逮捕作戦の失敗
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/07 06:36 UTC 版)
「司ちゃん誘拐殺人事件」の記事における「逮捕作戦の失敗」の解説
8月7日、KはA宅に電話した後、麻雀店で賭け麻雀をして過ごし、翌日(8月8日)にはお盆の帰省客で混雑する上野駅を身代金の取引場所に指定することを考え、構内を下見した。そして翌9日、夕方のラッシュ時を利用して身代金を奪うことを決意し、9時過ぎにA宅へ「18時30分、上野駅構内の正面にある伝言板のところへ来い」と指示した。これを受け、BはKの指定通り現金500万円の入った黒かばんを肩に掛け、手に新聞紙を丸めて持ち、上野駅に向かった。また、赤池刑事部長、立川松三捜査一課長ら捜査員7人も特急「あずさ」で東京へ向かい、同日17時30分には山梨県警や警察庁・関東管区警察局・警視庁などによる54人体制の捜査陣が編成された。捜査陣は上野駅周辺に捜査員36人を配置するなどして、Kを逮捕する機会を窺ったが、Kは指定時間に上野駅に行こうとしたところ、構内に張り込んでいた刑事3人を見つけ、身の危険を感じて逃走した。 Kは8月10日も、改めて前日と同じ場所・時刻を指定し、身代金を得ようとした。一方、捜査本部は同日8時21分、24回目の電話を逆探知したところ、東京・蔵前中継局から掛かってきた電話であることを把握したため、上野・下谷のアパートを中心に隠密ローラー作戦を展開した。Bが約束通り取引現場の上野駅へ向かうことになったが、その前に捜査陣(山梨県警・警察庁・関東管区警察局・警視庁の幹部)が打ち合わせを行い、「どんなことがあってもBは現場を離れない」「Bは犯人側と接触した場合、肩を叩くなどの合図を送る」などの作戦が立てられた。その上で、17時30分までに上野駅周辺で、捜査員全135人(警察庁から2人、関東管区警察局から1人、警視庁から114人、山梨県警から18人)が緊急配備につき、犯人を待ち伏せた。 同日18時50分、Kは上野駅へ出向いたところ、今度は張り込みの気配が感じられなかったため、伝言板のところにいたBに対し、「一緒に来てくれ」と声を掛けたが、BはKがAを連れていなかったことや、警察官から「声を掛けられても付いていくな」と指示されていたため、これを無視。捜査員たちとの打ち合わせ通り、新聞紙で肩を叩いてサインを送りつつ、現場に立ち止まっていたが、この合図で犯人を逮捕することはできなかった。 Bの態度に危険を感じたKは、すぐにその場を離れようとしたが、張り込んでいた刑事に追跡され、振り切って逃走した。一方、Kを逮捕目前で逃したことを受け、捜査本部は同日19時30分、当初の計画(Bを指定場所から離す)を変更して「再度現れたら捕まえよ」と司令を出したほか、警視庁機動捜査隊を上野に集め、上野駅周辺を検索したが、Kを発見することはできなかった。結局、Bは22時過ぎに指定場所を離れ、捜査員の配備も23時10分に解除された。 この間、(8月8日 - 10日にかけて)Kは電話に出たBやCに対し、Aについて「兄貴の姉さんが気に入っちゃって毎日遊んでいる」と説明していた一方、「山梨のサツ(警察)はきたないじゃないか」「だめだよ。あんなにサツをつれてきちゃあ」などと詰問していたほか、27回目の電話(10日19時14分)では、非常に興奮した様子で「おやじを出せ。ぶち殺したる」と発言していた。刑事に追跡されたことで「いよいよ身に危険が迫った」と感じ、いったんは身代金奪取を断念しようとしたKだったが、「Bを困らせてやろう」と考え、8月11日には4回にわたってA宅に電話を掛け、再び上野駅に身代金を持ってくるよう指定した。しかし、同日昼ごろ、以前勤めていた上野の電気店を訪れたところ、警視庁の刑事が同店を訪れたため、慌てて店を出、「自分は指名手配されている」と思い、身代金奪取を断念したが、実際にKが指名手配されたのはこれより後の8月12日正午であった(後述)。
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