大阪万博と難波線・鳥羽線の開通
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/12/07 01:49 UTC 版)
「近鉄特急史」の記事における「大阪万博と難波線・鳥羽線の開通」の解説
1970年(昭和45年)この年の3月15日から9月13日にかけて、大阪府吹田市で日本万国博覧会(大阪万博・EXPO'70)が開催され、近鉄は万博来場者を奈良・吉野・伊勢志摩といった観光地に誘致すべく、万博の前年辺りから新車の導入・新線の開通・架線電圧の昇圧・特急の増発といったさまざまな積極策を見せるようになった。それらを順に示すと下記のようになる。 1969年(昭和44年)9月21日 奈良線・京都線・橿原線の架線電圧を、従来の直流600Vから大阪線などと同じ直流1,500Vに昇圧する。ただし、橿原線の軌道中心間隔・車両限界・建築限界拡大工事については、この時点で既に工事用地内での遺跡発掘調査が長引いたことから万博開催に間に合わないことが明確となっていた(工事完成は1973年9月20日)。そのため近鉄は大阪・名古屋線向けに「スナックカー」の量産車である12200系の増備を進める一方で、これらを入線させることができない京都・橿原線用特急車として、12200系に準じた接客設備を備えつつ車体幅を縮小した「ミニスナックカー」こと18400系を投入することを強いられた。 12月9日 奈良線の油阪駅(同時に廃止。代替に新大宮駅を設置) - 奈良駅間に大軌が開業させた時から存在していた、併用軌道区間を解消して奈良駅を地下駅化。大幅なスピードアップと以降の編成増強に貢献した。 12月15日 近鉄鳥羽線の宇治山田駅 - 五十鈴川駅間が開業。同改正で上本町 - 五十鈴川間で特急の8両編成運転を開始。宇治山田発着の特急の一部を五十鈴川まで延長。 1970年(昭和45年)3月1日 鳥羽線が全線開通、また同時に近鉄志摩線が1,067mm(狭軌)から他の近鉄線と同じ1,435mm(標準軌)に改軌された。暫定ダイヤでの開業であるが、上本町駅・京都駅・近鉄奈良駅(新設された「奈伊特急」)・近鉄名古屋駅より賢島駅への特急運転が開始された。 志摩線は、鉄道省参宮線が1911年(明治44年)7月に鳥羽駅まで延長された後、鳥羽から先の志摩半島への貨客輸送を図るべく、「志摩電気鉄道」(志摩電)という会社が1929年(昭和4年)7月に、鳥羽駅 - 賢島駅間の貨客線と賢島駅 - 真珠港駅(改軌と同時に廃止された、賢島駅から300mほどの位置にあった貨物駅)間の貨物線を開業させていた。鉄道省 - 国鉄の参宮線との間で貨物の提携輸送を行うため、線路の幅はそれと同じ1,067mm(狭軌)であった。志摩電は1940年(昭和15年)に参急の傘下に入り、1944年(昭和19年)には三重県内の中小私鉄統合で三重交通の路線となった。1964年(昭和39年)には三重電気鉄道の路線に分社化されたが、1965年(昭和40年)4月に近鉄に合併し同社の志摩線となった。鳥羽線が開通するまでは他の近鉄の路線と接続しない「孤立路線」であった。 近鉄は、伊勢志摩への観光開発を進めるにあたり、当時の近鉄線の終点であった宇治山田駅の1番線ホームをバスが横付けして停車できるよう改造し、1961年(昭和36年)4月から近鉄特急の到着に合わせて、三重交通と近鉄が共同出資した三重急行の賢島行きの特急バスが接続するといったようなことも行った。しかしそれでも国鉄参宮線との競争に打ち勝つためには、近鉄は鳥羽・賢島方面への特急の直通運転が必要であると考え、1968年(昭和43年)5月に鳥羽線の工事が着工された。また、志摩線は改軌のため1969年(昭和44年)12月から運休・バス代行輸送となっていた。 3月15日 近鉄難波線が全通し、近鉄は大阪の南の繁華街である難波にできた近鉄難波駅まで乗り入れた(これにより上本町駅 - 難波駅は移動時間に30分かかっていたものが近鉄利用でわずか3分に)。 難波への乗り入れは大軌の創業時から考えられてきたが、当時の大阪市は「市域の交通は大阪市が一括して運営する」という通称「市営モンロー主義」をとっていたため、なかなか進まないでいた。 3月21日 前述した、難波線・鳥羽線の開業と志摩線の改軌に伴ってダイヤが改正され、「名阪甲特急」の全部と「名阪乙特急」・「阪伊甲特急」・「阪伊乙特急」の一部が難波駅に乗り入れるようになった。この時、「阪伊甲特急」と「名伊甲特急」には「パールズ」(真珠)という愛称が付けられ、「かつらぎ」・「おわり」などのなき後約10年ぶりに列車愛称が復活した。同時にメインフレーム (汎用コンピュータ) による特急座席予約システムの稼動を開始する(10000系使用列車を除く)。この時に使用開始した(オンライン)端末から発券機能が備えつけられた。なお「吉野特急」の一部が高田市駅に停車開始。「阪伊甲特急」・「名伊甲特急」は伊勢市駅通過となる。
※この「大阪万博と難波線・鳥羽線の開通」の解説は、「近鉄特急史」の解説の一部です。
「大阪万博と難波線・鳥羽線の開通」を含む「近鉄特急史」の記事については、「近鉄特急史」の概要を参照ください。
- 大阪万博と難波線・鳥羽線の開通のページへのリンク