ココナッツ
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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2026/10/21 12:34 UTC 版)
ココナッツ(英語: coconut)は、ヤシ科の単子葉植物であるココヤシの果実である。ココナツあるいは、椰子の実ともいう。
形態
Cocos nucifera は大型のヤシで、高さは最大30 meters (100 feet)に達する。羽状複葉の葉は長さ4–6 m (13–20 ft)で、小葉は長さ60–90 centimeters (2–3 ft)である。古い葉はきれいに脱落し、幹(樹幹)は滑らかな状態を保つ[1]。
肥沃な土壌では、成木のココヤシは年間約80個の果実を生産する。新品種では年間150個に達する場合もある[2]。 インドでは、年間の平均生産量は1ヘクタール当たり8,000個を超える[3]。
高木型の品種は植え付けから6~10年で初めて結実し、寿命は60~100年である。矮性品種はより早く結実するが、寿命は短い[4]。
花序
ココヤシは雌雄同株であり、雄花と雌花が同じ木に生じる。本種では、両者は同じ花序に形成される[5][6]。 また、本種ではまれに両性花が形成される可能性もある[7]。 雌花は雄花よりもかなり大きい[6]。
成木は葉、花、果実を一年を通じて継続的に形成する。花の原基が花序へと発達するまでには約14か月を要する。花序は植物学的には肉穂花序(肉穂花序)であり、仏炎苞に包まれている。健全な木は年間最大15本の花序を形成することができ、それぞれの発達段階がずれているため、常に成熟した花序と、発達途中の花序が共存する[8][9]。
雌花が開花してから果実を収穫できるようになるまでには11か月を要する[10]。 ココヤシは主に他家受粉を行うが、矮性品種の多くは自家受粉する[11]。
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樹形
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葉
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雄花と雌花を伴って開く花序
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果実をつけた木
-
ハワイ島の砂浜で発芽する種子
果実
| 部位 | 重量(kg) | ||
|---|---|---|---|
| 外果皮・中果皮(果皮) | 2.033 | ||
| 殻を含む種子 | 1.125 | ||
| 内訳 | 硬い殻 | 0.359 | |
| 果汁 | 0.492 | ||
| 胚乳(果肉) | 0.477 | ||
| 合計 | 3.158 | ||
植物学上、ココナッツの果実は核果であり、真正の堅果ではない[13]。 他の果実と同様に、外果皮、中果皮、内果皮の3層からなる。外果皮は光沢のある外皮で、通常は黄緑色から黄褐色を呈する。中果皮は繊維質であり、ココナッツファイバーと呼ばれる。この繊維には、伝統的用途から商業用途まで幅広い用途がある。外果皮と中果皮を合わせた部分がココナッツの「外皮」に当たり、内果皮は硬い「殻」を形成する。
内果皮の厚さは約4 millimeters (1⁄8 inch)で、果実の先端部には発芽孔(珠孔)が3つある。このうち2つは塞がっており、「目」と呼ばれる。残る1つは機能しており、発芽の際に胚が外へ出る孔となる[14][15]。
内果皮の内部は空洞で、厚さ約 0.2 mm (1⁄64 in)の薄い褐色の種皮に覆われている。内果皮の内部は、初期には液状の胚乳、すなわちココナッツウォーターで満たされている。この液体には多数の遊離した細胞核が含まれ、細胞境界を形成しないまま有糸分裂によって分裂するため、多核の状態を示す。
発達が進むと、胚乳の細胞層が内果皮の内壁に沿って堆積し、厚さは最大 11 mm (3⁄8 in)に達する。この過程は、まず果実の奥側から始まる。やがて、これらの細胞層は食用となる固体の胚乳、すなわち「ココナッツの果肉」を形成し、時間の経過とともに硬化する。
小型で円筒形の胚は、機能する発芽孔の直下にある固体胚乳の中に埋め込まれている。発芽時には、胚が発芽孔から外へ伸び、果実の中央の空洞内に吸器を形成する。吸器は固体胚乳を吸収し、その栄養によって幼植物を成長させる[14][16][17]。
ココナッツの果実には、特徴の異なる2つの形態がある。野生型の「ニウ・カファ(niu kafa)」は、細長い三角形の果実をもち、外皮が厚く、胚乳の量が少ない。この形態は果実の浮力を高め、海流による分散に適している。一方、太平洋地域で栽培されてきた「ニウ・ヴァイ(niu vai)」は、丸みを帯びた果実をもち、外皮が薄く、胚乳の量が多く、ココナッツウォーターも豊富である[18][19][11]。
成熟した果実1個の重量は、品種によって異なるが約1.4キログラム (3ポンド1オンス)である[20][21]。 21世紀にインドネシアで知られるようになったビド種は、果実1個当たりの平均重量が3.158キログラム (6ポンド15.4オンス)に達する[12]。
ココナッツは輸出時に外皮を除去した状態で出荷される。外皮を除去した果実の平均重量は、コートジボワール産で約575グラム、ドミニカ共和国産で約700グラムである[22]。
ココナッツの生産国では、国内向けに販売される果実は通常、外皮を除去せずに流通する。開花から6~8か月の未成熟果実は、ココナッツウォーターや、ゼリー状の柔らかい果肉を利用するために販売される。こうした果実は「グリーンココナッツ」「ヤングココナッツ」「ウォーターココナッツ」などと呼ばれ、果実本来の色が好まれる[20][21]。
一方、輸出用の成熟果実は、開花から11~13か月後に収穫され、輸送時の重量と容積を減らすため、通常は外皮が除去される。これにより、3つの発芽孔が残る裸のココナッツの殻が現れる。この3つの孔は、花の3枚の心皮に由来するものであり、ココヤシが自生しない地域ではよく知られた外観である。
外皮を除去したココナッツは消費者にとって開封しやすいが、収穫後の保存期間は短い。保存期間は、温度が12 - 15 °C (54 - 59 °F)の場合で約2~3週間、0 - 1.5 °C (32.0 - 34.7 °F)の場合で最大2か月である。これに対して、外皮を残した成熟果実は室温で3~5か月保存できる[20][21]。
根
ココヤシは主根も根毛ももたず、ひげ根状の根系を形成する[5]。 この根系は、植物体の地表近くから外側へ伸びる多数の細い根からなる。安定性を確保するために土壌の深部まで伸びる根は少数である。
このような根系はひげ根系または不定根系と呼ばれ、イネ科植物にも特徴的に見られる。ココヤシでは、直径約 1 cm (1⁄2 in)の不定根が2,000~4,000本形成されることがある。木の成長に伴い、枯れた根は新しい根に置き換えられる[23]。
分類
スウェーデンの植物学者・分類学者カール・リンネは、1753年に著書『植物の種』で本種をCocos nuciferaとして正式に記載した[24]。 この学名は植物学者によって現在も有効な名称として認められている[25]。 1768年、イギリスの植物学者フィリップ・ミラーは著書『園芸事典(The Gardeners Dictionary)』で本種をPalma cocosとして再記載したが、この名称は異名として扱われている[26][25]。 1891年には、ドイツの植物学者オットー・クンツェが著書『植物の種の一覧(Revisio Generum Plantarum)』でCalappa nuciferaという名称を与えたが、これも異名とされている[27][25]。
語源
属名Cocosおよび英語の一般名coconutは、16世紀のポルトガル語cocoに由来する。この語は「頭」または「頭蓋骨」を意味し、ココナッツの殻にある3つのくぼみが顔のように見えることにちなむ[28][29][30][31]。
この語源は、1521年にポルトガル人とスペイン人の探検家が太平洋諸島の住民と接触した際、ココナッツの殻がポルトガルの民間伝承に登場する幽霊に似ていると感じたことに由来すると考えられている。その幽霊はcocoまたはcôcaと呼ばれていた[31][32]。
西洋では、この果実は当初nux indicaと呼ばれていた。この名称は、マルコ・ポーロが1280年にスマトラ島で用いたものである。この語は当時のアラビア語名であるجوز هندي(jawz hindī、「インドの木の実」)を翻訳したものである[4]。
タミル語およびマラヤーラム語での名称thengaは、1510年に刊行されたルドヴィコ・ディ・ヴァルテマの『Itinerario』に収録されたココヤシの詳細な記述や、後年の『Hortus Indicus Malabaricus』で使用されている[33]。
種小名nuciferaは「堅果をつける」を意味し、ラテン語のnux(木の実)とfera(もたらす、つける)に由来する[34]。
分布と生育環境
ココヤシは、人間による栽培と分散の結果、ほぼ世界中に分布している。しかし、本来の分布域は中央インド太平洋にあり、島嶼部東南アジアやメラネシアの地域に広がっていた[35]。
ココヤシは砂質土壌でよく生育し、塩分に対する耐性が高い。日照が豊富で、年間降水量が1,500 - 2,500ミリメートル (59 - 98 in)の地域を好む。また、相対湿度が60%を超える環境を好む。降水量がこれを下回っても、根が土壌中の地下水面に達すれば生存できるが、湛水には耐えられない。熱帯地域では、海面から標高600メートル (2,000 ft)までの範囲で生育する。内陸部の砂質土壌では1か月、より重い土壌では最長3か月の乾季に耐えられるが、いずれの場合も土壌の排水性が良好でなければならない。生育可能な土壌のpHは4.5~8で、後者はサンゴ礁の環礁に見られる値であるが、pH5.5~7を好む。日陰では生育が著しく制限される。一方、十分に発達した根系をもつ木は、ハリケーン級の強風にも耐えられる[36]。
野生のココヤシは、砂質で塩分を含む土壌が広がる沿岸地域に限って生育する。果実は海流による分散に適応している。人間が種子を運んだり、苗を植えたりしなければ、ココヤシが内陸部に到達することは難しかったと考えられる[37]。
野生のココヤシは、ビスマルク諸島、モルッカ諸島、ニューギニア島、フィリピン、クイーンズランド州、サモア、サンタクルーズ諸島、ソロモン諸島、トケラウ、トンガ、バヌアツに自生する。
また、次の地域にも導入されている。アンダマン諸島、アンゴラ、アセンション島、アッサム州、バハマ、バングラデシュ、ベリーズ、ベナン、ボリビア、ボルネオ島、ブラジル、カンボジア、カメルーン、カロリン諸島、ケイマン諸島、中央アフリカ共和国、中央アメリカ、チャゴス諸島、チリ、中国、クリスマス島、ココス諸島、コロンビア、コモロ、クック諸島、コスタリカ、キューバ、ドミニカ共和国、コンゴ民主共和国、イースター島、エルサルバドル、フィジー、フロリダ州、フランス領ギアナ、ガボン、ガンビア、ガーナ、ギルバート諸島、ギニア、ギニアビサウ、海南島、ハイチ、ハワイ、ホンジュラス、インド、コートジボワール、ジャマイカ、ジャワ島、ケニア、ラクシャディープ諸島、リーワード諸島、小スンダ列島、リベリア、ライン諸島、マダガスカル、マレー半島、モルディブ、南鳥島、マリアナ諸島、マルキーズ諸島、マーシャル諸島、モーリシャス、メキシコ、モザンビーク、ミャンマー、ナウル、ニューカレドニア、ニカラグア、ニコバル諸島、ナイジェリア、ニウエ、フェニックス諸島、プエルトリコ、レユニオン、セネガル、セーシェル、ソシエテ諸島、南シナ海、カリブ海地域、スリランカ、スラウェシ島、スマトラ島、台湾、タンザニア、タイ、トーゴ、トリニダード・トバゴ、ツアモツ諸島、チュブアイ諸島、ツバル、ベネズエラ、ベトナム、ウォリス・フツナ、ウィンドワード諸島である[38]。
栽培
ココヤシは通常、高温多湿な熱帯気候で栽培される。良好に生育して結実するには、一年を通じて温暖で湿潤な環境が必要である。乾燥した気候では根付かせることが難しく、頻繁に灌漑しなければ生育できない。干ばつ時には、新しい葉が十分に開かず、古い葉が乾燥し、果実が落下することもある[36]。
熱帯地域でのココヤシ栽培の拡大は、マングローブ林など、さまざまな生息地を脅かしている。そのような生態地域への影響の例として、ユカタン半島地域のペテネス・マングローブ林が挙げられる[39]。ココヤシは樹木としては珍しく、海水を用いて灌漑することもできる[40]。
食用としての利用
未熟果
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未熟果では、こりこりとした固形胚乳を生食するほか、液状胚乳をココナッツジュース(ココナッツウォーター、ココナツ水)として飲用する。東南アジアでは常温または冷やして飲むことが多い。
インドネシア西部のアチェ州などでは、殻に穴を開けて香辛料や蜂蜜などを入れ、薪を燃やした火で温める焼きココナツが名物であり、健康に良いと信じられている[41]。
成熟果の利用
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成熟果の胚乳を削り取って乾燥させたものはコプラと呼ばれ、ヤシ油の原料として重要である。洋菓子の材料として使われるココナッツは、胚乳を細かくおろしたものであり、甘味をつけて使用することもある。
生の成熟果の胚乳やコプラを水に浸し、揉み出して得られる白色の液体はココナッツミルクと呼ばれる。脂肪分を多く含み、熱帯各地でさまざまな料理の素材として用いられる[42]。
ココナッツウォーターとココナッツミルク
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ココナッツウォーターは未熟果などの内部にある液状胚乳である。一方、食品としてのココナッツミルクは、固形胚乳を削り取って水などとともに揉み出して得られるものであり、両者は異なる。
なお、植物の組織培養で培地に使われる「ココナッツミルク」は、未熟果実の液状胚乳を指すことがある。料理に使われるココナッツミルクとは意味が異なる[43]。
ココナッツパウダー
| 100 gあたりの栄養価 | |
|---|---|
| エネルギー | 2,795 kJ (668 kcal) |
|
23.7 t
|
|
| 食物繊維 | 14.1 g |
|
65.8 g
|
|
| 飽和脂肪酸 | (55.25 g) |
| 一価不飽和 | (4.34 g) |
| 多価不飽和 | (1.01 g) |
|
6.1 g
|
|
| ビタミン | |
| ビタミンA相当量 |
(0%)
(0) µg |
| チアミン (B1) |
(3%)
0.03 mg |
| リボフラビン (B2) |
(3%)
0.03 mg |
| ビタミンB6 |
(7%)
0.09 mg |
| 葉酸 (B9) |
(3%)
10 µg |
| ビタミンB12 |
(0%)
(0) µg |
| ビタミンC |
(0%)
0 mg |
| ビタミンD |
(0%)
(0) µg |
| ビタミンE |
(0%)
0 mg |
| ビタミンK |
(0%)
0 µg |
| ミネラル | |
| ナトリウム |
(1%)
10 mg |
| カリウム |
(17%)
820 mg |
| カルシウム |
(2%)
15 mg |
| マグネシウム |
(31%)
110 mg |
| リン |
(20%)
140 mg |
| 鉄分 |
(22%)
2.8 mg |
| 亜鉛 |
(15%)
1.4 mg |
| 銅 |
(40%)
0.80 mg |
| マンガン |
(67%)
1.41 mg |
| 他の成分 | |
| 水分 | 2.5 g |
| 水溶性食物繊維 | 0.5 g |
| 不溶性食物繊維 | 13.6 g |
|
|
| %はアメリカ合衆国における 成人栄養摂取目標 (RDI) の割合。 |
|
ココナッツには水溶性食物繊維が多いとする記述が見受けられるが、ココナッツチップやココナッツパウダーの水溶性食物繊維量は非常に少なく、ほとんどは不溶性食物繊維である[44]。その多くはセルロースが占めている[45]。。
食品以外の利用
ココナッツファイバー
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果実の外側の繊維質部分からは、ココナッツファイバーと呼ばれる強靭な天然繊維が得られ、ロープやマットなどに加工される[46]。
殻の利用
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硬い殻は、加工して食器や工芸品などに利用されるほか、未加工のまま燃料として使われることもある。殻で作られたブラジャーは、主にタヒチアンダンスやフラダンスの衣装として使われ、「ココブラ」という愛称がついている。
収穫における問題
タイ王国の一部では、ココナッツの収穫に訓練されたサルを使役する。アメリカ合衆国の動物権利擁護団体は、サルが酷使されているとされることを問題視し、タイのココナッツ加工の大手企業テパドンポーン・ココナツ社がサルから搾取しながら、その事実についてうそを付いたと主張した。この主張がなされた2020年以降、アメリカ合衆国のスーパーマーケットではココナッツミルクの販売を停止するなどの動きが見られた[47]。。
ギャラリー
-
収穫された未熟果
-
ジュースとして飲用される未熟果
-
陳列された成熟果
脚注
出典
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関連項目
外部リンク
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