現代の気動車・高性能化とレールバス
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「気動車」の記事における「現代の気動車・高性能化とレールバス」の解説
車体を傾斜させることによりカーブを高速で通過できる機能を持った「車体傾斜車両」は、かつてはエンジントルクの反作用で車体がエンジンの回転方向の反対方向に傾くことや、プロペラシャフトの伸縮の制約などから気動車では不可能と見られていた。だが、1989年に試作車が製作され、翌1990年より量産が開始されたJR四国2000系気動車によって、エンジンの2基搭載によるエンジントルクの反作用相殺や、スプラインに変わるボール式伸縮機構の採用によりそれらの問題を克服した「制御付き自然振り子式気動車」最大傾斜角6度の高性能気動車JR北海道キハ283系気動車が実用化された。以降多くの車体傾斜式の気動車が各社で営業投入され、曲線区間の多い非電化幹線での大幅な高速化に寄与している。 また、JR東日本では、日本初の営業用のハイブリッド気動車であるキハE200形を開発し、運行を開始している。その後、当車両で開発されたシステムをHB-E300系やHB-E210系でも使用している。 また、キハ160系もITTの導入に向けて試験走行が行われ、開発された技術を取り入れた車両としてJR北海道キハ285系が製作された。しかしJR北海道管内で不祥事が続発する中で「現状としては、『安全対策』と『新幹線の開業準備』に限られた『人』『時間』『資金』等を優先的に投入する必要がある」と判断、「コストとメンテナンスの両面から過大な仕様であること」「速度向上よりも安全対策を優先すること」「従来形式での車両形式の統一によって、予備車共通化による全体両数の抑制と機器共通化によるメンテナンス性の向上が図られること」として、試作車落成直前の2014年9月10日に開発の中止が発表された。 なお、2017年5月1日に運行開始したクルーズトレイン(E001形EDC方式寝台車(TRAIN SUITE 四季島))において、電化区間では架線集電、非電化区間ではエンジン発電機の電力でモーターを駆動する(かつての電気式気動車と同じ)という方式を導入し、2017年 - 2020年にかけて電気式気動車GV-E400系を新潟・秋田地区に導入することが決まっており、JR北海道でも既存の液体式気動車を置き換える為に、JR東日本で導入される電気式気動車と同型の試作車(量産先行車)を製作し、走行試験等による冬期の検証を2年行った上で、2019年(平成31年)度以降に量産車の製造を予定し、GV-E400系に極寒冷地対策を考慮した変更を加えたH100形気動車を投入している。 一方、第三セクター鉄道や地方の非電化私鉄、またJR各社では、従来の国鉄型気動車よりも小型軽量で製造・運用コストの低い標準規格化車両が多く導入されている。これらについては「レールバス」と呼ばれることもある。富士重工業の「LE-Car・LE-DC」シリーズ、新潟鐵工所の「NDC」シリーズの車両が該当したが、1980年代から1990年代にかけて製造されたバスのような外観の車両は1990年代後半以降廃れ、本来の鉄道車両的な構造へと回帰しつつある。 高性能レールバスが出現すると、一部私鉄では電気鉄道でありながら気動車を運用する方が低コストと判断し、気動車運行に転換する例も出現した。元々1920年代から1930年代にかけて、電化私鉄がコスト対策からガソリンカー併用を行った先駆例が複数存在するが、新型レールバス出現後の1980年代以降の電化路線の気動車化では、名古屋鉄道の一部路線(現在は路線廃止)、近江鉄道(現在は電車運転)、くりはら田園鉄道(現在は路線廃止)、肥薩おれんじ鉄道、えちごトキめき鉄道日本海ひすいラインといった例がある。最もこれらの試みは、気動車のランニングコストが電車より高いことに加え(これには、国鉄やJRのように車両やその部品をまとまった単位で発注できないという点も大きい)、電車と気動車で保守・整備に必要な要員の技能・知識がほぼまったく異なること、追加の地上設備も必要となるため、成功したとはいい難く、名鉄と近江では結局電車に回帰し、その他はどの路線も廃止か、廃止の対象となりうる水準の収支状態となっている。 さらに現在では、道路と鉄道線路の両方を走ることが可能な、鉄道車両とバスを兼ねる車両の研究開発もJR北海道などを中心に進んでいたが、JR北海道での開発中止により2017年2月時点では阿佐海岸鉄道のみが導入予定を検討している。これについてはデュアル・モード・ビークル (DMV) を参照のこと。
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