経営環境
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/14 17:24 UTC 版)
鉄道事業においては、博多駅・熊本駅・鹿児島中央駅の各都市間の輸送を主としている九州新幹線と、博多駅を中心に九州の各主要都市間を結ぶ在来線特急列車などの中長距離輸送が主な収益源となっているが、九州では主たる都市間を結ぶ高速道路の整備が早期から進んでおり、JR九州の列車に対して料金面で優位性のある高速バスが九州の各地で競合している。さらに福岡市と北九州市の大都市同士を結ぶ博多駅 - 小倉駅間では国鉄分割民営化により、山陽新幹線が西日本旅客鉄道(JR西日本)の所有となったことで、JR九州の所有する鹿児島本線の同区間を走る特急列車(「きらめき」「ソニック」など)と、時間的な優位性のあるJR西日本の山陽新幹線が競争関係になった。宮崎県と福岡県の移動では所要時間が短い航空機を使う人も多く、九州内では競合交通機関に対して時間面、料金面、利便性の面などで圧倒的な優位性を発揮できる区間は限られているのが現状である。九州新幹線は山陽新幹線と直通運転を行い、九州の各都市と山陽地方や関西とを結んでいるが、ここでも高速バスや航空機と競合関係にある。 近距離輸送の面では、管内には福岡市・北九州市(北九州・福岡大都市圏)をはじめ、九州各県の県庁所在地の近郊など比較的輸送量の多い線区も存在するが、首都圏や関西圏などのように莫大な収益をもたらすものではなく、経営の一助になるには至っていない。むしろ、管内には輸送密度が低いローカル線も多く抱え、沿線の過疎化などの社会問題も相まって年々利用が減少しており、経営の負担になっている。 このような経営環境にあり、ネット予約を用いた割引切符の拡充や増発などで主力である中長距離輸送のサービス向上を図る一方、現業部門のコスト縮減・合理化の一環として以下の施策により現業部門の人員削減を進めているほか、2020年代に入るとコロナ禍による鉄道事業の大幅な減収への対策として、不要な設備の撤去や普通・快速列車のロングシート化などによる保有車両数の削減を打ち出している。 ワンマン運転の拡充 普通列車では、1988年の香椎線と三角線を皮切りに、車掌を乗務させないワンマン運転を九州各地で拡大させた。普通列車のワンマン運転は2015年3月時点で、山陽本線の下関駅 - 門司駅間、鹿児島本線の門司港駅 - 鳥栖駅間(福北ゆたか線との直通列車を除く)を除く全ての区間で行われている。2004年以降は、2両以下の編成のD&S列車もワンマン運転となっている(車内改札は客室乗務員が担当する)。 特急列車においても、「ゆふいんの森」「あそぼーい!」「36ぷらす3」を除くD&S列車と、「にちりん」「ひゅうが」「きりしま」の一部(787系電車4両編成を使用する列車) でワンマン運転を実施している。 駅の無人化等 JR九州発足以降一貫して駅の無人化を進めており、2015年には、同年春以降に同社発足以来最大規模となる100駅前後を無人化する計画が明らかになった。このうち香椎線ではANSWERと呼ばれる駅遠隔案内システムを導入した「Smart Support Station」として、香椎駅・長者原駅を除く線内の14駅が無人化された。同システムはこの他に2021年3月3日時点で筑豊本線 若松駅 - 新入駅(折尾駅を除く11駅)、大分地区の豊肥本線と日豊本線の一部の駅、指宿枕崎線の郡元駅 - 喜入駅にも導入されている。 新玉名駅を皮切りに新幹線駅では全国で初めて駅員のホーム配置を廃止した。JR九州が管理する新幹線駅では2021年3月3日時点で新鳥栖駅、熊本駅、鹿児島中央駅を除く駅の新幹線ホームが駅員無配置となっている。 今後はインターネットを用いた割引切符の販売強化などによるみどりの窓口の削減 を予定しているという。 その他、線路のメンテナンスにロボットを導入することなども検討中であるとしている。 これらの施策の結果、発足初年度の営業損益は288億円の赤字となったが、九州新幹線が部分開業した2004年度には、営業損益が黒字に転換した。2011年3月12日に全線開業した九州新幹線の営業収益は2017年3月時点でおよそ501億円となり、JR九州の鉄道事業全体の収益(同年1464億円)の3分の1以上を占めるに至るなど、事業の大きな柱となっている。これを軸として、前述の観光列車などで引き続き地域の活性化や鉄道事業の収益拡大を図りつつ、不動産などの沿線開発や事業の多角化を進め、鉄道事業と関連事業の相乗効果をもって利益を拡大する事業戦略を推進している。2016年度から3カ年の中期経営計画では「総合的な街づくり企業グループを目指す」としている。 2016年の株式公開においては、投資家の間でも訪日観光客の強い伸びが安定した企業成長につながるといった見方があるとされている。 今後の展開としては、九州新幹線西九州ルートのうち武雄温泉駅 - 諫早駅間が2008年4月、諫早駅 - 長崎駅間が2012年8月に着工され、2022年9月23日に武雄温泉駅 - 長崎駅間が西九州新幹線として開業予定である。
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