頭
★1a.頭に角をつけて鬼の姿になる。
『鉄輪(かなわ)』(能) 女が、別の女に心を移した夫を恨み、貴船神社に日参して呪詛する。社人の教えにしたがい、女は身に赤い衣を着、顔に丹を塗り、髪に鉄輪(五徳)を逆さに載せて3つの足に火をともし、鬼神となる→〔藁人形〕1b。
『八つ墓村』(横溝正史)「発端」 大正年間(1912~26)。田治見要蔵は妻子がありながら、19歳の鶴子を犯して強引に妾にした。しかし鶴子は何度も実家へ逃げ帰り、ついに郷里を出奔して遠方の親戚に身をよせる。要蔵は逆上し、春の夜、つけっぱなしの棒型懐中電灯2本を、鬼の角のごとく白鉢巻で頭に結びつけた姿で村中を巡り、猟銃と刀で32人を殺した。
『酉陽雑俎』巻15-577 昔からの言い伝えによると、野狐が妖怪になる時には、かならず髑髏を頭にのせて、北斗にお辞儀をする。髑髏が落ちなければ、人間に化けるのだ。
*頭に何かをかぶって姿を消す→〔隠れ身〕2の『居杭』(狂言)・〔帽子〕9の『ギリシア神話』(アポロドロス)第2巻第4章。
*髻に薬木をさして姿を消す→〔隠れ身〕2の『今昔物語集』巻4-24。
★1c.頭に金環をはめる。
『西遊記』百回本第14回 三蔵法師は、我儘勝手な孫悟空の頭に、金環をはめる。三蔵が呪文を唱えると金環は悟空の頭を締めつけるので、以後、悟空は三蔵の指図に逆らうことなく、西天取経の旅の供をする。
『徒然草』第53段 仁和寺の法師が宴席で、酔って3本足の鼎を頭に深くかぶり、舞う。ところが、舞い終えた後に鼎を抜くことができず、医者もさじを投げる。鼎の回りに藁しべを入れ、無理やり引くと、耳鼻が欠けながらも、ようやく抜ける〔*頭部にくっついたまま取れないという点で→〔面〕1aの『鉢かづき』・〔面〕3の『磯崎』と類縁の発想〕。
『ほらふき男爵の冒険』(ビュルガー)「ミュンヒハウゼン男爵自身の話」 「ワガハイ(ミュンヒハウゼン男爵)」が狩りに出て弾丸を撃ち尽くした時、思いがけず見事な大鹿が現れた。「ワガハイ」は桜んぼの種を銃にこめ、大鹿の両の角の間めがけて撃った。大鹿は逃げ去ったが、1~2年後、10フィート余りの桜桃の木が頭から生えた大鹿に、「ワガハイ」は出会った。今度は本物の弾丸で撃ち倒し、「ワガハイ」は鹿の上肉と桜桃ソースにありついた。
*桜んぼを食べた男の頭に桜の木が生える→〔ウロボロス〕4aの『あたま山』(落語)。
『大般涅槃経』(40巻本)「聖行品」 善住王の頭に水泡のようなできものができ、10ヵ月たってできものを開くと、そこから1人の端正な男児が生まれた。父王は喜び、男児を「頂生」と名づけた〔*頂生は「私は必ず転輪聖王になるだろう」と宣言したが、三十三天へ昇って帝釈天の位を奪おうとしたため、人間界に堕ちた〕。
*額から神や人が生まれる→〔額〕6。
『今昔物語集』巻2-34 バラモンの息子が沙門から仏法を学びながらも、師である沙門を罵り、「お前は愚かで智慧がない。頭は獣同然だ」と言った。この罪によって、息子は魚に生まれ変わった。その魚には、駱駝・驢馬・牛・馬・猪・羊・犬など、100の畜生の頭がついていた。
『神統記』(ヘシオドス) 原初の時、ガイア(大地)とウラノス(天)から生まれた多くの子の中に、コットス、ブリアレオス、ギュゲスという巨躯の3人(ヘカトンケイル)がいた。彼らの肩からは100本の腕が伸び、50の首が生えていた。
『神道集』巻4-18「諏訪大明神の五月会の事」 〔第58代〕光孝天皇の時代(884~887)に、信濃国戸隠山に鬼王がいた。鬼婆国の乱婆羅王から52代の子孫で、官那羅といい、その本体は身長2丈・足が9つ・顔は8つの姿だった。鬼王は戸隠山を出て浅間嶽にいる所を、満清将軍によって捕えられた。
*50の頭、もしくは3つの頭を持つケルベロス→〔犬〕7aの『神統記』(ヘシオドス)。
*10の頭を持つ魔王ラーヴァナ→〔島〕6aの『ラーマーヤナ』。
*9つの頭を持つ水蛇ヒュドラ→〔封印〕1aの『ギリシア神話』(アポロドロス)第2巻第5章。
『ルスランとリュドミラ』(プーシキン)第3歌 魔法使いチェルノモールは小男だったが、彼の兄は巨大な身体をしていた。チェルノモールは兄の背丈をうらやみ、そして憎んだ。チェルノモールは兄をだまして、その頭を切り落とす。兄の胴体は腐り、巨大な頭だけが荒野にころがっていた。旅のルスランに、頭が「やあい、騎士よ! 一突きしてわしを喜ばせてくれ」と、呼びかける。ルスランは槍で頭を突き刺し、頭の下にあった剣を手に入れる→〔髪〕1。
『ほらふき男爵の冒険』(ビュルガー)「海の物語」第10話 月の住民は(*→〔月〕1a)、頭を右の小脇に抱えている。旅行や仕事で出かける時には、頭を家に残しておく。身体がどんなに遠くへ行っても、家にいる頭と相談して采配をあおぐことができるからだ。逆の場合もある。身分ある連中は、下々(しもじも)の事情を知りたいと思っても、直々(じきじき)に足を運ぶことはせず、身体は在宅のまま、頭だけを派遣する。頭はおしのびであちこち出没し、情報を得て帰館するのだ。
★5b.頭をつけかえる。
『屍鬼二十五話』(ソーマデーヴァ)第6話 美女マダナスンダリーの夫がガウリー女神を拝み、「私自身を女神への生贄にしよう」と考えて、自らの頭を斬り落とす。マダナスンダリーの兄がそこへ来て、彼もまた自分の頭を斬り落とす。嘆き悲しむマダナスンダリーに、ガウリー女神は「頭と胴体を継ぎ合わせれば、2人とも生き返る」と教える。マダナスンダリーはあわてていたため、夫の頭を兄の身体に、兄の頭を夫の身体につけてしまった→〔夫〕10。
*首をつけかえる→〔首〕8の『聊斎志異』巻2-47「陸判」。
『ガリヴァー旅行記』(スウィフト)第3篇第6章 「私(ガリヴァー)」は、飛ぶ島ラピュータ支配下のバルニバービ国を訪れた。そこでは、対立する2政党を融和させる方法が研究されていた。それは、対立政党の各百人の頭部を脳髄が真っ二つになるように切断し、切り取った部分を交換して反対派の頭につければ、1つの頭蓋骨の中で半分ずつの脳が議論して、調和のとれた考えが生まれる、というものであった。
『今昔物語集』巻3-11 釈迦族の男が国王となり、龍宮の王の娘を后に迎える。后はふだんは人間の姿をしていたが、眠る時と性交の時には、后の頭から蛇の頭が9つ出て、舌なめずりをした。国王は気味悪く思い、蛇の頭をすべて切り捨ててしまう。そのため国王の子孫である釈迦族の人々は皆、絶えず頭痛に苦しむようになった。
『百物語』(杉浦日向子)其ノ25 京に大雹が降った時のこと。ある寺の妻女が頭痛に苦しみ、額のあたりを揉んでいた。指先に何かがヌルリと触れるので、払いのけると小さな黒蛇だった。空から1すじの黒雲が降りて来て、蛇をすくい、天へ昇って行った。たちまち大雹は止み、妻女の頭痛も治った。
『金枝篇』(初版)第3章第13節 ムーア人は頭痛が起こると、仔羊か山羊を捕らえ、これを倒れるまで打ち据えることがある。こうすれば頭痛がこの動物に移し替えられる、と彼らは信じている。
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