北朝鮮の拉致問題と核開発
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「在日韓国・朝鮮人の歴史」の記事における「北朝鮮の拉致問題と核開発」の解説
1987年11月29日、大韓航空機爆破事件が起こる。当初、拘束された被疑者は日本旅券を保有していたが、その後の調査で偽造旅券であり、日本から拉致された日本人により教育されたとされる北朝鮮工作員であることが判明した。ソウルオリンピック開催の妨害を目的としていたとされるが、北朝鮮によるテロであることが明らかになるにつれ東側諸国はソウルオリンピックへの参加を決めるなど、北朝鮮の思惑とは裏腹の結果となった。その後も北朝鮮の反対を押し切り1990年にソ連が、1992年には中国が韓国と国交を樹立、北朝鮮は孤立を深め核兵器開発へと傾倒していく。また、1990年代に入り日本のバブル景気が崩壊、「学習組」の指揮下北朝鮮への不法送金を行っていた朝銀信用組合も、不動産投資にのめりこんでいた商銀信用組合や多くの日本の金融機関とともに1990年代後半から次々と破綻、朝銀救済のために投入された公的資金は最終的に約1兆4千億円に上り批判が集まった。その後の破たん処理の過程で担保とされていた朝鮮総連本部ビルや朝鮮学校などが差し押さえられている。 1994年の金日成の死去に伴う金正日体制移行への世襲批判、北朝鮮が「苦難の行軍」と呼ぶ1990年代半ばの飢饉を経て弱体化していたところに在日社会という重要な資金源の一つを失った北朝鮮は「太陽政策」を掲げていた韓国や民団、日本との関係改善にも意欲を見せた。しかし2002年平壌で行われた日朝首脳会談で北朝鮮による日本人拉致問題を認めたことで日本の対北感情は極度に悪化、それまで拉致問題は捏造であるとしてきた朝鮮総連や北朝鮮支持者などに厳しい目が向けられ、日本国籍を取得したり朝鮮籍から韓国籍に書き換えるものが続出し、1990年代末には10万人を超えていた朝鮮籍保持者は、2015年末時点では3万人あまりになっている。 また、朝鮮半島非核化を目指した米朝枠組み合意や朝鮮半島エネルギー開発機構 (KEDO) の失敗、度重なる北朝鮮によるミサイル発射実験の影響により、2006年、国際連合安全保障理事会では決議1695が採択され、2006年の民団と朝鮮総連の「5.17共同声明」も民団側が白紙撤回、さらに同年の北朝鮮の核実験を受け国際連合安全保障理事会決議1718が採択された。 2009年には北朝鮮の再度の核実験を受け国際連合安全保障理事会決議1874に基づく制裁が決定され、日本でも万景峰号の入港禁止や北朝鮮への輸出・送金禁止、送金制限に違反した在日外国人の再入国禁止措置などが採られた。 2010年5月28日には日本で「国際連合安全保障理事会決議第千八百七十四号等を踏まえ我が国が実施する貨物検査等に関する特別措置法」(臨検特措法)が可決、2012年12月の弾道ミサイル発射を受け2013年1月には追加制裁を含む国際連合安全保障理事会決議2087が採択され、これを受け日本政府も制裁を強化するなど、北朝鮮との交流はさらに細ってきている。 2014年には拉致問題再調査に関する「ストックホルム合意」により、日本が独自に行なっていた制裁の一部を解除したが、その後の朝鮮総連のマツタケ不正輸入事件に関連し北朝鮮が政府間協議を中断した。 一方、六者会合の機能停止、2010年の延坪島砲撃事件、2011年の金正日死去と金正恩の世襲などもあり、日朝交流がほぼ停止状態であるにもかかわらず、朝鮮総連を中心とした祖国訪問事業は続けられている。朝鮮学校の生徒たちも毎年旧正月に行われる「学生少年たちの迎春公演」などを中心に北朝鮮を訪問、祖国とのつながりを深める中で朝鮮人としての誇りを感じ、民族心を育む機会とするだけでなく、北朝鮮指導部に対する忠誠を示す機会ともなっている。 他方、国連決議違反である核実験や弾道ミサイル発射実験などを繰り返す北朝鮮指導部に対する礼賛教育や、日本と国交を持つ韓国やアメリカを敵視し民族の分断につながる教育を韓国籍を持つ在日韓国・朝鮮人にも行う朝鮮学校に対し援助を行うことは、国際的な立場からも、拉致問題の解決を訴える日本人の立場からも好ましくないとして、2012年、文部科学省は高校授業料無償化を朝鮮学校には適用しないという方針を示した(なお、各種学校である外国人学校でもコリア国際学園や韓国系の東京韓国学校は就学支援金支給対象となっている)。 また、補助金不正受給問題もあり、朝鮮学校に対する援助を見送る地方自治体が続出した。横浜市では、朝鮮学校補助金打ち切り後、朝鮮学校の生徒・児童を対象に直接学費補助を行っていたが、これを保護者から朝鮮学校側へ納付させられていたことが問題になった。韓国籍を持つ在日韓国・朝鮮人に対する朝鮮学校での北朝鮮礼賛教育は、文世光事件再発が懸念されるだけでなく、韓国籍を持ちながら2010 FIFAワールドカップに北朝鮮代表として出場し、後に韓国のKリーグクラシックでプレーすることとなった鄭大世が、海外のテレビ番組で金正日総書記を「尊敬している」と発言したことを受けて、韓国の検察に国家保安法違反容疑で捜査される事態にもつながった。
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