日本共産党による歌劇「沖縄」制作上演への組織的指導と援助
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「歌劇「沖縄」」の記事における「日本共産党による歌劇「沖縄」制作上演への組織的指導と援助」の解説
日本のうたごえ実行委員会常任委員会事務局長であった藤本洋は、1972年、歌劇「沖縄」第2次全国ツアー公演に関連して、日本共産党の地方組織による指導のあり方を、同党全国活動者会議(1972年1月18~20日開催)で次のように報告している。 — サークルを指導するばあい、これを組織面から指導しようとする傾向がつよいのですが、党支部は、サークル活動の内容指導もする必要があります。この点で、たとえば、うたごえの人びとが歌劇「沖縄」を全国的に連帯してとりあげていますが、これについて、ある県ではいま思想攻撃のつよまるなかで、「これは文化と文化のたたかいだ、きみたち勇気をもってやれ」、と県委員会からはげまされています。それで、やれるかどうかと思っていた人たちも、勇気百倍してとりくみました。 1972年、日本共産党大阪府委員会文化部長 熊野雄次郎は、第2次全国ツアーの大阪公演(同年3月22・23日、大阪厚生年金会館大ホール)を控え、同府委員会機関紙「大阪民主新報」の読者に向けて、公演成功のために来聴することを呼びかけた。 — いま全国的に、歌劇「沖縄」の第2次公演がおこなわれています。大阪では、沖縄返還同盟、大阪文化団体連絡会議、関西音楽舞踊会議、大阪労音、大阪うたごえ協議会などが中心となり「上演実行委員会」をつくり、公演を成功させるために懸命な努力をおこなっているようです。この歌劇「沖縄」の公演内容は1953年に沖縄の伊江島・真謝部落で実際におこった、米軍による農地の取り上げに反対する農民のたたかいを中心に、沖縄全土に広がった「一坪たりともわたせない」という県民の不屈の物語を、新星日本交響楽団の管弦楽にのせ、声楽家の中沢桂、瀬野光子さん、関西合唱団などが合唱でうたいあげるという現代歌劇です。この歌劇は、第1次公演のときも「みていて、聞いていて、沖縄県民の根づよい勇気と天与の明るさを感じ、苦しみと怒りがわいた」という感想がよせられ、観劇者のなかに非常に大きな感動をよんだものです。第2次公演では、さらに、第1次公演の内容を改作し、演奏創造を発展させているといわれ、いま平和を愛する大勢の音楽家たちが、ひとつに結びあって、演奏力量を高める努力を日夜おこなっているようです。このように、平和で健康な音楽であり、沖縄返還をめざす今日の沖縄のたたかいをつづった歌劇「沖縄」を一人でも多くの人が観劇し、公演が成功するよう、読者のみなさんに訴えます。 第2次全国ツアー公演の終了後、藤本洋は、日本共産党および民主青年同盟の地方組織が果たした役割を、次のように記している。 — 歌劇「沖縄」第2次全国公演は、6月15日、東京渋谷公会堂で満員の聴衆の熱気あふれる拍手と声援のうちに幕を閉じた。今回の第2次公演は、北は帯広から南は長崎にいたる全国26都市で行われたが、どの会場も舞台と聴衆が一つにとけ合い、割れんばかりの拍手の中で公演が行なわれ、その聴衆は5万4千人を越えている。この数は、一昨年行われた第1次公演の1回あたり200人を上回る数であり、一般的には再演が大変困難な状況の中では一つの驚きでもある。日本における創作オペラ上演が一度には数回しか可能でない状況から見ると、日本のオペラ運動の上にも意義をもつものと、わたしたちは自負している。ではなぜ、このような状況が歌劇第2次公演に出現したのであろうか。和歌山市では、市内から5時間もかかる実家へ、自分が出演するオペラだといって出かけ、家族ぐるみで聴きにきた。西宮市では、歌劇のポスター張りに出た一青年が逮捕されたことに対する釈放のための行動が起こされた。[...]長野市では、盲目の一青年が、音楽センターがだした「沖縄」のレコードを聴き、ぜひ同じ境遇にある青年たちに聴いてもらおうと、その解説を点字に打ち、一人ひとりをまわって60人もの盲人を組織したこともある。また、津市では高校生が中心となって各校によびかけ、60人を組織しただけでなく、当日の裏方までを引きうけてくれた。函館市では、函館ドックの労働者が春闘の職場討議とあわせて歌劇参加を討議し、大量の参加と男声合唱を見事にうたいあげ、青森の東北電工の労働者も、海をこえて、この演奏にかけつけてきてくれた。福岡市では、中小企業の社長が『沖縄は日本人全体の問題だ』といって、十数人の社長を組織して聴きにきてくれた。京都の蜷川知事は資金融資を提供し、大阪の黒田知事以下、各市長は数十万円の援助金を提供してくれた。こうして北九州市では、放送局や新聞社が事務所や練習会場を提供し、北九州・長野・兵庫・千葉・東京では、テレビ・ラジオによってこの内容が報じられ、「朝日」「毎日」「中日」などのほか各地方紙は、こぞってこの記事をとりあげるにいたったのである。「...」また、今回の歌劇公演の一つの特徴として、共産党と民青が、聴衆の組織に積極的役割を果たしていたことがあげられ、広範な人びとと深く結合して多面的、総合的な活動を着実にすすめていることを感じさせられたのである。
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