秘密
『有明けの別れ』巻1 左大将が継娘を犯して、身ごもらせる。男装の右大将が彼女に同情し、名目上の妻(対の上)とする。生まれた男児は右大将の子として育つ。後、対の上は左大将の息子とも関係を持って女児を産む。この女児も右大将の子として育つ。
『苔の衣』 三条帝の息子東宮に苔衣の大将の姫君が嫁し、女御となる。しかし、やがて誕生した若宮の真の父は、東宮の弟兵部卿宮だった。
『古事談』巻2-55 待賢門院璋子は鳥羽帝の女御として入内したが、白河院が彼女と密通し、祟徳院が生まれた。鳥羽帝はこのことを知っていて、祟徳院を「叔父子」と呼んだ。
『三四郎』(夏目漱石) 独身でいる理由を問われた広田先生が、譬え話をする。「父が早く死んで母1人を頼りに育った子がいる。やがて母が病気になって死ぬ時、お前の本当の父親は別にいる、と子に告げる。そんな経験をした子は結婚に信仰を置かないだろう」。三四郎が「先生の場合はそれとは違うでしょう」と言うと、先生はハハハハと笑った。
『夜の寝覚』(中間欠巻部分) 寝覚の上は、大納言の子を身籠もったまま左大将と結婚する。左大将はそれを知りながらも何も言わず、寝覚の上をいたわり愛する。生まれた男児まさこ君を、左大将はわが子として育てる。
★2a.秘密の子(母が異なる)。夫が愛人に産ませた子を、妻が自分の子として育てる。
『婦系図』(泉鏡花)後篇「思ひやり」~「お取膳」 早瀬主税は、恩師・酒井俊蔵から叱責されて、愛人の芸者お蔦と別れる。酒井の1人娘・妙子が、病臥するお蔦とその世話をする芸者・小芳を見舞う。妙子がお蔦を励まして帰った後、小芳は「あの娘を育てたのは酒井先生の奥様だが、産んだのは私だ」と言って、お蔦とともに泣く。
『陽のあたる坂道』(石坂洋次郎) 会社社長田代玉吉は妻みどりとの間に、雄吉・くみ子の2子をもうけたが、その一方で芸者トミ子とも関係を持ち、信次が生まれる。みどりは信次を自分の子として引き取り、育てる。成長後、出生の秘密を悟った信次は、わざと粗野なふるまいをするなどして周囲を驚かせる。くみ子の家庭教師として雇われた女子大生たか子が、信次の言動にとまどいつつ、やがて彼への愛を自覚する。
『木幡の時雨』 故奈良兵部卿右衛門督の娘中の君・三の君と、東宮・中納言とが、複雑な関係を持つ。中納言を父・中の君を母として双子の女児が育つが、その真の母は三の君だった。また、東宮を父・三の君を母として双子の男児が育つが、その真の母は中の君だった。後、女院となった三の君は、帝位についた息子に、汝の真の母は中の君だと教える。
『古事談』巻2-27 在原業平が勅使となって伊勢に下った時、斎宮と密通して男児が生まれた。秘密にせねばならないことなので、摂津守・高階茂範の子として、「師尚」と名づけた。
『狭衣物語』巻2 狭衣は、女二の宮(=嵯峨帝の娘)をかいま見て関係を結び、彼女は懐妊する。女二の宮の母(=嵯峨帝の后)は、娘の妊娠を知って驚き、これを隠さねばならないと考える。やがて娘が産んだ男児を、母は「自分が産んだ」と公表する(*→〔出産〕13b)。狭衣と女二宮の間に生まれた男児が、嵯峨帝と后(=女二の宮の母)の間の子、とされたのである。
★4.秘密を語る(口論して)。
『ジャータカ』第284話 木にとまった2羽の雄鶏が喧嘩をし、お前にどのような力があるのだ、とののしりあう。下の鶏が「自分の肉を食べた者には大金が授かる」と言うと、上の鶏が「自分の肉の各部位を食べた者は、王・将軍・理財官などになる」と言う。木の下に寝ていた男がこれを聞き、上の鶏を殺して食べようとする。
『ジャータカ』第285話 世尊ゴータマの修行僧団の評判を落とそうとたくらむ外道らが、暴漢たちに依頼して女性修行者スンダリーを殺させ、その罪を世尊の弟子たちになすりつける。暴漢たちは外道にもらった礼金で酒を飲み、喧嘩を始める。1人が「お前がスンダリーを殺し死体を捨てた」と言い、彼らの犯行が露見する。
『ダンマパダアッタカター(法句経注)』 モッガラーナ長老(目連尊者)を殺害した盗賊たちが酔って酒場で口げんかをはじめ、長老を最初に打ったのが誰であるかについて争いあう。このため彼らの犯行が知れ、捕らえられる。
『伴大納言絵詞』 伴大納言家の出納の子と、右兵衛府の舎人の子とが喧嘩をする。両方の親も出て来て争いとなり、舎人が出納に「お前の主の大納言など、わしが口をあけてしゃべれば人並みにしてはおれまい」と言う。そこから伴大納言の応天門放火が明るみに出る〔*『宇治拾遺物語』巻10-1に同話〕。
『うつほ物語』「国譲」下 祐澄宰相中将・近澄蔵人少将たちが、女二の宮を盗み出そうと画策する。女二の宮の乳母越後が計画に加担するが、彼女がささいなことから下衆男を叱りつけたため、腹を立てた男が人々の前で女二の宮奪取の企てをしゃべる。
『三国志演義』第23回 国舅董承と医師吉平が、横暴のふるまい募る曹操を毒殺しようと計画を練る。吉平が帰った後、董承は、妾が下僕と物陰で語らいあっているのを見、怒って2人を棒で打ち、下僕を空き部屋に閉じこめる。下僕は逃げ出し、曹操に暗殺計画を知らせる。
『諸艶大鑑』(井原西鶴)巻5-1「恋路の内証疵」 難波木村屋の太夫越前は、11歳になる禿(かぶろ)の少女を手引きとして、間夫に逢う。親方が禿を拷問しても禿は太夫から「頼む」といわれた一言を忘れず、最後まで口を割らない。後に越前がささいなことで、人前で禿を焼けた煙管で打ったため、禿はそれを恨み親方に密事を話す。
『飛烟伝』(唐代伝奇) 武公業の愛妾飛烟は、隣家の趙氏の息子象と見そめあい、裏庭で逢引を重ねる。1年ほど後、飛烟は女中の小さな過ちをとがめ、何度も仕置きをする。女中はそれを根に持ち、飛烟と象との情事を公業に告げ口する。
『武道伝来記』(井原西鶴)巻4-2「誰か捨子の仕合せ」 朋輩を後ろから斬り、その手柄を横取りした矢切団平が、後に若党の九市郎を仕事ぶりが悪いといって叱り、長屋に押しこめて打ち首を宣告する。九市郎は怨んで、主人の悪事を恋人の腰元に語る。
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