現代の正教会
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/08/18 23:59 UTC 版)
正教徒の実数は、全世界で2億6000万人から3億人の間と推定されている。現在は伝統的な四大総主教庁のほかに、主に正教徒の多い地域では独立国の単位で独立教会、日本やアメリカのようにある程度の信者数を持つ国では自治教会が立てられている。自治教会は特定の独立教会の管轄と指導のもとで自治を行う。独立教会のうち、古代からの四大総主教に加え、ロシア、グルジア、セルビア、ルーマニア、ブルガリアの各教会の首座が総主教の地位を持つ。 諸正教会は「組織的な一致」にあるのではなく、完全な自律性をもった諸教会が、共通の信仰と伝統と精神性において一致のもとに、相互に教会の自立を承認しあった緩やかな連合を保っている。各主教には序列が定められているが、これは席次や祈祷において名を挙げる順序などの、純粋に名誉上の序列であり、教義にかかわるものではない。 コンスタンティノープル総主教は伝統的に全地総主教(エキュメニカル総主教)という称号を有し、正教会における名誉上の第一位の主教として認められている。古代の規定では名誉上の第一位の主教であるローマ主教座が正教諸教会の交わりから離れたことから、このように称する。しかし正教会における全地総主教は、世界の諸正教会の上に何らかの強力な権限を有するものではなく、名誉上の地位である。したがって教皇首位説を主張するローマ教皇とは、首位の意味が異なる(ローマ教皇も正教会的な見方では、諸主教の一人、地方教会の首座である諸総主教の一人、ということになる。ローマ・カトリック教会も、地方教会のひとつに他ならない)。 ロシアやセルビアといった旧共産圏では、1990年代の共産党政権の退陣後、国家の統制が取り払われたことから、正教会の活動が再び盛んになっている。特にセルビアでは、紛争の後、元兵士を含め、教会の活動に熱心に参加する青年が増加している。一方で、旧ユーゴスラビアでの紛争の過程で宗教の違いが対立として喧伝された悪影響も否定できない。これはコソヴォなどで特に深刻な問題を引き起こした。また宗教全般への規制が撤廃されたことで、他宗派との勢力争いなども見受けられる。特にロシアでは米国資本に裏付けられた福音派の大量攻勢や、ウクライナなどでの東方典礼カトリック教会の活動も活発になっている。このためロシア正教会は大きく反発し、保守化する傾向を見せている。 アメリカではコンスタンティノープル管下の教会のほかにロシア正教会系・ギリシャ正教会系・アンティオキア総主教庁系の教会、独立教会であるアメリカ正教会(OCA)などがあり、それぞれ協力しあいつつ活発な伝道活動を行っており、これらの諸教会は統合を模索しつつある。現在、これらの教会の共同作業により、新約聖書および聖詠(詩篇)の研究版英訳聖書が刊行されており、七十人訳聖書の研究版英訳聖書も2008年に刊行された。
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