両生類 生活史

両生類

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/12/27 23:35 UTC 版)

生活史

現存する無尾目、有尾目、無足目の3目はいずれもかなり生態に差異があり、同じ目内でも例外が多い。

  • 卵生のものが多く、基本的には水中に産卵する。有尾目と無足目では卵胎生の種も多い。受精方法も体外受精体内受精の双方があり、体外受精は無尾目の大半やサンショウウオ上科など一部の有尾目に見られる。一方、体内受精は精包を受け渡す形(有尾目の多く)で行うものから、外部生殖器を持ち交尾するもの(無足目の大半と、無尾目の例外的なオガエル [10]など)が存在する。
  • 卵は殻を持たず、ゼラチン質で包まれ、水中に生み付けられる。しかし、ヤドクガエル科プレソドン科など陸上で産卵する種類も珍しくはない。幼生や変態の終わった幼体を直接産む種類もいる。
  • 成長過程で、変態を行い大きく形が変わるものが多く、特に無尾類の幼体は親とは別にオタマジャクシと言う。幼体は四肢が無く尾鰭があるなど魚類に似ているが、無尾類の幼体はかなりずんぐりしており、有尾類の場合は発達した外鰓を持つ(無尾類は孵化直後にはあるがすぐに隠れる)など、一般の魚類[注釈 5]とは異なる所も多い。
  • 成体は基本的に四肢が生え(無足類やサイレン科は例外)、陸上生活を営めるものも多いが四肢があっても生涯を水中で生息する種類もいる。
  • 呼吸に関しては全種、幼体・成体を問わず皮膚呼吸が発達しており、特に有尾目では皮膚呼吸のみで肺呼吸をしない種類(ハコネサンショウウオ属アメリカサンショウウオ科)が過半数(全425種類中の275種類)を占める[注釈 6]が、幼体時から肺呼吸をするメキシコサンショウウオもいるなど呼吸方法の多様性が強い、無足目も詳細不明なものが多いが同じように多様性が強いと考えられている[11]。逆に無尾目では孵化時点から機能はせずとも肺があり、幼生期(時期は足が生え始める前から変態直前まで色々)からこれが発達して肺呼吸をする方が多くの科に見られ[注釈 7]、例外的にヒキガエルの仲間やナガレガエルの仲間は変態完了まで肺が機能せず肺呼吸をしない[12]。また更なる例外として前述のオガエルは成体でも肺が退化している[13]
  • 有尾目の一部の種では、変態をしないで幼生の形態のままの成体になる幼形成熟ネオテニー)が知られる。また変態が途中で終了する種も存在する。例えばアメリカ合衆国に分布するヘルベンダー(アメリカオオサンショウウオ)は鰓孔が最後まで消えないためそういった考え方も出来る。逆に変態を終えた姿で生まれる種も多い。

注釈

  1. ^ メキシコジムグリガエルなど乾燥地帯に生息する種類もいるが、これも湿った地中に住むもので繁殖も雨季の水たまりを利用するなど、結局は水に依存している。
  2. ^ なお鰓呼吸をする幼体でも心臓の構造はそのままであり、1心房1心室の普通の魚類(魚類でも肺魚類は2心房1心室で心房中隔の構造は有尾類に近い構造をしている)とは異なる。
  3. ^ アンモニアは尿素より有毒なので溜めておけず、薄い状態で排出する必要がある(=同じ量の窒素分を捨てるのに大量の水がいる)。
  4. ^ 単位及び普通のカエルの属名が不詳なのは原文ママ。
  5. ^ 魚類でも肺魚類やポリプテルス類の幼魚は例外的に外鰓を持つ
  6. ^ このグループも幼生期には肺の原器があるので二次的に肺が退化したと推測されている。
  7. ^ アカガエル科のウシガエルRana catesbeianaリオグランデヒョウガエルRana barlandieriミナミヒョウガエルRana sphenocephala、スキッパーガエルEuphlyctis cyanophlyctis。アマガエル科のコーラスガエルPseudacris triseriata、ピパ科のアフリカツメガエルXenopus laevisコンゴツメガエルHymenochirus boettgeri。スキアシガエル科のプレーンスキアシガエルScaphiopus bombifrons。の8種類は2002年時点で田中邦明が文献で幼体時の肺呼吸の報告を確認済み。

出典

  1. ^ 長谷川政美、『系統樹をさかのぼって見えてくる進化の歴史』p126、2014年10月25日、ベレ出版、ISBN 978-4-86064-410-9
  2. ^ 新撰理科書 2上 訂2版』 - 国立国会図書館デジタルコレクション
  3. ^ 新撰普通動物学 訂正増補3版』 - 国立国会図書館デジタルコレクション
  4. ^ 代表・内田亨「脊椎動物とはどんなものか」、『原色現代科学大事典 5-動物II』、株式会社学習研究社、昭和43年、P7図4。
  5. ^ 荒木忠雄「4-生命の保持」『原色現代科学大事典 7-生命』吉川秀男・西沢一俊代表、株式会社学習研究社、昭和44年、P385図3「両生類のらせん弁」
  6. ^ 【質問】両生類の幼生の血液循環のしくみについて日本動物学会一般向けページ、「動物学会 Q&A ~高等学校の先生方へ~」2014.2.23掲載。
  7. ^ 松井正文、『両生類の進化』p3、東京大学出版会、1996年
  8. ^ a b 内山実, 今野紀文, 兵藤晋、「尿素を利用する体液調節:その比較生物学, 比較内分泌学」 2009年 35巻 134号 p.175-189, doi:10.5983/nl2008jsce.35.175, 日本比較内分泌学会
  9. ^ 荒木忠雄「4-生命の保持」『原色現代科学大事典 7-生命』吉川秀男・西沢一俊代表、株式会社学習研究社、昭和44年、P397表1「後生動物の窒素排出物の組成」
  10. ^ 『原色現代科学大事典 5動物II』、宮地伝三郎(責任編集者)、株式会社学習研究社、昭和43年(1968年)、p.163・181。
  11. ^ (田中2002)p.4
  12. ^ (田中2002)p.3-4
  13. ^ 『原色現代科学大事典 5動物II』、宮地伝三郎(責任編集者)、株式会社学習研究社、昭和43年(1968年)、p.181。
  14. ^ ロナルド・ルイス・ボネウィッツ著、青木正博訳『ROCK and GEM 岩石と宝石の大図鑑』誠文堂新光社 2007年 349ページ
  15. ^ (田中2002)p.5
  16. ^ Schoch, Rainer R.; Werneburg, Ralf; Voigt, Sebastian (2020). “A Triassic stem-salamander from Kyrgyzstan and the origin of salamanders”. Proceedings of the National Academy of Sciences 117 (21): 11584–11588. doi:10.1073/pnas.2001424117. PMC 7261083. PMID 32393623. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC7261083/. 
  17. ^ Pardo, Jason D.; Small, Bryan J.; Huttenlocker, Adam K. (2017-07-03). “Stem caecilian from the Triassic of Colorado sheds light on the origins of Lissamphibia” (英語). Proceedings of the National Academy of Sciences 114 (27): E5389–E5395. doi:10.1073/pnas.1706752114. ISSN 0027-8424. PMID 28630337. http://www.pnas.org/content/114/27/E5389. 





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