評価・変遷
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「ルーゴン・マッカール叢書」の記事における「評価・変遷」の解説
構想の時点(1869年)ではいまだフランス第二帝政が継続中であったため、叢書はいわば「同時代の記録」となるはずであったが、第1作『ルーゴン家の誕生』の執筆中に普仏戦争が勃発し、第二帝政が崩壊した。そのため、当初の予定を変更して、叢書は第二帝政全体を、その開始から終結まで包括的に描くものとなった。 出版当初は、ほとんどといっていいほど売れなかった。当時フローベールはジョルジュ・サンドへの書簡で、「ゾラの新刊『プラッサンの征服』は出版後6か月かかってフランス全土で1700部しか売れなかった」と報告している。 ところが、第7作『居酒屋』が新聞に連載されるとすさまじい反響を巻き起こし、フランス社会を真っ二つにする論争が起こった。そして読者からの非難が集中し、新聞連載自体を中止せざるを得なくなった。ゾラはやむなく別の雑誌に連載を続け、翌年単行本として出版すると、当時としては異例の5万部を売り尽くした。 その批判であるが、要するに「あまりに労働者階級を露悪的に描きすぎている。こういう小説はむしろ下層階級をおとしめるものだ」というものであった。ゾラ自身は執筆前に綿密な取材を重ねており、むしろパリの下層階級のあるがままの姿を描いていたが、それが当時の読書層(ブルジョワ階級)にはショッキングな事実だったということである。 いずれにせよ、『居酒屋』以降はフランスにおいて自然主義文学の黄金時代が到来することとなった。 ゾラは「居酒屋」の印税でパリ郊外のメダンに別荘を買い求め、そこにはモーパッサン、ユイスマンスなどが集うようになった。 その後も『ナナ』『ごった煮』『ボヌール・デ・ダム百貨店』『ジェルミナール』などを発表した。第14作『制作』を発表すると、それが原因で少年の頃からの親友だったセザンヌと絶交状態になる。それはセザンヌが、最後には精神を病み、自殺してしまう主人公のモデルとされたからである 第15作『大地』を出版すると、『居酒屋』のときと同様な(作品の不道徳さに関する)ゾラ批判が起こる。かつての『居酒屋』に対する批判は自然主義文学の勃興をもたらしたが、『大地』に対する批判は自然主義文学の終焉をもたらすこととなった。ただ、そのころにはゾラ自身、自然主義的な作風から移行しつつあった。 最終巻『パスカル博士』を発表したころには、ゾラは事実を生々しく描く自然主義よりも、むしろ理想主義的傾向を強めていた。もはやゾラはルーゴン=マッカール叢書におけるような自然主義を離れ、『三都市叢書』『四福音書』の執筆に向かうことになる。また、ドレフュス事件の冤罪を確信し、その再審運動に尽力したのも、理想を追求するゾラの誠実さに基づくものといえる。
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評価・変遷
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福澤諭吉は、自分の子供に日々渡した家訓「ひゞのをしへ」で、悪行をなす鬼を懲罰する桃太郎は正しくとも、(世のために)鬼が所持する宝を強奪した桃太郎は「卑劣千万」であると非難する。 現代でも「本当は鬼が島に押しかけた桃太郎らが悪者ではないか」と考える者はおり、裁判所等で行われる模擬裁判の事例やディベートの議題として取り上げられる場合がある。 芥川龍之介をはじめとして、尾崎紅葉、正岡子規、北原白秋、菊池寛などの著名な小説家たちも競って桃太郎を小説の題材にしており、桃太郎が「日本人」の深層心理に与えている影響の大きさがうかがえる。 太平洋戦争の際には桃太郎は軍国主義という思想を背景に、勇敢さの比喩として語られていた。この場合桃太郎は「鬼畜米英」という鬼を成敗する子としてスローガンに利用され、日本初の長編アニメ映画といわれる『桃太郎の海鷲』『桃太郎 海の神兵』はじめ多くのプロパガンダ作品に登場した。戦時中には孝行・正義・仁如・尚武・明朗などの修身の徳を体現した国民的英雄として、大正期の童心主義では童心の子として、プロレタリア主義では階級の子、また戦後になると民主主義の先駆として語られるなど、桃太郎はしばしば国民の模範として描かれてきた。一方、太宰治は戦争中に執筆(発表は戦後)した『お伽草紙』の中で、「桃太郎」を「私の物語に鋳造し直すつもり」だったが、完璧に強い桃太郎を描くことが自分にはできない、「いやしくも桃太郎は、日本一という旗を持っている男である。日本一はおろか日本二も三も経験せぬ作者が、そんな日本一の快男子を描写できる筈が無い。」として執筆を断念したと記している。
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