2ストロークガソリンエンジン
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/19 08:23 UTC 版)
「2ストローク機関」の記事における「2ストロークガソリンエンジン」の解説
ガソリンを燃料とするものは、小出力の小型機器に用いられる。 2ストロークガソリン機関では、ガソリンと空気の混合気を吸気し、これを掃気 (en:Scavenging (automotive)) にも用いなければならないので、クランクケース内で一次圧縮を行う必要がある。すなわち、燃焼室側が圧縮行程の時、同時にピストン上昇による負圧を利用して吸気を行う。この吸気は燃焼室側が膨張行程でピストンが下降する際に同時に圧縮され(一時圧縮)、下死点付近で開いた掃気ポートより噴き出して膨張行程を終えた残留排ガスを排気ポートから追い出す(掃気)と同時に新気でシリンダ内を充填する。 掃気時にはシリンダ内の残留ガス(排気)と新気の混合が避けられず、残留ガスを全て排気しようとすると、混合した新気(未燃ガスとオイル)の一部も一緒に排出されてしまう。 構造が簡単で軽量な為、小型にすることができるわりに大きな出力が得られるが、エンジンオイルが燃料と一緒に燃焼してしまうことに加え、燃焼される事のない生のエンジンオイルも排出されるため、オイルの消費量も4ストローク機関に比べて多くなりがちである。 その為、西ヨーロッパおよび日本の普通自動車及び小型自動車では4ストロークエンジンの性能が向上してきた1960年代後半にはほとんど姿を消しており、排気量が小さな日本の軽自動車においても、自動車排出ガス規制が日本国内で開始(昭和48年排出ガス規制)された1973年(昭和48年)ごろより、360ccの4ストロークエンジンへの移行が始まり、日本版マスキー法と呼ばれた1975年の昭和50年排出ガス規制(識別符号A-またはH-)、1976年の昭和51年排出ガス規制(識別符号C-、商用のみH-)の頃には、ダイハツとスズキを除く全メーカーが550ccの4ストロークエンジンへの移行を完了した。マスキー法の規制値を完全達成した1978年の昭和53年排出ガス規制(識別符号E-)以降は、スズキのみが規制に適合した車両を製造していた。 ダイハツの軽商用車ハイゼットは1981年まで360ccのZM型搭載車を販売した。1975年以降は昭和50年規制に適合。ダイハツの場合は出力のためと言うよりも、360cc規格時代の軽限定免許のドライバーの救済策という意味合いが強かった。軽限定免許では1976年以降の550cc規格軽自動車の運転は認められないため、当時50万人程いたといわれる軽限定免許ユーザーのために1981年8月まで継続生産されることとなった。 スズキの軽自動車アルトは、トルクコンバータ式2速ATの運転性確保のためAUTOMATICのみ1981年まで、キャリイ及びエブリイは1985年まで、ジムニー(SJ30系)は、雪道や不整地での運転性を確保するため1987年まで、それぞれ2ストロークエンジン車が併売されていた。SJ30系ジムニーはマイクロカーを除くと日本最後の2ストロークエンジン車となった。いずれの車種も軽商用車に当たる為、排ガス規制は昭和50年規制が適用された。より排ガス規制の厳しい軽乗用車ではフロンテが1981年まで、セルボが1984年まで2ストロークを継続した。軽乗用車のエンジンでは酸化触媒を二重に配置し、エアポンプ式二次空気導入装置も併設されたスズキ・TC (Twin Catalyst) システムの導入で昭和53年規制に適合していた。 マイクロカーにおいても光岡自動車が生産を終了している。 その特性から二輪車に多用されていたが、2000年施行の平成10年度自動車排出ガス規制により二輪車も4ストロークに移行しており、汎用エンジンや、主に発展途上国の原動機付自転車でしか見られなくなりつつある。ロードレース世界選手権GP500も4ストロークに移行しMotoGPに名称が変更された。EU圏では2000年のユーロ3排出ガス規制以降、原動機付自転車の2ストロークの規制も強化され、チャンバーに触媒コンバータが内蔵されるなどの対策が施されていたが、2010年代にはこれらの二輪車もほぼ4ストロークへと移行した。 新たな2ストロークガソリンエンジンの模索が続いてはいる。 モーターショーにおいて、BMWやトヨタは何度か2ストロークエンジンを搭載した自動車(ときにはエンジンのみ)を出品している。初代トヨタ・エスティマも参考出品車として公開された当初コンセプトは、当時トヨタが開発中であった2ストローク「S2」エンジンを搭載した新時代のMPV(マルチパーパスビークル)というものであった。このエンジンによってコンパクトなアンダーフロアエンジン採用が図られたが排ガス対策を解決できず、市販された初代エスティマは制約の中で4ストローク4気筒エンジンを搭載、大柄なボディに比してエンジンが非力との不評を被った。この種の新世代試作2ストロークエンジンは、旧弊なクランクケース圧縮による掃気ではなく、ユニフロー掃気ディーゼルエンジンと同様に動弁機構とスーパーチャージャーを備えている。潤滑は4ストローク同様で潤滑油の燃焼は無く、燃料供給も筒内直噴を試行するなど、省燃費でクリーン、しかもパワフルなエンジンを目指しているが、市販化の水準には至っていない。 ガソリンを燃料として、ディーゼルエンジンのように、シリンダーヘッドの燃焼室に、直接噴射する直噴システムが登場した。排気ガス対策のために、エンジンを改造する取り組みが行われている。 2ストローク自動二輪向けの改造キットを開発した(フィリピンなど)。
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