旧十円券
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1885年(明治18年)1月22日の大蔵省告示第12号「兌換銀行劵見本」により紙幣の様式が公表されている。主な仕様は下記の通り。 日本銀行兌換銀券 額面 拾圓(10円) 表面 大黒像、兌換文言、発行根拠文言 裏面 彩紋、偽造変造罰則文言 印章 〈表面〉日本銀行総裁之章、文書局長(割印) 〈裏面〉金庫局長 銘板 大日本帝國政府大藏省印刷局製造 記番号仕様記番号色 赤色(記号)および緑色(番号) 記番号構成 〈記号〉「第」+組番号:漢数字1 - 2桁+「號」 〈番号〉通し番号:「第」+漢数字5桁+「番」 寸法 縦93mm、横156mm 製造実績印刷局から日本銀行への納入期間 1884年(明治17年)12月 - 1888年(明治21年)下期 記号(組番号)範囲 「第壹號」 - 「第貳九號」(1記号当たり40,000枚製造) 製造枚数 1,155,000枚 発行開始日 1885年(明治18年)5月9日 通用停止日 1939年(昭和14年)3月31日(1899年(明治32年)3月20日以降は回収対象) 発行終了 失効券 明治維新以降、政府が発行した明治通宝・改造紙幣などの政府紙幣や、民営の国立銀行が発行した国立銀行紙幣などが並行して発行されていたが、西南戦争の戦費調達を発端として政府や国立銀行が無尽蔵に紙幣を濫発した結果インフレーションが発生し経済的な混乱の一因となっていた。これを収拾し通貨制度の信頼回復を図るために松方正義により紙幣整理が行われることとなり、政府から独立した唯一の発券銀行としての中央銀行すなわち日本銀行が創設され、従来の紙幣に代わって事実上の銀本位制に基づく「日本銀行兌換銀券」として発行された。日本銀行券の中で最初(最古)のものである。 表面に大黒天が描かれていることから「大黒札」と呼ばれている。なお、大黒天の肖像は、当時の印刷局の職員であった書家の平林由松をモデルとしてデザインしたものとされる。小槌と袋を手にした大黒天が米俵の上に腰かけている様子が描かれており、米俵の側には3匹の鼠があしらわれている。旧券中唯一、英語による兌換文言の表記がなされていない。表面の地模様には、表面中央に日輪とそこから放射状に延びる光線状の模様が描かれており、光線状の部分には微細な連続文字が配されている。表面は全体的に発行当時の写真複製技術では再現困難な薄い青色で印刷されている。図案製作者はお雇い外国人として日本の紙幣製造の技術指導にあたっていたイタリア人のエドアルド・キヨッソーネである。なお裏面は、中央に偽造罰則文言が記載されている他は彩紋模様のみであるが、印刷部分は以降に発行された券種と比較すると小さめのものとなっており、周囲は印刷のない空白が広がっている。 印章は表面が「日本銀行総裁之章」(篆書・日銀マークの周囲に文字)と「文書局長」(隷書・文字の周囲に竜の模様・割印)、裏面が「金庫局長」(隷書・文字の周囲に竜の模様)となっており、改造券以降用いられている印章とは異なる図柄のものとなっている。なお文書局長の割印は、製造時に原符と呼ばれる発行控えが紙幣右側についており、発行時にこれを切り離して発行の上、紙幣の回収時に文書局長の割印を照合する運用となっていたが、発行枚数が増大するに従いこの運用は無理が出てきたことから、1891年(明治25年)以降は廃されている。 記番号は漢数字となっており、通し番号は5桁で、通し番号の前後には「第」、「番」の文字がある。1組につき4万枚(最大通し番号は「第四〇〇〇〇番」)製造されている(ただし最終組「第貳九號」は「第叄五〇〇〇番」までの製造)。 紙幣用紙は三椏を原料としたもので、強度を高めるためにコンニャク粉が混ぜられていた。透かしは「日本銀行券」の文字と桜花、小槌、分銅、巻物、鍵、宝珠の図柄である。 使用色数は、表面4色(内訳は凹版印刷による主模様・地模様1色、文字1色、印章・記号1色、番号1色)、裏面2色(内訳は主模様1色、印章1色)となっている。紙幣の様式としては緻密な凹版印刷による大型の人物肖像、精巧な透かしや三椏を主原料とした用紙など、日本銀行券発行開始以前に発行されていた政府紙幣である改造紙幣の流れを汲むものとなっている。 「兌換銀券」と表記されているが、1897年(明治30年)10月の貨幣法施行および兌換銀行券条例の改正による銀本位制から金本位制への移行に伴い、以降は金兌換券として扱われることになった。 1927年(昭和2年)2月に制定された兌換銀行券整理法により1939年(昭和14年)3月31日限りで通用停止となった。
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