CIE表色系とは? わかりやすく解説

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CIE 1931 色空間

(CIE表色系 から転送)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/02/11 14:05 UTC 版)

CIE1931色空間(シーアイイー 1931 いろくうかん)は国際照明委員会1931年に採択した色空間である。CIE 1931 表色系シーアイイー 1931 ひょうしょくけい[1]CIE 1931 標準表色系シーアイイー 1931 ひょうじゅんひょうしょくけい: CIE 1931 standard colorimetric system)とも[2]

概要

色を体系的に扱うために様々な表色系が研究・提案されるなか(⇒ #背景)、国際照明委員会は1931年に世界で初めて「可視光と人の色覚におけるとの定量的関係」を規格化した。これがCIE1931色空間である。具体的にはCIE 1931 RGB色空間CIE 1931 XYZ色空間の2つの色空間を採択した(⇒ #RGB色空間#XYZ色空間[3][4]。 CIE1931色空間はこの表色系は現代カラーマネージメントの基礎となり、印刷インキトナーディスプレイデジタルカメラなどの記録装置を扱う場合において重要な情報である。CIE1931色空間はその後提案された様々な表色系の基礎となっている(⇒ #その後の改良)。

背景

三刺激値

物理的な光とは分光強度分布英語版というエネルギーの特性であり、そこには無数の波長という光の種類と、それぞれにエネルギー強度という数量がある、極めて複雑かつ膨大な情報を持つ組成である。しかし、それはたった3種類の原刺激(原色)と、その数量である三刺激値(さんしげきち、: tristimulus values)と呼ばれる3つの数量で色は表すことができるようになる。色空間によって原刺激と三刺激値はさまざまな種類が考えられる。色空間は、物理的なエネルギーとしての光を、三刺激値といった色を表す客観的な表現に置き換えるものである。三刺激値に基づく色空間は、3色による加法混色モデルにおける三原色の総和を概念化したものと関連づけられている。一部の色空間においては、各々の原色は現実の色としては存在しない虚色であり、どんな単色光をつかっても実現させることはできない。様々な異なる波長が混合された二つの光源について考える。そのような光源は同じ色として認識されることがある。これを条件等色(メタメリズム) という。そのような同じ色と知覚される光源同士においては、光源がそれぞれどんな分光強度分布であっても、二つの光源ともに同じ三刺激値を持っている。

LMS色空間

人の錐体細胞における正規化された短、中、長波長の分光感度英語版

正常色覚の人では、網膜にある錐体細胞はその分光感度によって3種類に分類される。短波長(Short)に感度のピークを持つS錐体、中波長(Medium)に感度のピークを持つM錐体、長波長(Long)に感度のピークを持つL錐体である。感度のピークはS錐体が440nm付近、M錐体が540nm付近、L錐体が560nm付近とされる。また、その視物質の吸光波長のピークについては、S錐体が420nm、M錐体が530nm、L錐体が560nmにあるとされる[5]。これらの錐体によって、明るい場所では色覚が生じる。

3種類の錐体の単色光に対する反応値の総和を求めることで、三刺激値が得られ、この三刺激値で色を表現できる。この場合、S、M、Lという3つのパラメータによりつくられるLMS色空間というものになる。LMS色空間は人の色覚を表現するために考案された色空間のうちの一つである。なお、色空間は一般に必ずしもLMS色空間のように錐体の反応値を直接表すとは限らない。

ほとんどの波長においては、錐体の分光感度においてS, M, Lそれぞれのカーブが相互に重なっているため、二種類あるいは三種類の錐体が刺激される。このため、一つの三刺激値のみを表すことは物理的に不可能である(例として、LMS三刺激値におけるM成分がゼロでない時、L成分もS成分もゼロにはなり得ない)。さらには、LMS三刺激値において、三原色の加法混色の色空間(例えばRGB色空間)では、単波長の色は少なくとも三色のうち一色は負の値になる。これは、三原色により定義される三角形の外側に色度が位置しているためである。このような負の値をもつRGB値を避けるため、および一つの成分が明所視標準分光視感効率

CIE 1931 xy色度図上のCIE RGB色空間の色域と、3原刺激の位置。

CIE 1931 RGB 色空間シーアイイー 1931 RGB いろくうかん国際照明委員会が1931年に採択した、単色光原刺激

CIE 1931 RGB 等色関数

CIE 1931 RGB 等色関数シーアイイー 1931 RGB とうしょくかんすう: CIE 1931 RGB color matching functions)はRGB原刺激等色関数である[9]。各原刺激の等色関数はそれぞれ

sRGB色空間の色域()およびD65光源下における可視光の色域()をCIE XYZ色空間上にプロットした図。 XZ は水平方向軸であり、Y は垂直方向軸。
sRGB色空間の色域()およびD65光源下における可視光の色域()をCIExyY色空間上にプロットした図。 xy は水平方向軸であり、Y は垂直方向軸。

CIE RGB等色関数を使ったヒトの視覚のRGBモデルの確立の過程で、CIE特別委員会のメンバーはCIE RGB色空間と関連しつつも異なる別の色空間を定義しようと考えた。その色空間はグラスマンの法則を踏襲しつつ、CIE RGB色空間を線形変換することが検討された。この新たな色空間は、上記記載の3つの新たな等色関数

CIE rg 色度図上で、CIE XYZ色空間を定義する三角形。Cb-Cg-Cr からなる三角形は、CIE xy 色度図においては xy = (0, 0), (0, 1), (1, 0)となる。Cb と Cr を結ぶ直線は無輝面である。スペクトル軌跡は、435.8 nmにおけるrg = (0, 0)から、546.1 nmにおけるrg = (0, 1)を通り、700 nmにおけるrg = (1, 0)に至る。等しい明るさの点 (E) はrg = xy = (1/3, 1/3)である。
  1. 新たな等色関数はすべての点で負の値を取らない。1931年当時においては、手計算あるいは計算尺が使われていたため、計算を簡略化するためには正の値が望まれる。
  2. 等色関数における
    CIE 1931 XYZ 等色関数

    CIE 1931 XYZ 等色関数シーアイイー 1931 XYZ とうしょくかんすう: CIE 1931 XYZ color matching functions)は国際照明委員会が1931年に採択した、原刺激セット

    CIE 1931色空間のxy色度図。外側の曲線の境界線は、スペクトル軌跡(単色光軌跡)であり、波長(単位ナノメートル)が併記されている。 この画像にはsRGBが指定されているため、画面上sRGBの色域外の色は正しく表示されない。この画像を表示しているディスプレイの色空間およびキャリブレーション状況により、sRGBの色そのものが正しく表示出来ないこともある。この画像は、コンピュータモニターテレビにおいて彩度を最大化させて表示出来るよう作られている。
    CIE 1931色空間のxy色度図。上の図と異なり、印刷等で用いられる顔料などを用いて表現される、彩度が低い場合の色度図。併記される色の名前は マンセル表色系の色。

    ヒトの目には、三種類の色を感知するセンサーがあり、異なる領域の波長を感知するため、視覚可能な色をプロットしていくと三次元の図となる。一方で色の概念は、輝度と色度に分類される。例えば、白色は明るい色として定義され、灰色は白色の輝度が低い色ということが出来る。言い換えれば、白色の色度と、灰色の色度は同じであるが、輝度のみが異なる、といえる。

    CIE XYZ色空間は、意図的にY成分が輝度となるよう設計されている。色度はxおよびzで表され、三つのうちの二つの、三刺激値X, Y, Zを用いて正規化した値:

    代表的なM錐体細胞の正規化されたカーブと、明所視での標準観察者によるCIE 1924分光視感効率曲線の比較。

    CIE 1931モデルにおいて、Y成分は輝度、Z成分は近似的に(CIE RGBの)青の成分、X成分はCIE RGBの3成分を混合したものであって、負の値にならないように選択されている( § CIE XYZ色空間の定義を参照)。Y成分を輝度とすることにより、任意のYの値に対し、XZからなる平面はその輝度において表現可能な全ての色度を確認することができる。

    X, Y, およびZの三刺激値の成分の単位はしばしば任意に選択されるため、Y = 1あるいはY = 100がカラーディスプレイが表現できる最も明るい白となる。この場合、Yの値は相対輝度となる。X, Zに対する白色点の値は標準光源から特定することができる。

    1950年台に錐体細胞の特性が解明されるよりも遥か以前に、XYZの値が定義されたため、その生理学的な意味が解明されるのも20年以上後になってからであった。1980年台に定義されたHunt-Pointer-Estevez行列により、 XYZとLMSが関係づけられた。

    XYZ等色関数の比較。CIE 1931 と Stockman & Sharpe 2006 (CIE 170-2).

    他のいくつかのXYZ形式の等色関数が利用可能で、元の1931色空間の既知の問題を修正している。これらの関数は、独自のXYZ形式およびxyY形式の色空間を表す。

    2度視野等色関数のジャッド・フォス修正
    CIEが1924年に定めた2度視野明所視標準分光視感効率
基礎的概念
色の三属性
色名
分野
研究者
表色系(色空間)
色彩の組織
関連項目

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CIE表色系

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色空間」の記事における「CIE表色系」の解説

CIE国際照明委員会)が定め表色系RGB表色系 原色をR(赤、700nm)、G(緑、546.1nm)、B(青、435.8nm)とする表色系を、CIERGB表色系という。@media screen{.mw-parser-output .fix-domain{border-bottom:dashed 1px}}現在[いつ?]のパソコンにおいては最も多く用いられるディスプレイデバイスなどへの出力指示などに用いられるXYZ表色系 RGB表色系色知覚のよい近似であるが、知覚できる色を完全に合成できるわけではない。たとえばレーザー光などにみられる単一波長の色はRGB色空間外側であって、加色によって再現することができない。この問題は、RGB係数に負の値を許可することによって色空間拡張すれば表現することができるが、取り扱いに不便である。したがってRGB表色系単純な一次変換で負の値が現れないよう定めたXYZ表色系を、CIE1931年RGB表色系同時に定めたXYZ表色系は他のCIE表色系の基礎となる。RGB表色系異なりXYZ表色系では、それぞれの数値色彩との関連わかりにくい。Yは物理的な輝度一般的には直感的なわかりやすさ優先して反射透過)率」という用語が使用されることが多いが、厳密に反射透過)面をある方向から観察した時の輝度率として表現すべきものである物体色表面色)における視感反射透過)率 Y は、ヒトの眼感度である標準分光視感効率V ( λ ) で反射率厳密に輝度率)を評価したもので、完全拡散反射透過)面での観察方向の輝度対す試料面から観察方向への輝度の比である。物体色場合には、この視感反射率 Y を以て刺激値 Y と定義する。)を表し、Zはおおむね青みの度合いを表すと考えてよい。Xは、それら以外の要素を含むと解釈できるxyY表色系 XYZ表色系では数値と色の関連わかりにくい。そこでXYZ表色系から絶対的な色合い表現するためのxyY表色系考案された。 x = X X + Y + Z {\displaystyle x={\frac {X}{X+Y+Z}}\,} y = Y X + Y + Z {\displaystyle y={\frac {Y}{X+Y+Z}}\,} YはXYZのYをそのまま使う。このxとyを色度座標呼びすべての色はxとyによる2次元平面、および明度を示すYで表現できる当然ながら、xyYからXYZ変換するともできるX = Y y x {\displaystyle X={\frac {Y}{y}}x} Z = Y y ( 1 − x − y ) {\displaystyle Z={\frac {Y}{y}}(1-x-y)} L*u*v*表色系 CIE1976年定めた均等色空間のひとつ。CIELUVエルスター、ユースター、ブイスターと読むのが一般的)は光の波長基礎考案されたもので、XYZ表色系xy色度図波長間隔均等性を改善したのである日本ではJIS Z8518(廃止規格)に規定されていた。 L*a*b*表色系 CIE L*a*b*(エルスター、エースター、ビースター慣用的にはシーラブと読む)はXYZから、知覚装置違いによる色差測定するために派生した。L*はLuminosity明度)を意味する1976年勧告され日本ではJIS Z 8729(廃止規格)に規定されていた。均等色空間である。ある色と他の色の色差を知るには、2色の座標ユークリッド距離: Δ L ∗ 2 + Δ a ∗ 2 + Δ b ∗ 2 {\displaystyle {\sqrt {{\Delta L^{*}}^{2}+{\Delta a^{*}}^{2}+{\Delta b^{*}}^{2}}}} を求めればよい。CIE 1976 L*a*b*はCIE XYZ直接基礎として、色差知覚線形化試みている。L*、a*、b*の非直線関係は、目の対数的感応性模倣目的としている。色情報は、色区間白色点nの色を参照するAdobeシステムズ社のAdobe Photoshopなど、高価なグラフィック編集ソフトはL*a*b*をサポートしているが、L*a*b*の色空間Adobe RGBよりも広いため既製ディスプレイでは対応していない。レタッチ用途としてはもっぱら輝度チャンネル(L*)を使って内部処理使用することが多い。a*b*のカラーチャンネルには手を入れないため画像の劣化防げる。(L*u*vやL*a*b*から派生して計算便宜図った妥協的実用的)な均等色空間いくつか存在する

※この「CIE表色系」の解説は、「色空間」の解説の一部です。
「CIE表色系」を含む「色空間」の記事については、「色空間」の概要を参照ください。

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