両生類
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/12/27 23:35 UTC 版)
両生綱 Amphibia | |||||||||||||||
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本文参照 |
概論
両生類は、古生代の石炭紀頃以降、多くの化石種が知られている。しかしながら、現生のものは、長い尾を持ち、短い四肢のある有尾目(サンショウウオなど)、尾がなく体幹が短くまとまって四肢の発達した無尾目(カエル類)、それに四肢を失い、細長い体の無足目(アシナシイモリ類)の3群のみである。両生類は、約3億6000万年前[1]に陸上においての生活も始めたと考えられており、これが脊椎動物の中では初めて陸上生活が可能となった事例だと考えられている。ただ陸上生活が可能とは言っても、その身体の構造、生活史、生理、生殖などにおいて、陸上生活への適応を示しながらも不十分であり、水辺への依存度が強いという特徴を持っている。特に幼生は、一般に水中生活をしているなど、基本的に水中環境が欠かせない。
現生の種は、ほぼ全てが淡水域を生活の場としている。原始的な形では卵を水中で産卵し、幼生は四肢を持たない形で生まれ、鰓呼吸で水中生活を行う。その後変態を経て肺呼吸で出来る成体になる。ただし、多くの例外があり、その生活は多様である。基本的に皮膚呼吸に頼る面が多いことから乾燥に弱いため、水辺などの湿った環境が生息域の中心であり、陸上で活動可能な体を持ちながら、生活や繁殖を水に依存した生涯を送ることからこの名がある[注釈 1]。「両生」類の名は、水中生活と陸上生活の両方が可能という意味ではなく、両方の環境が必要な動物であるという意味である(これが近年の両生類の減少に繋がっているとの指摘もある)。
本来、欧名を漢訳した両棲類、両棲綱であったが、「棲」の字が常用漢字に含まれないため、現在は多くの場合「両生類」「両生綱」と書かれる。ただし、明治の書物でも、教科書として扱われた「新撰理科書」や「新撰普通動物学」などで「両生類」の表記が見られる[2][3]。
20世紀後半から、世界的に両生類の減少が著しく、多くの両生類が絶滅しつつある。カエルツボカビ症をはじめとする感染症や吸虫の被害のほか、粘膜に覆われた脆弱な皮膚が、環境変化への対応を困難にし、個体数の減少をもたらす原因になっていると考えられている。一説に因ればこのままのペースで減少が続くと、50年以内に全ての両生類が絶滅するとも言われている。
外部形態
成体は原則的には指のある四肢を持つ。ただし様々な程度にそれを退化させたものもある。無足目は完全に四肢を失っているが、化石種では四肢を持つものが知られている。有尾目のサイレン科は前肢しか持たない。
現存種は前脚には親指がないため前肢の指は基本的に4本で、後肢の趾は5本である。有尾目では後肢の指が4本であったり、前後肢とも3本以下であったり、アンフューマ科のように指趾が1本から3本という種類もある。
両生類の皮膚は分泌腺や毒腺が多くなめらかである。爬虫類のように、体表の多くの場所を覆うような鱗は持っておらず、また、体表のほとんど(場合によっては体表の全て)は角質化していない。これは皮膚が呼吸器としての役割(皮膚呼吸)が多くの割合を占めているからであるが、それゆえ乾燥に弱いという弱点にもなっている。なお、アシナシイモリの体のしわの間に小さな鱗がある。また、化石種には鱗をもったものもある。
注釈
- ^ メキシコジムグリガエルなど乾燥地帯に生息する種類もいるが、これも湿った地中に住むもので繁殖も雨季の水たまりを利用するなど、結局は水に依存している。
- ^ なお鰓呼吸をする幼体でも心臓の構造はそのままであり、1心房1心室の普通の魚類(魚類でも肺魚類は2心房1心室で心房中隔の構造は有尾類に近い構造をしている)とは異なる。
- ^ アンモニアは尿素より有毒なので溜めておけず、薄い状態で排出する必要がある(=同じ量の窒素分を捨てるのに大量の水がいる)。
- ^ 単位及び普通のカエルの属名が不詳なのは原文ママ。
- ^ 魚類でも肺魚類やポリプテルス類の幼魚は例外的に外鰓を持つ
- ^ このグループも幼生期には肺の原器があるので二次的に肺が退化したと推測されている。
- ^ アカガエル科のウシガエルRana catesbeiana、リオグランデヒョウガエルRana barlandieri、ミナミヒョウガエルRana sphenocephala、スキッパーガエルEuphlyctis cyanophlyctis。アマガエル科のコーラスガエルPseudacris triseriata、ピパ科のアフリカツメガエルXenopus laevis、コンゴツメガエルHymenochirus boettgeri。スキアシガエル科のプレーンスキアシガエルScaphiopus bombifrons。の8種類は2002年時点で田中邦明が文献で幼体時の肺呼吸の報告を確認済み。
出典
- ^ 長谷川政美、『系統樹をさかのぼって見えてくる進化の歴史』p126、2014年10月25日、ベレ出版、ISBN 978-4-86064-410-9
- ^ 『新撰理科書 2上 訂2版』 - 国立国会図書館デジタルコレクション
- ^ 『新撰普通動物学 訂正増補3版』 - 国立国会図書館デジタルコレクション
- ^ 代表・内田亨「脊椎動物とはどんなものか」、『原色現代科学大事典 5-動物II』、株式会社学習研究社、昭和43年、P7図4。
- ^ 荒木忠雄「4-生命の保持」『原色現代科学大事典 7-生命』吉川秀男・西沢一俊代表、株式会社学習研究社、昭和44年、P385図3「両生類のらせん弁」
- ^ 【質問】両生類の幼生の血液循環のしくみについて日本動物学会一般向けページ、「動物学会 Q&A ~高等学校の先生方へ~」2014.2.23掲載。
- ^ 松井正文、『両生類の進化』p3、東京大学出版会、1996年
- ^ a b 内山実, 今野紀文, 兵藤晋、「尿素を利用する体液調節:その比較生物学, 比較内分泌学」 2009年 35巻 134号 p.175-189, doi:10.5983/nl2008jsce.35.175, 日本比較内分泌学会
- ^ 荒木忠雄「4-生命の保持」『原色現代科学大事典 7-生命』吉川秀男・西沢一俊代表、株式会社学習研究社、昭和44年、P397表1「後生動物の窒素排出物の組成」
- ^ 『原色現代科学大事典 5動物II』、宮地伝三郎(責任編集者)、株式会社学習研究社、昭和43年(1968年)、p.163・181。
- ^ (田中2002)p.4
- ^ (田中2002)p.3-4
- ^ 『原色現代科学大事典 5動物II』、宮地伝三郎(責任編集者)、株式会社学習研究社、昭和43年(1968年)、p.181。
- ^ ロナルド・ルイス・ボネウィッツ著、青木正博訳『ROCK and GEM 岩石と宝石の大図鑑』誠文堂新光社 2007年 349ページ
- ^ (田中2002)p.5
- ^ Schoch, Rainer R.; Werneburg, Ralf; Voigt, Sebastian (2020). “A Triassic stem-salamander from Kyrgyzstan and the origin of salamanders”. Proceedings of the National Academy of Sciences 117 (21): 11584–11588. doi:10.1073/pnas.2001424117. PMC 7261083. PMID 32393623 .
- ^ Pardo, Jason D.; Small, Bryan J.; Huttenlocker, Adam K. (2017-07-03). “Stem caecilian from the Triassic of Colorado sheds light on the origins of Lissamphibia” (英語). Proceedings of the National Academy of Sciences 114 (27): E5389–E5395. doi:10.1073/pnas.1706752114. ISSN 0027-8424. PMID 28630337 .
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