関係修復
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/08 20:43 UTC 版)
しかし1997年に鄧小平が死去し、中国共産党の体制が名実ともに江沢民体制へ移行すると、朝日新聞に掲載された中国共産党側からの内部問題不干渉原則違反を反省する旨の関係修復への非公式なサインが日本共産党に対してあった。この年には日本共産党側でも中国共産党と長年対立してきた宮本顕治議長が名誉議長となって党の実務から離れ、不破哲三が党指導権を確立しており、両国共産党の関係が悪化した時期の指導者からの代替わりが完了して、以降日中共産党は関係修復に向けて動きだすようになった。 1998年6月に北京で両党会談が行われて関係回復の合意に達した。このときの合意文書 では、「中国(共産党)側は、六〇年代の国際環境と中国の「文化大革命」などの影響を受け、両党関係において、党間関係の四原則、とくに内部問題相互不干渉の原則にあいいれないやり方をとったことについて真剣な総括と是正をおこなった。日本(共産党)側は中国側の誠意ある態度を肯定的に評価した。」という条項が盛り込まれ、中国共産党が文化大革命時の日本共産党への干渉について非を認めた。 関係修復後は両党の理論交流が再開した。日本共産党は1976年から自分たちの思想を表す表現を「マルクス・レーニン主義」から「科学的社会主義」に変更していたが、中国共産党が掲げている「マルクス主義」と意味は同じであり、日本共産党も用語として排除しているわけではないという立場から中国共産党との理論交流では共通語として自分たちの思想を「マルクス主義」と表現した。 中国共産党との関係改善の影響で日本共産党議長の不破哲三が主導した2004年の日本共産党綱領改定では「今日、重要なことは、資本主義から離脱したいくつかの国ぐにで、政治上・経済上の未解決の問題を残しながらも、『市場経済を通じて社会主義へ』という取り組みなど、社会主義をめざす新しい探究が開始され、人口が一三億を超える大きな地域での発展として、二一世紀の世界史の重要な流れの一つとなろうとしていることである。」という記述が入った。これは中国共産党が主張していた「社会主義市場経済」を「社会主義を目指す新しい探求」として肯定的に評価するものだった。他方で不破は「政治上・経済上の未解決の問題を残しながらも」という但し書きによって、中国で起こっているすべてを肯定する立場に立つわけではないとも述べた。日本共産党委員長志位和夫は関係正常化の段階でも中国の民主主義と人権の問題については見過ごすことのできない状態だったため「但し書き」を入れたことを明らかにしている。 志位は日本共産党が「社会主義をめざす新しい探究」の評価を行った判断基準について、経済体制について評価を行うと内政干渉になりえることから(ただし内部的には経済体制の研究も行っていると述べている)「指導勢力が社会主義の事業に対して真剣さ、誠実さをもっているかどうか」、そのことを対外的な関係で評価するという態度をとってきたとしている。「指導勢力が、社会主義の事業に対して「真剣さ、誠実さ」をもっていれば、さまざまな困難をのりこえて、前にすすむことができるでしょう。それがなくなってしまったら、前にすすむ保障はなくなってしまうでしょう。」と語る。その基準に照らし、関係回復した当時の中国の指導部は日本共産党への干渉の誤りを認めたこと、そのことをテレビや新聞で国民に周知する対応をとったことなどから日本共産党としては「社会主義事業に対する真剣さ、誠実さ」があると判断したとしている。 志位は中国の将来について「楽観的、固定的に見ているわけではない」と繰り返し表明し、この立場から日本共産党は「内政不干渉の原則を守りつつ、国際的な性格をもつ問題点については、節々で我が党の見解を伝える」という方針をとった。 その立場から尖閣諸島問題や南沙諸島問題といった領土問題での強硬姿勢、またチベット問題・ウイグル問題・香港民主化デモ弾圧など国際的な人権擁護の取り決めに反する次元の強権的内政について日本共産党は度々中国共産党を機関紙などで批判した。 日本共産党は2014年1月の第26回党大会決議で中国の前途について「そこには模索もあれば、失敗や試行錯誤もありうるだろう。覇権主義や大国主義が再現される危険もありうるだろう。そうした大きな誤りを犯すなら、社会主義への道から決定的に踏み外す危険すらあるだろう。私たちは、“社会主義をめざす国ぐに”が、旧ソ連のような致命的な誤りを、絶対に再現させないことを願っている」という両党関係回復以来、はじめて警告的な意見表明を行った。
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