雄ノ山峠から紀伊田辺
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/02/11 14:31 UTC 版)
雄ノ山峠より先も、海南インターチェンジ付近の藤白神社に至るまでは、県道・主要地方道に指定された自動車の比較的多い区間が多く、県道と重複しない区間も軽自動車の通れる状態の道が大半を占める。 JR阪和線の山中渓駅付近の道程は石畳風に整備されているが、これは江戸時代の紀州街道をイメージしたもの。峠までの途中にある境橋が和泉国(大阪府)と紀州(和歌山県)の境界で、滝畑集落を抜けて峠を越える。峠を下ると官道時代に紀伊の関(白鳥の関)が置かれた湯屋谷集落となる。紀ノ川に至る間には、山口・川辺・中村の各王子のほか、熊野古道との関係が深い役小角を祀る祠もある。紀ノ川は聖地へ踏み込む最初の結界と捉えられていたことから、川辺の渡し場では穢れを祓う水垢離も行われていた。 紀ノ川を渡るとJR和歌山線の布施屋駅で、川端王子を合祀した高積神社があり、結界を越えたことから熊野遥拝所と呼ばれる。井ノ口集落を抜けると和佐王子跡があり、ここには江戸時代に紀州藩が王子跡を顕彰した碑が残る。矢田峠を越え、南海電鉄貴志川線を跨ぐと阪和自動車道と並走する。小瀬田と多田の集落間が和歌山市と海南市の境界になっている。神武天皇が東征で熊野入りする際に土蜘蛛を退治した地とされる蜘蛛池の脇から汐見峠を越えると、海南の市街地となる。 海南はかつて熊野神域の入り口とされ、熊野一之鳥居があった。往時はこの鳥居を潜り、祓戸王子を経て藤白神社へ向かった。藤白神社は藤代王子社から勧進されたもので、神社の先から始まる藤白坂は古道の趣きを残しており、1丁間隔で道標となる地蔵をかたどった丁石が据えられている。坂の頂上となる藤白峠は御所の芝と呼ばれ『紀伊国名所図絵』で「紀州随一の美景なり」と絶賛され、遠く四国まで眺望できる。峠には国の重要文化財の石地蔵を祀る地蔵峰寺があり、この境内もともとは藤白塔下王子の跡地であった。峠を越えると海南市下津町となり、菓子の神として知られる田道間守を祀る橘本神社(所坂王子)などがあり、拝ノ峠に向け上り坂となる。白倉山の脇を抜けると有田市に入り、紀勢本線の踏切に次いで有田川を渡る。現在では架橋されているが、往時は宮原の渡し場があった。再び上り坂となり、糸我峠を越えると湯浅町になる。 湯浅の市街地からはすぐ広川町となり、かつての宿場であった井関集落を通って鹿ヶ瀬峠へと向かう。紀伊路の中でも最も険路とされるこの峠の登り口には、東の馬留王子跡がある。馬留とは馬で越えるには険しい峠のため、京方面から来た貴人でもここに馬を留め置いて徒歩で峠を越えなければならなかったことに由来する。峠の前後には昔、茶屋が立ち並んでいた痕跡が残されている。尾根続きの小峠を境に日高町となり、下り道とでは約500メートルにわたる石畳が続く。その先の原谷集落には西の馬留王子跡があり、この界隈は古来から黒竹が自生し、その光景は多くの和歌などにも詠まれてきた。原谷集落界隈は山道ではなく、里山や田園地帯となる。ほどなく紀伊路は御坊市に入る。 御坊では道成寺の本尊である千手観音を海から拾い上げた海士を祀った九海士王子跡が寺の近くにある。市内を流れる日高川沿いに下流へ向かって進み、紀伊水道から太平洋になる海岸線に出て、しばらく海辺を歩くことになる。そのまま印南町に移り、切目王子などを経て榎木峠を越え、みなべ町に入る。『枕草子』や『伊勢物語』に記された千里の浜を歩き、小栗判官ゆかりの三鍋王子、その三鍋王子を一時合祀していたことから旧王子社をそのまま社殿とした鹿島神社を経て、田辺市に着く。芳養駅から先は、景観再生された松並木が続き(下記”景観・環境の復元”の節参照)、中辺路へ進む参拝者が海水で禊をした潮垢離浜跡の石碑と出立王子跡を過ぎ、直ぐに龍泉寺・浄恩寺・西方寺が連なる角を曲がり、旧会津橋を渡れば直ぐに道標に着く。そのまま直進し本町へ入る。突き当たりを右へ、陶器店前に道標(道分け石)があり右折直進。栄町を過ぎ、北新町の路傍に立つ道標(道分け石)で紀伊路は終わり、ここから中辺路と大辺路に分かれる。 紀伊路を歩く雄ノ山峠~紀伊田辺 .mw-parser-output .thumbinner{display:flex;flex-direction:column}.mw-parser-output .trow{display:flex;flex-direction:row;clear:left;flex-wrap:wrap;width:100%;box-sizing:border-box}.mw-parser-output .tsingle{margin:1px;float:left}.mw-parser-output .theader{clear:both;font-weight:bold;text-align:center;align-self:center;background-color:transparent;width:100%}.mw-parser-output .thumbcaption{background-color:transparent}.mw-parser-output .text-align-left{text-align:left}.mw-parser-output .text-align-right{text-align:right}.mw-parser-output .text-align-center{text-align:center}@media all and (max-width:720px){.mw-parser-output .thumbinner{width:100%!important;box-sizing:border-box;max-width:none!important;align-items:center}.mw-parser-output .trow{justify-content:center}.mw-parser-output .tsingle{float:none!important;max-width:100%!important;box-sizing:border-box;align-items:center}.mw-parser-output .trow>.thumbcaption{text-align:center}} 和泉・紀伊国境の山中関所跡から始まる 和泉・紀伊国境の境橋 雄ノ山峠 山口王子跡 湯屋谷集落 川辺王子跡(力侍神社) 川辺の渡し場跡付近 紀の川を渡る 川端王子 井ノ口集落 紀州藩の顕彰碑が建つ和佐王子跡 矢田峠 塩ノ谷集落 平緒王子跡 平尾集落 貴志川線踏切越しの口須佐集落 奈久智王子 吉里集落 松坂王子 石畳の坂道(海南市) 蜘蛛池 汐見峠 松代王子跡(春日神社) 祓戸王子跡 藤白神社 藤白坂 藤白坂の丁石地蔵 藤白峠の宝塔 藤白塔下王子 御所の芝 蜜柑畑の脇を下る 橘本王子跡(阿弥陀寺) 木橋を渡る 橘本神社 所坂王子跡(橘本神社境内) 一壷王子跡(山路王子神社) 拝ノ峠からの眺望 蕪坂塔下王子 山口王子 宮原の渡し場跡 河瀨王子 鹿ヶ瀬峠(大峠)の頂上 小峠 鹿ヶ瀬峠へ続く石畳 路傍の板碑 奥原谷の旧集落跡を抜ける 原谷集落の古民家 原谷集落 沓掛王子跡 西の馬留王子跡 原谷集落の田園風景 内ノ畑王子跡 高家王子(内原王子神社) 道成寺 光川海岸(印南町) 斑鳩王子 切目王子 切目海岸 切目中山王子(中山王子神社) 土盤切り出しの古道(印南町) 榎木峠 里山風情の古道(印南町) すれ違い困難な隘路(みなべ町) 岩代王子 古道の風情(みなべ町) 千里王子 千里の浜 三鍋王子 芳養王子 芳養の松原 潮垢離浜跡碑 出立王子 紀伊路の終着点・道分け石
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