児童間での暴力及び性暴力
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/01 17:09 UTC 版)
「児童養護施設」の記事における「児童間での暴力及び性暴力」の解説
平成20年の児童福祉法改正で、被措置児童虐待の通報制度が設けられ、虐待を発見した者や、虐待を受けた児童は、児童相談所等に通報又は届出できることとなった。(児童福祉法第33条の12)。虐待があったような家庭環境に起因するよりも実際には、性暴力、暴力の加害者、被害者になっている子供たちは、乳児院から養護施設に来て、引取りの見通しもないままいる子供でかつての被害者が加害者になるとの実感を特定非営利活動法人CAPNA理事長が衆議院厚生労働委員会で語っている。 児童間でも、飲尿の強要などのいじめや殴るなどの暴力、性虐待(子ども間の性暴力)が行なわれることがある。 1982年には、施設内の児童間暴行により6歳児が死亡した事件があった。 1992年には、9歳男児が施設内で入所中の児童4名から暴行を受け、右不全麻痺、外傷性くも膜下出血等の傷害を負い、入院治療を受けたが、高次脳機能障害等の後遺症が残った事件が起こっている。広島県内児童養護施設での被措置児童間での暴力・性的いじめについては施設を管理監督する県を相手取り、原告が勝訴した事件も起こっている。 性被害を受けた男児が、やがて性加害者になる被害連鎖が確認されている。1983年に強姦目的で女子大生を殺害した施設出身の青年の公判では、その在籍した施設での身体的暴力や支配手段としての性行為の強要の存在が明らかになっている。また、特に大舎制の施設において、子ども間の性暴力が起こっていない施設はほとんどないとの研究調査も2009年には公表されている。中には、小学校高学年女児が中学生男児に複数回襲われそうになり、施設に訴えるも再発防止が取られなかったケースもあり、東京都社会福祉協議会児童部会が元入所児を対象に実施した調査や2007年に行った都内施設調査で暴力被害の状況が明らかになっている。 三重県では、入所児童間の性暴力の裁判において、同県は2008~12年度の5年間で51件、のべ144人の児童が性暴力の被害・加害に関わっていたことを明らかにした。また、国としての統計や対策がないと報道されている。東京都が報告を受けた子ども間の性的事故は、2015年度63件、16年度74件、17年度は4月から12月に60件となっている。 厚生労働省が公表した調査結果によると、全国の児童養護施設、一時保護所などで、平成29年度に把握された子供間の性的な問題が732件あった。当事者となった子供は1371人となっている。 児童福祉施設・児童相談所の職員、研究者でつくる「神戸児童間性暴力研究会」が行った児童養護施設内の性暴力の実態調査によると、施設内の子ども同士で起きる性暴力は、同性間が7割を占め、特に男子同士の事案に重大な傾向があり、性衝動によるものだけではなく、力による支配や知的障害などの他の要因による可能性がある。 被措置児童虐待報告に関連して「これはどの程度の水準なのだろうというのが一つは疑わしい部分があるのですが、発生した時間帯がいつごろなのだろうかということなのです。つまり未だに児童養護施設は宿直、実際職員は寝ていませんけれども、1、2時間しか睡眠がとれていませんが、でも宿直なのです。その宿直の時間帯に子ども間暴力も含めてですが結構事件は起こっているのではないか。」との夜間体制への懸念の声があり、子ども間暴力については、「特に一番深刻なのは、ほとんどどの施設でもあるであろう「子ども間の性加害被害」です。これが連鎖をしている。これは主に夜間に起こっているはずです。そのことは地域ごとにある程度データが取れている。例えば埼玉県はその調査をしていて、夜間に子ども間の性加害被害が起こっていることも把握できてきている。なぜ夜間かというと、先ほどの話題ではないけれども、手薄いからです。そもそも宿直体制を考えないで夜勤体制にしていかないと、子どもたちの安全保障が守られないです。施設に子どもが入ることによって子どもが傷つくという現象が現に起こっていることを、今まで我々は業界内だけの秘密にしてきた部分があるのですが、もっと市民にも知ってもらう。もちろん養護施設にいる子どもたちのスティグマを考えなければいけません。そのような問題はありますが、現に何が起こっているのかをもう少しオープンにしていって、それに対して「皆さん、どうしますか」という議論を起こしていかなければいけないのではないか。」と厚生労働省児童部会社会的養護専門委員会で審議されている。 「夜の集会だと言われて夜中に起きてベランダでたばこを吸わされたりした」「先生の部屋におやつを盗みに行かされることもありました」と入所経験者は語っている。 前橋連続殺傷事件の犯人は、2歳の時に両親が離婚し、4歳の時に預けられた児童養護施設と、学校の両方で悪質ないじめに遭い、孤独を深めたと報道されている。 一部の施設では、「安全委員会」は、子どもの暴力を個人の問題とせず、集団の風通しを良くして、暴力の芽を枯らしていく取り組みをしている。または一晩に三度、園内を時間を正確に決めず不定期に巡回し、性虐待を防いでいる。そのほか、▽外部の目を入れる▽子どもたちから定期的に聞き取る▽ルールを明確にして、違反した子には愛情を持って叱る-などのやり方を導入して、児童間暴力を防いでいる。
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