最初の外遊:日韓訪問とアラスカでの中国との会談
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「アントニー・ブリンケン」の記事における「最初の外遊:日韓訪問とアラスカでの中国との会談」の解説
3月15日にロイド・オースティン国防長官と共に来日し、国務長官就任後の初の外遊先が日本となった。日米外務・防衛担当閣僚による安全保障協議委員会(2プラス2)に出席し、会談の内容の大半は中国問題が占めた。共同声明の中で中国の南シナ海や東シナ海などでの動きを念頭に「国際秩序に合致せず、国際システムを損なう行動に反対する」と表明した。香港・新彊ウイグル自治区の人権問題への懸念も表明された。また軍事バランスが中国に傾きつつある台湾海峡の平和と安定を守る重要性も強調された。菅義偉首相とも会談し、菅から来月予定されるバイデンとの初の体面会談を日米同盟の絆を確認する有意義な会談にしたいという意気込みが伝えられた。また日本のメディアとのバーチャル会見においてブルーリボンのバッジを着用して出席し、拉致被害者家族からの手紙を読み「心を動かされた」と述べた。 次いで3月17日にオースティン国防長官と共に韓国を訪問した。3月18日にソウルで米韓外務・防衛担当閣僚協議(2プラス2)に及んだが、その共同声明は全体の3分の1が中国批判に費やされていた2日前の日米両国の共同声明と対照的に「中国」と対中牽制の協議体「クアッド」に関する言及が無かった。ブリンケンは韓国にも日本と同様の中国に関する言及を共同文書に盛り込むことを要求した可能性が高いが、米中間で「バランス」を維持したい韓国の反対で中国への言及ができなかったものと見られる。しかし北朝鮮がアメリカと韓国に対して挑発行為を繰り返して朝鮮半島情勢が緊迫化してきており、日米韓3国が北朝鮮に対する連携を取ることが重要である点では一致した。その後の文在寅大統領との会談において文は、「韓日関係は朝鮮半島の平和と安定、繁栄に非常に重要で、韓米日協力でも強固な土台だ」・「韓日両国の関係修復に向けて努力を続ける」とブリンケンに述べた。 ツイッターでは日韓両国で食べた美味しい物を紹介し、日本では桜餅を手にする写真と共に「おいしい桜餅と一緒に美しい春を楽しみました。桜が満開の時期を逃し残念ですが、また戻ってきます」というメッセージを書いた。韓国ではスンドゥブの写真を投稿し「前回2016年のソウル訪問で純豆腐がどれほどおいしかったかを思い出しました」というメッセージを書いた。 その後中国には立ち寄らずアメリカへ帰国した。しかし中国側から会談要請があり、帰りの途上に立ち寄ったアメリカのアラスカ州で会談に応じた。昨年6月に当時のポンペオ国務長官と楊がハワイで米中外交トップ会談を行っており、外交上の相互主義の原則に従うなら、今回は中国で行われる必要があったが、そうはならなかった。 3月18日にアラスカで中国外交を統括する楊潔篪党中央政治局委員と中国の王毅外交部長との初の米中外交トップ会談に及んだ。会談は冒頭から激しい応酬になり、「新冷戦」が始まったことを象徴する会談となった。ブリンケンが冒頭から「新疆ウイグルや香港、台湾、アメリカへのサイバー攻撃や同盟国への経済的搾取について深い懸念を議論する。これらの行動はルールに基づく秩序を脅かしている。」と切り出すと、楊は怒りに満ちた表情になり、冒頭発言は2分ずつという双方の合意を無視して20分近い反論を始めた。「新疆ウイグル自治区、チベット自治区、そして台湾は中国の不可分の領土であり、内政に干渉する行為には断固として反対する」・「アメリカにはアメリカの民主主義があり、中国には中国の民主主義がある。アメリカは自らの民主主義を押し広めるべきではない」・「アメリカは軍事力と金融覇権を用いて他国に圧力をかけ、国家安全保障という概念を乱用し、正常な貿易を妨害し、一部の国を煽って中国を攻撃している」・「アメリカの人権問題は根深く、この4年間に浮上したものではなく、黒人への殺戮は昔からある。他国に矛先を向けるべきではなく、アメリカこそ人権でより良い対応を取るよう希望する」と非難した。 ブリンケンは中国側の反論が終わって退席しようとした報道機関を引き留めて反論を開始し、「国務長官として世界の100近い国と話し、最初の外国訪問として日本と韓国も訪れたが、私が聞いている話は貴方の主張と大きく異なる。私が聞いているのはアメリカの復活と同盟国や友好国への関与に対する深い満足と中国の行為に対する深い懸念である」・「私たちが世界に関与する上での指導力は完全に自発的に構築された同盟や友好関係によるものだ」・「アメリカは国内ではより完全な団結を目指し、不完全さや過ちを認め、開放的に透明性をもって立ち向かってきた。課題から目を背けたり、存在しないように装ったり、隠したりしない。」と述べた。 この後今度は中国側が退席した報道機関を呼び戻し、楊は「アメリカを好意的に見過ぎていた。基本的な外交儀礼を守るべきだ」・「貴方たちは強者の立場で我々と話す資格はない。もし貴方たちが、我々としっかりと付き合いたいのであれば我々は互いに敬意を払って付き合うべきだ」・「我々が西洋人から受けた苦しみはまだ足りないというのか。外国から押さえつけられた時間がまだ短いというのか」と述べて過去の歴史を引き合いに西洋を非難した上で「中国の首を絞め、抑圧しようとしても最後に損をするのは自分自身だ」と述べた。 3月19日にアメリカの報道機関はこの会談を「言葉の戦争」と報じ、中国の国営報道機関は「アメリカ側は中国の政策を根拠無く非難した。これは外交儀礼に反しており、中国は厳正に対処した。」と報じた。ブリンケンは会談の中で同盟国や友好国の懸念も伝えたと明かしており、尖閣諸島沖への中国公船侵入にも言及したとみられる。一方でブリンケンは「イラン・北朝鮮・アフガニスタン・気候変動について、我々の利害は重なっている」と述べており、中国国営新華社通信も、米中は気候変動をめぐり共同作業グループを設置したと発表した。
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