肯定する立場
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駐日大使のジョン・ルースが2010年に講演で語ったところによれば概要としては次のようになる。 (在沖米海兵隊を含む在日米軍の役割に係る部分の抜粋)在日米軍の基本的役割は、東アジア地域において武力行使は選択肢にならないと他国等に理解させることである。 在日米軍の現在の構成は、この非常に重要な地域における安定及び抑止という目標を達成するために必要な軍事力の評価に基づいている。 在沖米海兵隊は、最も一般世論から理解を得られていないが、平時、有事を問わず我々が配備している部隊の中で最も重要である。 海兵隊は、航空部隊、地上部隊及び後方支援部隊を統合させているので、緊急事態において他軍種からの複雑な後方支援及び航空支援を待つ必要がない。 在沖米海兵隊に配備されているヘリコプターは、北東アジアから南東アジアを結ぶ列島線を越え、必要とされる場所へ在沖の地上戦闘部隊及び後方支援部隊を迅速に輸送することができる。 より大規模な、又はより長期間の作戦においては、米海兵隊は佐世保の米海軍艦隊に支援されることとなる。佐世保の米海軍艦隊は、わずか数日で来航し、米海兵隊の地上部隊及び航空部隊をこの地域のどこにでも投入できる。 このような機動性と前方展開こそ、在沖米海兵隊がアジアにおける主要な自然災害に対する対処主体となっている理由である。 この地域における武力紛争においても、在沖米海兵隊は同様の迅速に対処する役割を担うこととなる。在沖米海兵隊は事態の最初期に現場に到着し、重要な施設を確保しつつ、非戦闘員の避難活動を誘導し、前線での地上及び航空打撃力を提供する もし米海兵隊が日本から完全に撤退すれば、米海兵隊のこの地域における機動性と効率性は影響を受けるし、当該撤退はこの地域に対する米国のコミットメントという点で否定的に受け取られかねない。 また、米海兵隊を含む在日米軍が実戦的な訓練を実施できる能力は、米軍がどんな事態にも対応できるようにするだけでなく、はっきりとした抑止力として機能してもいる。 — 「ルース駐日米国大使講演(2010年1月29日)関連箇所の要旨」 アメリカ軍は上述のような認識を基礎とし、公式には沖縄県内での海兵隊移設・一部部隊の残置を条件としている。その理由と抑止効果については拓殖大学教授の川上高司を参考人とした次のような国会答弁がある。 次に、抑止力の維持という観点から申し上げます。これは、なぜ実戦部隊の第31海兵遠征隊、31MEUが残されたかということに対する答えになります。31MEUの想定される任務は、朝鮮半島危機、台湾海峡への抑止と初動対応、対テロ作戦の実施、災害救助、民間人救出作戦などが考えられるわけであります。31MEUは、最大四隻の強襲揚陸艦で出動し、歩兵大隊、砲兵大隊混成の航空部隊及びサポートグループなどのエレメントで構成されるわけですが、各エレメントは平時は一つの駐屯地に集結しているわけではなく、緊急時になりましたら一つの部隊として集結し出動いたします。したがいまして、それぞれのエレメントが離れた場合、集結するまでに時間が掛かり、即応性が低下してしまいます。また、特にヘリ部隊の役割が大きく、歩兵とヘリを分散化することは困難になるわけであります。(中略)このロードマップが決まりました当時、私は海兵隊司令部でグッドマン海兵隊司令官にインタビューをしました。グッドマン海兵司令官は、抑止力を維持しながら大幅な在沖縄海兵隊を削減せよとの難題を命じられて随分頭をひねった結果、実戦部隊を沖縄に残すことにより抑止力を維持し、モビリティーのある司令部機能をグアムへ移転させることにより沖縄地元からの負担軽減をするように決断したという具合に述べておりました。 — 第171回国会外交防衛委員会 第11号 ここで、海兵隊の戦闘単位について簡単に説明すると、部隊規模が小さい順から MEU(Marine Expenditionary Unit:海兵遠征隊)テロ、低強度紛争への対処能力を持ち、命令から6時間以内に出動可能で、15日の従戦能力を持つ。部隊規模1500~3000名 MEB(Marine Expenditionary Brigade:海兵遠征旅団)命令より5~14日で出動可能。従戦能力30日。部隊規模3000~2万名 MEF(Marine Expenditionary Force:海兵遠征軍)命令より30~45日で出動可能。従戦能力60日。部隊規模2~9万名。統合作戦、後方支援能力も充実。 となる。第3MEFは海兵隊の中で唯一海外に駐留するMEFであり、その先鋒が31MEUとなる。再編ロードマップで沖縄に残留することになったMEUは即応戦部隊としての能力を期待され、アジア地域の紛争に一週間以内で派遣できる唯一の海兵部隊とされている。また、上述の川上答弁のように、統合軍としての性格を帯びた海兵隊は陸上部隊、航空部隊、支援部隊が一体となって作戦しなければ戦力を発揮しない。その前提として平時の訓練段階から機能的に結合度が高いことが求められる。 なお、参議院議員の佐藤正久は、日本の政府内には米軍施設を迷惑施設ととらえる傾向があり、軍事的有意性の観点が欠落しているとして、議論のあり方に異議を唱えた。 なお軍事的観点に関連して、2010年4月、設置場所の条件と情報管理に関して次のような出来事があった。アメリカ政府は海兵隊の地上部隊とヘリ部隊の駐留場所の距離を、65海里以内とするように求めていることを日本政府高官が明らかにした。この数字はアメリカ側では「海兵隊の運用」という軍事機密に関わる情報とみなされており、後に日本国外務省に対して抗議を行った。『産経新聞』はこの一件を「日本政府の稚拙な対応」として報じている。
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