『原色現代科学大事典 5-動物II』、株式会社学習研究社、昭和43年、P7図4。
  5. ^ 荒木忠雄「4-生命の保持」『原色現代科学大事典 7-生命』吉川秀男・西沢一俊代表、株式会社学習研究社、昭和44年、P385図3「両生類のらせん弁」
  6. ^ a b 【質問】両生類の幼生の血液循環のしくみについて日本動物学会一般向けページ、「動物学会 Q&A ~高等学校の先生方へ~」2014.2.23掲載。
  7. ^ 松井正文、『両生類の進化』p3、東京大学出版会、1996年
  8. ^ a b 内山実, 今野紀文, 兵藤晋、「尿素を利用する体液調節:その比較生物学, 比較内分泌学」 2009年 35巻 134号 p.175-189, doi:10.5983/nl2008jsce.35.175, 日本比較内分泌学会
  9. ^ 荒木忠雄「4-生命の保持」『原色現代科学大事典 7-生命』吉川秀男・西沢一俊代表、株式会社学習研究社、昭和44年、P397表1「後生動物の窒素排出物の組成」
  10. ^ オタマジャクシ 皮膚・肺呼吸も佐賀新聞 2013年03月31日更新。
  11. ^ ロナルド・ルイス・ボネウィッツ著、青木正博訳『ROCK and GEM 岩石と宝石の大図鑑』誠文堂新光社 2007年 349ページ
  12. ^ Schoch, Rainer R.; Werneburg, Ralf; Voigt, Sebastian (2020). “A Triassic stem-salamander from Kyrgyzstan and the origin of salamanders”. Proceedings of the National Academy of Sciences 117 (21): 11584–11588. doi:10.1073/pnas.2001424117. PMC 7261083. PMID 32393623. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC7261083/. 
  13. ^ Pardo, Jason D.; Small, Bryan J.; Huttenlocker, Adam K. (2017-07-03). “Stem caecilian from the Triassic of Colorado sheds light on the origins of Lissamphibia” (英語). Proceedings of the National Academy of Sciences 114 (27): E5389–E5395. doi:10.1073/pnas.1706752114. ISSN 0027-8424. PMID 28630337. http://www.pnas.org/content/114/27/E5389. 





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