病気喧伝と訴訟
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/08/11 09:24 UTC 版)
10年もの間、グラクソ・スミスクライン(GSK)は「依存性がない」として薬を販売してきたが、それは多くの専門家ならびに、少なくとも1つの裁判によれば事実に反する。2001年に英国放送協会(BBC)は、世界保健機関が投与中止が非常に困難な抗うつ薬に「パロキセチン」を位置付けたと報じた。 2002年にアメリカ食品医薬品局(FDA)は、薬に関する新しい製品警告を公表し、また国際製薬団体連合会(IFPMA)はGSKがパロキセチンに関して市民を欺き、さらに2つの連合における規約基準に違反していたと述べた。『イギリス医学雑誌』は、Social Audit(社会監査)の代表であるチャールズ・メダワー(Charles Medawar)を引用した。 この薬は長い間、安全で中止が簡単だと宣伝されてきた…依存症の原因となるたぐいの耐えがたい離脱症候群を引き起こすという事実は、患者・医師・投資家また同社にとって極めて重要である。グラクソスミスクラインは、10年以上前にパロキセチンの認可が与えられて以来その問題を回避してきたし、同薬は大ヒットし全収益の約10分の1を生み出している。同社は、あまりにも長い間、直接消費者に対して「非依存性」だとパロキセチンを宣伝してきた。 — チャールズ・メダワー グラクソスミスクラインが掲示するパロキセチンの処方情報は、重篤な中断症状を含む中断症候群の発生を認めている。 1992年にパロキセチンがFDAに認可されて以来、およそ5,000人のアメリカ市民がGSKを訴えてきた。これらの人々の大部分は、同薬を非依存性だと明確に宣伝した後、GSKは薬の副作用に先立って—特に上述の議論された離脱症候群を充分に警告していなかったと感じている。 2001年の911事件の後、GSKはアメリカでパキシルのテレビ広告を増やした;2001年10月には、GSKは2000年10月の2倍近くの費用をかけた。パロキセチンからの離脱の困難さ、さらにGSKによる隠蔽は、後にABCで報道された。 イギリスでは2001年以来、セロクサート(イギリスでの商標名)が処方されていた人々を代表して訴訟が起こされた。彼らは、グラクソスミスクラインが患者情報を軽視したが、同薬に重篤な副作用があったと主張している。 2004年の始めに、GSKは消費者による詐欺の訴えを250万ドルで和解することに合意した(当時、年間270億ドルを超えるパキシルの売上のほんの一部である)。法的証拠開示手続きも、パキシルの不都合な研究結果の意図的で組織的な抑制の証拠を暴いた。あるGSKの内部文書には「[小児における]有効性が証明されなかったという記述を盛り込めば、パロキセチンの評判を傷つけ商業的に歓迎されないだろう」と書かれていた。 2004年6月には、FDAはパキシルCRの「虚偽あるいは誇大な」テレビ広告に対応して、GSKに対する違反文書を公開した;FDAは、 パキシルCRは、同薬に関連している重大な危険を最小限に抑えているが、[認可された条件を超えて]用途が拡大しているため、この広告は公衆衛生上の懸念がある。 と述べた。GSKはその広告は、予めFDAに審査されたと主張したが、再び放映しないと述べた。 2007年1月29日、BBCのテレビ番組「パノラマ(英語版)」で、セロクサートに関するシリーズ4番目のドキュメンタリーを放映した。タイトルは「臨床試験の秘密」(Secrets of the Drug Trials )で、子供と青年における3つのGSKの小児臨床試験に焦点を当てた。試験のデータは、10代ではセロクサートは効き目がなかったことを示した。また1つの臨床試験は、若年者では服用後に自殺に陥ることが6倍多かったこと示唆した。試験の1つである研究329(Study 329)の結果は、パロキセチンの安全性と有効性について読者を誤導するやり方で報告されており、科学文献において小児うつ病の薬物の有用性の評価をたびたび歪曲させた[信頼性要検証]。 2008年10月に、裁判所文書が訴訟の1つの結果として公開され、GSK「および/あるいは研究者は、臨床試験の間、自殺の危険性のデータを抑制したか隠していた可能性がある」と記されていた。捜査員の1人、「チャールズ ネメロフ(英語版)、エモリー大学の精神医学部の前・学部長は、初のビッグネームの「露見」だった…発覚のさなか2008年10月はじめにネメロフは、35,000ドルだと同校には伝えていたが、2006年にGSKから96万ドル以上を受け取っていたことで学部長を辞した。後の捜査は、2000年から2006年の間の製薬会社からの支払いを合計すると250万以上だと暴いたが、それでも公にされたのは極一部であった」 GSKによるパキシルに関する不都合な研究結果の抑制—さらに法的証拠開示手続きが暴いた—は、Alison Bassによる2008年の著書『副作用—検事、内部告発者、そして審理中にもベストセラーの抗うつ薬』(Side Effects: A Prosecutor, a Whistleblower, and a Bestselling Antidepressant on Trial )の題材である。同書、2人の女性の生活記録—検事と内部告発者—は、パキシルの研究とマーケティングの手口を明るみに出した。同書は、トップアイビーリーグの研究機関である巨大製薬会社グラクソスミスクラインと、市民を保護するために定められた政府機関の間の結び付き—弱い子供たちの健康と安全を間違いなく危険に曝した矛盾した関係を示した。『副作用』は2009年のNASWの社会における科学賞を受賞した。 2012年、アメリカ合衆国司法省は、GSKが子供向けにパキシルを販売促進したことを含めた罪状を認め、30億米ドルの罰金を支払うことを公表した。
※この「病気喧伝と訴訟」の解説は、「パロキセチン」の解説の一部です。
「病気喧伝と訴訟」を含む「パロキセチン」の記事については、「パロキセチン」の概要を参照ください。
- 病気喧伝と訴訟のページへのリンク