第3次ティアマト会戦
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/10 01:18 UTC 版)
「銀河英雄伝説の戦役」の記事における「第3次ティアマト会戦」の解説
宇宙暦795年/帝国暦486年2月。ラインハルトが中将として、そして一個艦隊指揮官として参加。そもそもこの会戦は皇帝フリードリヒ4世の在位30周年記念に花を添えるためというだけの理由での出征が発端であり、当然宇宙艦隊司令長官のミュッケンベルガーは消極的であった。しかし、そんな無益な出征をおこなうゴールデンバウム王朝自体が許せないラインハルトは、消極的どころか苛立っていた。 対する同盟軍は、新しく第11艦隊司令官に就任し、同盟軍史上最年少の中将として「ブルース・アッシュビーの再来」とマスメディアに持ち上げられていたホーランド中将が「第2次ティアマト会戦の再現」を豪語し、第11艦隊の投入が決定された。またシトレの意向でビュコック中将の第5艦隊、ウランフ中将の第10艦隊が投入されることになった。さらに国防委員会の承認が得られ次第、パストーレ中将の第4艦隊とムーア中将の第6艦隊も投入されることになっていた。 会戦の序盤、同盟軍の第11艦隊では、先任のビュコック中将が増援を待つ方針をとったのを消極的と見たホーランドが苛立ち、ビュコックの命令を無視して艦隊を率いて孤軍突出、帝国軍をかき乱し、大損害を与え、帝国軍を撤退寸前まで追い込んだ。しかし、ラインハルトはこのホーランドの采配を「速度と躍動性には優れているが、他の部隊との連携を欠き、補給の伸長を無視している」と酷評している。ホーランドがラインハルトの部隊を攻撃すると、ラインハルトは後退して、第11艦隊が攻勢終末点に到達するのを待った。自分の将才を過信するホーランドはビュコックの三度の後退勧告も「先駆者は常に理解されぬもの」と無視し、突撃を繰り返した。OVA版では、ホーランドはさらに調子に乗って、オーディンまで侵攻して皇帝を処刑してやる、俺はリン・パオやアッシュビーをも超えてやると夢想を繰り広げるが、その瞬間、第11艦隊は後先考えない攻勢の果てに攻勢終末点に到達して力尽き、敵中に立ち往生して絶好の静止目標と化してしまった。 それを読んで待ち構えていたラインハルトはすかさず全艦の主砲の三連斉射を命じ、その三連斉射一度で第11艦隊を蹴散らして戦局を逆転させた上にホーランドをも旗艦ごと戦死させた。そして第二の三連斉射でとどめを刺して、本物の将才というものを見せつけた。 帝国軍本隊は敗走する第11艦隊を追撃したが、あらかじめこの展開を予想して準備していたビュコックの第5艦隊、ウランフの第10艦隊が緊密かつ巧妙に連携した防戦を展開、大した戦果を挙げることは出来なかった。第3次ティアマト会戦は両軍にとって、これまでの無数の戦い同様に不本意な形で終了した。ラインハルトはこの戦いの功績によって大将に昇進。また帰還後に新造戦艦ブリュンヒルトを下賜される。 OVA版では、この戦いが全シリーズの最終エピソードとして制作された。OVA版は第一作「わが征くは星の大海(OVA版オリジナル)」(1988年)で、ブリュンヒルトに座乗したラインハルトが宇宙のかなたから登場するシーンで始まり、そして本作(2000年)ラストでラインハルトがキルヒアイスとともにブリュンヒルトに駆け込んで退場してゆくシーンが、全編の終幕となった(Blu-ray版では順番が変更されている)。 なお、道原かつみのコミック版では、逆にこの戦いが冒頭になり、ラインハルトが第11艦隊を撃滅するシーンから物語が始まっている。 藤崎竜のコミック版では主にラインハルト、ミュッケンベルガーを中心とした帝国艦隊とホーランド率いる第11艦隊との戦いに焦点が置かれる形で描かれている。また、当時の門閥貴族の間で徐々に目障りな存在になりつつあるラインハルトを戦死させるという思惑も絡み合っており、多くの陰謀を抱え込む形で戦端が開かれる事になった。 当初はラインハルト艦隊も前線に配備される予定であったが、直前にミュッケンベルガーはラインハルトを呼びつけ、後方待機を命ずる。彼は門閥貴族に戦争に介入される事を嫌悪し、その渦中にあるラインハルトを戦端から遠ざけようとしていた(戦争の最中に貴族の思惑で引っ掻き回されることを危惧したためでもある)。同じ頃、ラインハルトの座乗艦「タンホイザー」には貴族達の差し向けた参謀長、ノルデン少将が着任していた。 一方、自由惑星同盟軍も帝国軍の動きを察し、アレクサンドル・ビュコックを筆頭にウランフ、ホーランド指揮下の艦隊をティアマト宙域に展開させて迎え撃った。しかし英雄志向の強いホーランドは作戦会議の席でビュコック、ウランフとの連携を拒絶。挙句、不遜な物言いに加えて大挙して通信回線に割り込んできたホーランドの部下達の気迫も相俟って、作戦会議はホーランドの専横を止められないまま打ち切られてしまう。 戦端が開かれると同時に、ホーランドの旗艦であるエピメテウスが単艦で突撃。それに第11艦隊の僚艦達が追随して加速し、遂には艦隊全体の突撃へと肥大していった。今までのセオリーを全く逸脱したこの戦法によって、ホーランドと第11艦隊は完全なワンマンプレーの様相で戦場を蹂躙。一時は旗艦ヴィルヘルミナにさえ迫る勢いで帝国艦隊の多くを葬っていった。直後にホーランドは無傷のまま待機するラインハルト艦隊に狙いを定め、追撃。一方、この機を待っていたラインハルトは後退を命じてホーランド艦隊の「息切れ」を狙った。 これに対してホーランドは、帝国艦隊が「撤退」ではなく「後退」している事を看破し、罠と理解しつつも追撃を敢行。しかし艦隊の活動限界点に入って第11艦隊の僚艦は次々に脱落。最後まで追い縋った旗艦エピメテウスもまた、孤立無援のまま立ち往生する結果となった。これを好機と見たラインハルトは3度の一斉射でエピメテウスを轟沈。第11艦隊の多くは直後に駆け付けたビュコック、ウランフ両提督の艦隊によって辛くも壊滅を免れた。 なお、原作と異なりラインハルトは敗死したホーランドを「幾つも評価すべき点が見られた指揮官」とそれなりに評価している。また、原作では何ら活躍しなかったノルデン少将も、藤崎版では「ラインハルトを戦死させるために大貴族が送り込んだ間者」として描かれている。
※この「第3次ティアマト会戦」の解説は、「銀河英雄伝説の戦役」の解説の一部です。
「第3次ティアマト会戦」を含む「銀河英雄伝説の戦役」の記事については、「銀河英雄伝説の戦役」の概要を参照ください。
- 第3次ティアマト会戦のページへのリンク