無線局としてのレーダー
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/17 09:12 UTC 版)
概説 日本では、レーダーは無線局における無線設備の一種として扱われる。 政令電波法施行令第3条第2項第7号と電波法関係手数料令第1条第1項第2号には、「ある特定の地点から反射され、又は再発射される無線信号と基準となる無線信号との比較を基礎として、位置を決定し、又は位置との関連における情報を取得するための無線設備」と、総務省令電波法施行規則第2条第1項第32号には、「決定しようとする位置から反射され、または再発射される無線信号と基準信号との比較を基礎とする無線測位の設備」と定義している。関連する定義として、 「無線測位」が第2条第1項第29号に「電波の伝搬特性を用いてする位置の決定又は位置に関する情報の取得」 「無線航行」が第2条第1項第30号に「航行のための無線測位(障害物の探知を含む。)」 「無線標定」が第2条第1項第31号に「無線航行業務以外の無線測位」 がある。すなわち、レーダーは船舶・航空機の航行のための無線航行用とそれ以外の気象観測や速度測定や物体検知などのための無線標定用とに大別される。 無線局の種別と免許・無線従事者 レーダーのみを無線設備とする無線局は、用途及び移動の可否により無線航行陸上局、無線航行移動局(あわせて無線航行局という。)、無線標定陸上局、無線標定移動局として免許される。これらの無線局は無線測位局と総称される。詳細は各項目によるものとし、レーダーのみを無線設備とする無線測位局の操作又はその監督に最低限必要な無線従事者について掲げる。 種別資格備考無線航行陸上局 レーダー級海上特殊無線技士 存在しない。 無線航行移動局 レーダー級海上特殊無線技士 空中線電力5kW未満の船舶用は不要(第4種レーダーと通称される。無線設備規則第48条第1項及び第2項に規定する三種類のレーダー以外に第3項で別に告示に定めるものであることによる。) 無線標定陸上局 第二級陸上特殊無線技士 陸上系の無線従事者を要するのは電波法施行令第3条第2項第6号の陸上の無線局であることによる。警察用以外で空中線電力0.1W以下の適合表示無線設備(技適マークのあるもの)は不要 無線標定移動局 第二級陸上特殊無線技士 注従前の特殊無線技士(レーダー)は無線航行用と無線標定用のどちらのレーダーも操作又はその監督が可能 レーダーを無線設備とする航空用無線航行局は存在しない。 自衛隊のレーダーについては自衛隊法第112条第1項により、電波法の無線局の免許および無線従事者に関する規定が適用されないので表にない。 上述より、 船舶搭載であれば無線従事者が不要な第4種レーダーでも、陸上に設置し密漁監視に使用するのであれば、無線標定用となり無線従事者を要する スピード測定器でも、スポーツ・レジャー用の通称スピードガンであれば無線従事者は不要であるが、警察の速度取締用には無線従事者を要する こととなる。 無線航行用レーダーと他の海上用または航空用の無線機器をあわせて無線設備とする無線局は、移動の可否により海上用は海岸局(一部は無線航行陸上局)または船舶局、航空用は航空局または航空機局として免許される。これらの操作には総合無線通信士または各々、海上系もしくは航空系の無線従事者を要する。 但し、海上用の無線航行移動局では遭難自動通報局の無線設備(遭難自動通報設備(非常用位置指示無線標識装置(EPIRB) 及び捜索救助用レーダートランスポンダ(SART))を加えても無線従事者は不要、特定船舶局では前記のものに簡易型船舶自動識別装置(簡易型AIS)を加えても無線従事者は不要である。 無線航行用レーダーのうち義務船舶局用は、電波法第37条第2号により無線機器型式検定規則による検定に合格した「検定機器」でなければならない。 義務船舶局用以外の船舶用および無線標定用のものの中には、特定無線設備の技術基準適合証明等に関する規則の対象とされ適合表示無線設備となるものがある。適合表示無線設備になれば簡易な免許手続の対象となり予備免許や落成検査を経ずして免許され、上述のように操作に無線従事者を不要とする「簡易な操作」の条件ともなる。 用途が異なれば無線局の種別が異なるので、無線局免許手続規則第2条第3項により単一の無線局として免許申請することはできない。例として気象庁の気象観測船では、無線航行用は他の無線設備と合わせて船舶局として、気象観測用は無線標定移動局として、別々の無線局の免許を要し、それぞれ第三級海上無線通信士以上と第二級陸上特殊無線技士以上の無線従事者を要する。 自衛隊の艦船、航空機については上表と同様に自衛隊法第112条第1項により、電波法の無線局の免許および無線従事者に関する規定が適用されない。 免許も無線従事者も不要な特定小電力無線局にもレーダーを用いるものとして、ミリ波レーダー用と移動体検知センサー用がある。自動車の障害物検知用レーダーや自動ドアの人体検知・防犯用侵入者検知センサーなどで、どちらも無線標定用である。 免許申請手数料・登録免許税・電波利用料 電波法関係手数料令第1条第2項には「空中線電力50Wを超えるレーダーは、この政令の適用に関しては、空中線電力50Wの送信機とみなす。」としている。また、登録免許税が非課税となる範囲として登録免許税法施行令第12条第5号に「基本送信機の規模が空中線電力(レーダーについては、財務省令で定める方法により計算した空中線電力)500W以下のもの」とし、登録免許税法施行規則および無線設備規則により、尖頭電力に衝撃係数(パルス幅とパルス周期との比)を乗じて平均電力に換算するものとしている。これは無線設備の空中線電力が、レーダーでは尖頭電力で規定されるのに対し無線電話(音声通信)やテレビジョンでは平均電力で規定されるため、単純に比較すると送信機の規模が過大に評価されるので、緩和するための措置である。 電波利用料については、移動する無線局と無線標定陸上局について掲げるものとし、これ以外については他の無線設備の条件にもよるので省略する。 2019年(令和元年)10月1日現在 無線航行移動局・無線標定移動局・船舶局・航空機局は、電波法別表第6第1項の「移動する無線局」が適用され、400円 無線標定陸上局は、同表第9項の「その他の無線局」が適用され、6GHz以下は46,600円、それを超えるものは19,100円 注 料額は減免措置を考慮していない。 旧技術基準の機器の免許・使用 無線設備規則のスプリアス発射等の強度の許容値に関する技術基準改正により、旧技術基準に基づく無線設備が条件なしで免許されるのは「平成29年11月30日」まで、使用は特定小電力無線局を含め「平成34年11月30日」までとされた。更にコロナ禍により使用期限を「当分の間」延期することとなった。 旧技術基準の無線設備とは、 「平成17年11月30日」までに製造された機器、検定合格した検定機器または認証された適合表示無線設備 経過措置として、旧技術基準により「平成19年11月30日」(船舶の無線航行用レーダーについては「平成24年11月30日」)までに製造された機器、検定合格した検定機器または認証された適合表示無線設備 である。 2021年(令和3年)8月3日以降の旧技術基準の無線設備に関する免許・使用は次の通り 新規免許は不可 再免許は可能 「平成29年12月1日」以降の免許にあった「免許の有効期限(新技術基準の無線設備と混在する場合は旧技術基準の無線設備の使用期限)は令和4年11月30日まで」の付款は「令和4年12月1日以降、他の無線局の運用に妨害を与えない場合に限り使用することができる」との条件が付されているとみなされる。なお、レーダーに限らず検定機器は設置が継続される限り検定合格の効力は有効とされるので、義務船舶局では当該船舶に設置し続ける限り手続き不要でそのまま使用できる。その他の無線局において新たに使用期限が設定されても設置し続ける限り使用可能で再免許もできる。 旧技術基準の特定小電力無線局もこの経過措置により「令和4年11月30日以後も当分の間」使用できる。
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