逮捕例・判例等
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/03 09:19 UTC 版)
2008年11月10日の最高裁判所は迷惑防止条例の「卑わいな言動」を「社会通念上、性的道義観念に反する下品でみだらな言語又は動作」と定義した上で、2006年に北海道旭川市のショッピングセンターで女性(当時27歳)の後ろを執拗に付け狙い、カメラ付き携帯電話でズボンを着用した同女性の臀部を背後から1~3メートルと至近距離から11回気づかれずに撮影した盗撮行為について、「公共の場所で正当な理由なく被害者を著しく羞恥させ、被害者に不安を覚えさせるような卑わいな言動」に該当するとして有罪を維持する判決が出され、下着や裸体ではなく着衣の姿の盗撮を含む撮影行為であっても迷惑防止条例が禁止する「卑わいな言動」として取り締まりが可能となる判例が出た。これにより全国各地の海水浴場で水着姿の無断撮影が「卑わいな言動」とされ迷惑防止条例で取り締まる根拠とされていると弁護士による指摘がある。また、後ろ姿を盗撮して逮捕・起訴されたケースもある。女性アスリートに対する性的な目的での撮影も問題となっており、特に体型が現れやすく露出も多いユニフォームを採用する陸上、水泳、体操、フィギュアスケートでは性的な画像・動画を撮影していた撮影者が迷惑防止条例違反などで逮捕・起訴される事例が多い。不特定多数の観戦者が集まる会場で競技を行う関係上、女性アスリートは盗撮被害に遭いやすいため、会場内は原則撮影禁止として、違反したら警察に通報する対応が多く見られるようになった。スマートフォンの普及によって撮影が容易になった2020年代、法制審議会では盗撮自体を直接的に処罰する「撮影罪」の新設についても諮問が行われている。 上記のように服を着た人物の撮影でも、至近距離から寝顔、胸元、臀部などを接写したケースでは卑猥な言動と見做されて逮捕されるケースがある。ただし、服の上からの撮影で後日逮捕のケースは少なく、報じられたニュースでは現行犯がほとんどである。 現行犯逮捕が多いが、逮捕状が発行される後日逮捕も普通にある。それらは概ね以下のケースになる。 スカートの中に撮影器具やカバン等を差し込む トイレや脱衣場で撮影器具が押収される 盗撮を指摘された際に現場から逃走している 販売されたり他の容疑で押収された映像から発覚 のケースである。これらは外形的に明らかに疑うに足る証拠になるからである。 一方で服を着た容姿の撮影で逮捕状が発行されるケースは極めてまれである。 2017年1月に宮城県仙台市宮城野区内の駅のホームで女子高生のスカート内を携帯電話で盗撮したとして、宮城県迷惑防止条例違反の罪で起訴されたコンビニ店員の男は、携帯電話に盗撮が疑われる写真や動画は保存されていなかったが、防犯カメラの映像や目撃証言を証拠として起訴され、同年6月16日、仙台地方裁判所で懲役1年の実刑判決を受けた。なお、弁護側は「検察側が主張する犯行状況と防犯カメラの映像が一致しない」、「シャッター音を巡る目撃証言が変遷した」として無罪を主張しており、控訴する方針である。 2014年7月に大阪市で恐喝する口実を握るために女性がミニスカートにハイヒールを履いて前屈みを繰り返す行為をしてスカート内を盗撮された事件では、女性が盗撮されることを承知で行動していたため「著しく羞恥させ又は不安を覚えさせる場合」ではないとして盗撮者は迷惑防止条例違反には該当しないとして立件されなかった。 2013年10月から2014年3月にかけて盗撮に使用されると知りながら小型カメラが仕込まれた盗撮用運動靴を京都市左京区の会社員の男ら3人にインターネット販売し、盗撮を助長したとして、2014年7月に迷惑防止条例違反(盗撮)幇助の罪で盗撮用運動靴の販売業者の社長と従業員が逮捕された。販売業者を盗撮幇助容疑で摘発したのは全国初である。サイトでは 「盗撮禁止」の文字があったものの約20秒間のサンプル映像で女性のスカートの中の盗撮を露骨にイメージさせる宣伝をしていたことが幇助の重要な証拠となって2人が罪を認め、京都簡裁から社長に罰金50万円、従業員に罰金20万円の略式命令が出た。さらに京都府警は、盗撮靴型カメラの所持を禁止する法律はないものの盗撮を助長するとして、京都府在住の盗撮用運動靴の購入者36人を戸別訪問して盗撮用運動靴の任意提出を求め、すでに破棄したなどと回答した購入者を除く20人から任意提出された23足を、廃棄依頼書の記入を受けた上で廃棄した。 2010年4月から2013年12月にかけて宮崎県における5件の性的暴行(強姦罪・強制わいせつ罪)に絡んで盗撮が行なわれていた事件では、弁護人が告訴を取り下げれば盗撮ビデオを処分すると被害者側に持ちかけていたが、この盗撮ビデオは後に当局に押収された。刑事裁判で弁護側はこのビデオについて「客とのトラブルに備えて撮影したもの」で犯罪とは無関係であり、没収できないと主張したが、2018年6月26日に最高裁は「隠し撮りを被害者に知らせて処罰を求めることを断念させて刑事責任を免れようとしたと認められ、ビデオは犯罪のために使われたと言える」として没収可能との判断を示した。 街の人肖像権侵害事件(東京地裁平成17年9月27日)では、財団法人「日本ファッション協会」がウェブサイトに被写体の原告の一般人の女性に無断で掲載した写真について330万円の賠償を求めた訴訟が提起され、「無断掲載は肖像権の侵害」として慰謝料など35万円の支払いを被告側が命じられた。
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