排水問題
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洗剤に用いられる界面活性剤の水生生物への影響はこれまで数多く報告されている。これらの研究から汎用される界面活性剤について水生生物へ悪影響を及ぼさない濃度(推定無影響濃度 PNEC)が算出されている。このPNECと河川中の濃度を比較することで、実環境でのリスク(危険性の程度)の程度が問題あるレベルなのかどうかが初めて可能となる。しかしながら、リスクの概念はまだ定着していないため、“家庭用洗剤として広く使用されているLAS(直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩)は、水1リットルに数ミリグラム含まれると魚が死滅し、その10分の1では成長が阻害される[要出典]”とハザードだけを強調した記載がなされることも多い。毒性(ハザード)が弱い物質でも環境中での濃度が高くなれば、環境リスクは高まる。すなわち、排水問題は、水生生物への影響(毒性)だけでなく、その物質が環境中で分解されるのかなどの因子や環境中での濃度を把握する暴露評価を踏まえたリスクに基づく議論で行われるものである。 1960年代に導入された合成洗剤の界面活性剤ABS(分岐型アルキルベンゼンスルホン酸塩)は化学的に安定であり、昭和40年代の多摩川水系の汚染に代表されるように河川等で分解が進まず発泡問題が起こった。しかし、近年では下水道の整備や、大学や企業側の努力により環境に配慮した製品開発が進み、洗剤に利用される界面活性剤の多くは微生物により容易に分解されるものになっている。微生物の分解可能性と人へのリスク評価を同等に考えてはならない。人に及ぼす影響を症状のかるものから、重篤なもまで広く研究していくべきなのであるが、現在は発癌性や遺伝的影響などの重篤のもののみが研究の評価項目になっている。 また、環境中の濃度測定結果をもとにしたリスク評価も実施されてきている。その結果、洗剤に用いられる代表的な界面活性剤であるLASは、都市近郊河川での水生生物調査において、水生生物に対して重大な影響を及ぼしていることを示唆する結果はみつからなかった。しかし、重大でない影響は当然及ぼしている。環境評価に関する研究はいずれも重大事象に関するものが主である。洗剤の影響で重大でない様々な影響を無視してはならない。重大とは生死に関することであるが、元来洗剤による症状、影響は生死に影響を及ぼさないものがほとんどであるが、いずれも人の人生を奪う力がある。日本石鹸洗剤工業会では家庭用洗剤に汎用される界面活性剤と蛍光増白剤について自主的にリスク評価を行っており、リスクは小さいと結論付けている。 こうしたリスクの考え方やリスク評価結果をわかりやすく解説する試みとして、環境省は子供向け冊子『かんたん化学物質ガイド』シリーズを作成している。洗剤については『洗剤と化学物質』に人の健康と環境への影響が説明されている。 かつて衣料用洗剤には補助成分としてリン酸塩が含まれていて、これを含む排水による富栄養化で河川の水質汚濁を問題とする時代もあった。滋賀県の琵琶湖周辺では無リン石鹸を使おうという運動が起きた。しかしながら、洗剤に由来するリン寄与率は十数パーセントと低く、洗剤のリンを削減しても琵琶湖の環境改善には繋がらないとの県の予測があった。事実、リン代替物を配合した無リン洗剤(脂肪酸塩を主成分とするものではなく)ができて、家庭用洗剤の無リン化が完了しているが、一向に琵琶湖の環境改善は進んでいない。 石鹸(化学物質名称:脂肪酸塩)も有機物であり環境への負荷がある。石鹸も洗剤も適正使用をはかることが、環境保全につながる。つまり、洗濯するときの濃度は、通常1リットル中に数百ミリグラムほどであり、汚染された水を薄めて浄化するためには莫大な量の水が必要となる。したがって自然界に排出するときは天然か合成かに関係なく十分な注意が必要である。ひとりひとりの使用量はわずかであっても、多量に排出すれば環境に悪影響をもたらすのは必然であるからだ。洗剤に用いられる界面活性剤は全体としての使用量が多いためPRTR法に基づいて環境排出量がモニタリングされている。一部の石鹸成分は、2007年10月から開催されているPRTR指定化学物質見直し合同会合でPRTR指定化学物質の追加候補となっている。追加の根拠であるハザードの種類はLASなどと同様に生態毒性である。 なお、家庭用洗剤分野以外でも、環境受容性の高い界面活性剤の研究開発が行われている。 特にフッ素系界面活性剤は残留性が高く危険視されていたが、近年低減化に成功した。
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排水問題
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「コンデンシングボイラー」の記事における「排水問題」の解説
コンデンシングボイラーでは燃焼ガスの水蒸気を凝縮させる構造上どうしても凝縮したドレン水が発生するため、その排水が必要である。しかしながら排気ガス中には窒素酸化物や、特に石油式の場合は硫黄酸化物も含まれるため、これらが水に溶け込んでドレン水は酸性となる。そのためコンデンシングボイラーの設置に際しては、これを中和するための装置と排水配管の施工が必要になる。 集合住宅ではこの排水配管の敷設ができないためコンデンシングボイラーを設置できなかったが、一部の風呂給湯器では浴槽の排水後に中和した排出水を追い焚き配管に流すことで排出させる機能を持たせることで、排水が困難な箇所へも設置できるものが開発されている。 中和装置には炭酸カルシウム系天然石を主成分とした中和剤が用いられており、一般家庭用途では約15年程度の寿命の機種が多い。 本来、給湯器から発生するドレン水は、生活に起因するものとして、「汚水」と位置付けられ、下水道などの排水設備へ流さなければならない。しかしながら、 ドレン水は燃焼に伴うもので、排出量が少ない 上記のとおり、中和装置が設けられており、ドレン水が一定の性状となることが担保されている コンデンシングボイラーを使用することで、地球温暖化対策に寄与する という理由により、2012年3月に国土交通省より「潜熱回収型ガス給湯器等ドレン排水の取扱いについて」というガイドラインが策定され、この中でエコジョーズのドレン水を「雨水と同様の取扱い」として、必ずしも汚水系統の排水設備へ排出する必要がないという見解が発表された。個々の自治体においては、諸条件を検討し判断することとなるが、このガイドラインによりエコジョーズのドレン排水を、雨水として扱うことの根拠ができたと言える。
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