政情危機の影響
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「2013年タイ反政府デモ」の記事における「政情危機の影響」の解説
2013年12月23日、政情不安により、タイ通貨バーツは3年ぶりの安値に下落した。ブルームバーグ報道によると、11月と12月にタイ通貨は4.6%下落、主要株価指数も9.1%下落した。アジア新興市場で取引する日本の主要トレーダーは「抗議行動が続いている時期に、バーツやタイの資産を購入する理由が見当たらない」とブルームバーグに語った。 観光面では、タイの国内旅行協会が2012年の同時期と比較してクリスマスや新年時期の観光収入が1億2500万ドル相当減少したと報告した。タイ中国連合観光協会は、2014年第1四半期の中国人観光客の到着数が2013年の同時期90万人と比較して約60%減少すると予想している(2013年は中国国民がタイ観光で最も高い割合を占めた)。1月6日、シンガポール航空はバンコクの政治情勢から19便を中止する予定だと述べ、旅行代理店は得意先顧客の減少を経験している。 タイ銀行は、反政府活動の2日目にあたる2014年1月14日に135の銀行支店が影響を受けたと報告した。バンコク銀行の3支店、クルンタイ銀行の17支店、サイアム商業銀行の5支店を含む36支店が終日閉店し、TMB銀行の72支店とCIMBの10支店を含む99支店が通常の営業時間に先立って閉店したと発表した。 タイ財務省、ブルームバーグ、タイ証券取引所がまとめたデータによると、2013年10月31日に抗議が始まって以来、海外投資家はタイの株式から30億ドル(約1000億バーツ)の資金を引き揚げた。証券アナリストは、タイの近隣諸国によって刈り取られた利益のことや、インドネシア株式に移動した約63億バーツをタイ証券取引所が追跡していることについて論評した。 2014年1月23日、観光・スポーツ大臣が2014年1月のタイへの訪問観光客総数が、その月の例年の観光客数の半分にあたる100万人に減少すると発表した。英国の国際金融企業バークレイズの代表は、抗議運動を繰り返してきた歴史を反復し、そのうえで「これが起こったのは初めてではありません。投資や観光面では損害が見受けられます。現時点では全て回復可能ですが、時間が経つにつれてその一部は永続的になるでしょう」と説明した。 2014年1月27日、バンコク都市圏管理局(BMA)救急医療サービス部門のエラワンセンターは、この反政府抗議運動中に死者10人と負傷者571人が記録されていると発表した。 2月12日のメディア報道によると、バンコクの事業者達は経済的影響がより問題になったため政情不安への解決を望むようになった。東南アジア最大級のショッピングプラザの1つセントラルワールドは顧客流量が2013年から20%減少したと報告し、日本の百貨店テナント伊勢丹のバンコク店は1時間早く閉店するようになり、ラチャプラソン地区(バンコクでも屈指の商業中心地)の宿泊施設は得意先顧客の60%減少を経験した。また人気の高い海外バックパッカーの行き先カオサン通りに観光客が1日当たり5000人しか来訪しておらず、こちらは50%の減少が示された。同日、タイの中央銀行は2014年のGDP予測成長率を4%から3%へと引き下げた。 2月17日に発表された経済データ報告書によると、タイのGDPは2013年最後の3か月で+0.6%増と出ており、これは2012年第1四半期以降で同国の最も低い成長率である。このデータでは、抗議デモの開始以来タイ通貨のバーツが4%安になったことも示されている。タイ銀行の広報官は、2月17日時点の金融政策は国のニーズに十分対応するものだと語った。 2014年4月13日、バンコクにあるチュラーロンコーン大学の安全保障国際研究所を拠点とするタイの学者ティティナン・ポンスティラクは、東アジア経済研究局(EABER)と南アジア経済研究局(SABRE)の共同イニシアチブである東アジアフォーラムに向けて2014年の政治危機を査定した。ティティナンは「インラックの日々は残り短い」と書いており、タイに起こりうる2つの結末を予測して「もしそれが分断したどちら側(タクシン派と反タクシン派)も含む政府であれば、タイは道を見いだせるかもしれない。しかし、反タクシン派党の暫定政府であれば更なる騒動と混乱が予想される」と述べた。学術界は民主主義プロセスへの彼の支持を表明し、彼は声明で「タイ国民は、民主主義の出発点が大多数の意志であることや、タイでの独裁政治支配は結局長続きできないことを認識する必要がある」と結んだ。 2014年4月中旬、タイの民間シンクタンクであるカシコーン研究センター(KResearch)は、国内の政治的混乱が続いているためタイには不況期に差し掛かるリスクがあると報告した。同センターは、2013年第4四半期と同じく2014年第1四半期にタイの輸出が伸びていないことを示すと共に、-1.8%というマイナス成長がこの期間を超えて続くことを示すデータを提示した。このシンクタンクは、2014年のタイ経済を約+1.8%成長だと予測した。しかし、バンコク銀行は、世界経済の回復の結果として、輸出が年間2-3%増加し、輸出が5-7%増加すると予測した。実際のところ、第1四半期の反政府デモに続いてクーデターによる政情混乱もあり、2014年のタイの経済成長率は+1.0%となった。これは前年の+2.7%から大きく落ち込んだが、翌2015年には+3.1%と大きく盛り返している。 この政治危機では当初、タクシン支持者からの暴力的反応が起きる恐れが高まった。タクシンは、以前5回の総選挙で選出された政権が任期満了前に解体されたため、権利を剥奪されたと感じていた。
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