民族主義と対日観
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/17 11:14 UTC 版)
詳細は「韓国の民族主義」、「韓国起源説」、および「在日認定」を参照 朝鮮半島の歴代王朝は長期間に渡って中国大陸の歴代王朝に服属・朝貢しており、たとえば新羅は北斉(北朝)・陳(南朝)・隋・唐に朝貢し、高麗は宋・契丹(遼)・女真(金)・明に朝貢、元に服属し、李氏朝鮮は明・清に朝貢していた(日清戦争まで)。これらの歴代王朝の多くは中国歴代王朝による冊封を受け(朝鮮半島を中国とみなす記述を参照)、「礼教、音楽、法律、制度、衣冠(身分秩序)、文物(文化の産物)、ことごとく中国の制度に従い」と記述されたように中華文化に対して卑屈なまでに尊ぶ事大主義と、自らは中国文明(大中華)に次ぐ「小中華」であり、周辺国である日本や琉球や満洲などの夷狄より文化的に優越するという「小中華思想」が形成されていた。しかし現実(李氏朝鮮時代)には極端な朱子学の影響もあり、実用的な商工業や産業は軽視され文化的にも停滞しており、「武」を忌避する文化から軍事的にも退廃し、結果として文禄・慶長の役で日本に攻められ、その300年後には、近代化に失敗し日本に統治される結果を招いた。 大韓民国建国後、1961年の5・16軍事クーデターのあとに第5代大統領となった朴正煕は、この朝鮮民族の属国史の原因を自分達の民族性によるものと考え、「民族の中興の使命を達成するための主体的民族史観」に基づいた「国籍ある教育」を掲げて、愛国心教育や民族教育を徹底するようになった。この徹底した自民族優越主義的な愛国民族教育が伝統的な小中華思想や原理主義的な儒教と結びつくことで、韓国社会の間で自国を「歴史的な文化先進国」、日本を「歴史的に未開で野蛮な文化的劣等者」とする人種差別に根差した価値観がますます根付くようになった。 詳細は「韓国起源説#日本に対する韓国起源説の発生理由」を参照 これは、学校教育や大手新聞やテレビや書籍で「日本は韓国の優れた文化を受け入れるだけの文化劣等国」「有史以来一枚見下げるべき文化的劣等者」「韓半島に比べてみすぼらしくて短い歴史しか持たず、歴史を捏造するしかない日本」というような対日蔑視に基づいた誤った論評が日常的に行われたり、日本列島を指す「島国」という言葉が「劣等で未開」という意味で使われて、駐日韓国大使がテレビのインタビューで使うまでになっていることからもうかがえる。マスコミによって「チョッパリ」「ウェノム」「イルボンノムドル」などの日本人を指す人種差別に根差した侮蔑語が使用され、「古代に韓民族の中の質の悪い犯罪者を『おぼれ死ね』と丸太に縛って海に流して島にたどり着いたのが国際的なならず者の低質日本民族の正体だ」、「『日本猿』と『チョッパリ』、どちらが日本人の呼び名に相応しいか?」、「『倭人』という言葉がある。とても小さくてみすぼらしいという意味の倭だ。人間の度量が小さくて狭い場合に私たちは『小さい奴』という言葉を使う。日本はそのような種族だ」「『日本猿』という呼称がある。陰湿で凶悪で他人の真似はうまい人に、よく『猿のような奴』と非難する。日本はその猿のように卑怯な種族だ」 などといった論評まで行われていることからも伺える。また韓国社会では日本人を「文化的に劣等な『猿』」とみなすことが常態化しており、奇誠庸などの有名スポーツ選手や地方公共団体が公の場で日本人を「猿」として侮辱することがある。 そしてこのような対日蔑視に基づいた「文化的劣等者の日本人に韓国が併合された」という認識が、韓国国民の反日感情の大きな要因になっている。こうした自民族優越主義的な価値観と対日蔑視に基づいて、偉業をなした日本の著名人を根拠なく勝手に在日コリアンやコリアン系の同胞だと主張する在日認定や韓国起源説(他国文化の剽窃)は、インターネットを介して日本や中国にも知られるようになっている。 一部の韓国人は、「歴史的に先進的な韓国とその従属国の日本」という認識を第三国にも広めようと熱心に活動しており、たとえばカリフォルニア州在住の在米韓国人たちが、「韓国が日本に東アジア思想と文物を伝えた」「韓国の陶工が日本に渡って日本の文化形成に寄与した」などの新たな記述をカリフォルニア州で使用される歴史教科書に反映させるための法案を通過させようと、カリフォルニア州議会議員達に対してロビー活動を行っている。 現代の日本社会や文化に対しては、ある程度の親しみを感じながらも上記のような理由でスポーツイベントなどで人種差別に結びついた愛国心を表出させ反日行動を起こすことがある。第1回WBCでは、韓国のマスコミ各社がイチローの「韓国侮辱30年発言」を捏造したため大規模なイチローバッシングが起き、LGツインズ公認のイチロー射殺Tシャツが発売されるに至った。フィギュアスケートでは、韓国SBSが「国際大会で日本人選手が組織的にキム・ヨナの練習を妨害している」と事実無根の報道をしたため、日本人選手バッシングが起きYouTubeで日本人選手を非難する各種動画が投稿され、100万件以上の閲覧がされるに至った。AFCアジアカップ2011の日本対韓国戦においては、キ・ソンヨンがゴール後に韓国社会で日本人を「文化的劣等者」として言及するときに多用される蔑称である「猿」を真似たパフォーマンスを行った。当初は試合前から用意していた日本人に向けたパフォーマンスだとキ本人が認めていたが、問題が大きくなると日本応援席に掲げられた旭日旗を見たことを理由に(実際には旭日旗は存在していない)、次いで「欧州での自身に対するアジア人差別に抗議するため」と責任転嫁と保身に走った。AFC U-23選手権2016決勝戦=日韓対決前には、大韓サッカー協会が日本戦での応援スローガンを「日本は韓国の優勝自販(JAPAN)機」に決めた(訳注:朝鮮諺文での自販〈=自動販売機、読み方はジャパン〉と英語で日本を意味するJAPANが同じ発音になることをかけたもの)(結果は、0-2とリードされた後半に3連続ゴールを決めた日本が3-2で劇的逆転勝利し、「日本戦では120%の力が出る」と虚言のキム・ヒョン含むサッカー韓国代表選手および韓国応援団を落胆させた)。 近年では司法が韓国国民の反日感情を『道徳的社会秩序』として通常の法理より優先する判例が多発しており、韓国の新たなカントリーリスク(詳細はコリアリスクも参照)と認識されている。 一方で韓国社会における非正規雇用の増加や物価急騰、過酷な受験戦争と男女差別などにより、世論調査では韓国人全体の4分の1および20代女性の半数が「韓国に生まれ変わりたくない」と否定的な回答をしたり、高麗大学の学生の51%が「韓国が嫌い」と回答した調査もあり、近年の韓国人の愛国心は低下しているという調査結果もあるが、上記のような対日蔑視に変化はないのが現状である。
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