企画と脚本
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『ダイ・ハード』の製作は、脚本家のジェブ・スチュアートが経済的に困窮していた1987年に始まった。コロンビア映画が購入した彼の脚本は放棄され、ウォルト・ディズニーとの契約では十分な収入が得られなかった。スチュアートは契約期間が6週間しかなかったため、代理人のジェレミー・ジマー(英語版)が20世紀フォックスの製作部門であるゴードン・カンパニーの開発責任者ロイド・レヴィンに連絡を取った。 レヴィンはスチュアートに、元警察官のロデリック・ソープが1978年に書いた小説『Nothing Lasts Forever』(日本版タイトルは『ダイ・ハード』)の映画化を依頼した。スコープは、1974年に公開されたディザスター映画『タワーリング・インフェルノ』を見た後、ビルの中を武装した男たちに追われる男の夢を見て、小説の着想を得たという。フォックスは、1966年に出版されたこの本の前作『The Detective』を1968年にフランク・シナトラがニューヨーク市警の刑事ジョー・リーランドを演じて映画化しており(『刑事』)、『Nothing Lasts Forever』自体も、その執筆前に既に続編の権利を購入していた。 レヴィンは、彼が映画的に面白いと思ったロサンゼルスのクリスマスという設定さえ維持すれば他はスチュアートの自由で良いとした。本作は成功した映画シリーズである『ランボー』にちなんで「オフィスビルの中のランボー」として売り出された。プロデューサーのローレンス・ゴードンとジョエル・シルバーは、1987年に公開されたアクション映画『プレデター』で一緒に仕事をしたジョン・マクティアナンを監督に起用した。マクティアナン他のテロスト映画でよくみられるような単に「卑劣で不快な行為」だけではなく、「何らかの喜び(some joy)」を盛り込むのであれば、という条件で引き受けた。 スチュアートは、バーバンクにあるウォルト・ディズニー・スタジオのオフィスで18時間労働するようになり、疲労感から「イライラ」していた。妻との喧嘩の後、ドライブに出掛けた先で自分の車線上に箱があり、結果として空箱ではあったが、避けられずに轢いてしまった。彼によれば、その後にフリーウェイの脇に車を止め、「心臓がドキドキした」という。ここからスチュアートは、「大惨事の前に妻に謝るべきだった男」という物語の中心テーマを構想した。そして妻と仲直りするために帰宅し、その夜に35ページを書き上げた。スチュアートは、マクレーン夫妻の関係を形作るために、離婚や配偶者が旧姓に戻るなど、同僚たちの結婚生活の問題も参考にした。 当初、主人公ジョン・マクレーンの名前はジョン・フォードであったが、これは同名の物故監督ジョン・フォードに失礼だと20世紀フォックスは考えた。スチュアートは彼の出自であるケルト人由来の「善く力強い(good strong)スコットランドの名前」としてマクレーンを選んだ。彼はこのキャラクターを、最悪の状況から教訓を得て、別人というほどではないが良き人間に成長する欠陥のあるヒーローと表現した。アクション映画を書いた経験がなかったスチュアートは、スリラー映画を書いた経験を生かして、マクレーンとホリー、そして彼らの和解を観客に気にかけてもらうことに注力した。スチュアートが幹部に物語の説明をしていると、ゴードンがそれを遮り、まずはドラフト版を完成させるように言って会議から退出した。スチュアートは6週間かけて脚本の初稿を完成させた。 スチュアートは『Nothing Lasts Forever』を理解するのに、レヴィンの助けを借りたと語っている。彼はC-4爆弾がエレベーターシャフトに投げ込まれるシーンや、主人公のジョー・リーランドが屋上から飛び降りるシーンなど、多くの場面を忠実に再現した。しかし、小説はすべてリーランドの視点から語られる形式であり、彼がいなかった場面で起こった出来事については詳しくは書かれていなかった。また、小説のトーンはよりシニカルで虚無的であった。悪役のアントン・グルーバーはクラクソンが独裁政権を支援しているという理由で、世間知らずの男女のゲリラ兵を使ってクラクソン・ビルを襲撃し、また、リーランドは麻薬中毒の娘と会うためにビルを訪ねることになったが、最後には娘はグルーバーと共にビルから落ちて死んでしまう。そのため、(リーランドの視点では)敵たちの動機がはっきりせず、リーランドは彼ら(特に女性)を殺すことに葛藤していた。またリーランドは、高給取りのセキュリティ・コンサルタントで、経験豊富な年配の男性として書かれていた。スチュアートは、この小説のトーンを「悲しすぎる」と否定し、また60歳を超えた高齢のアクションヒーローというのも説得力がないと考えた。彼はマクレーンが登場しない場面において登場人物たちを増やしたり、設定を膨らませた。パウエルには妻子を与え、マクレーンとの関係をより親密にした。また、原作では序盤で姿を消すアーガイルは中盤以降もしばしば劇中に登場し、最後にマクレーンをサポートする。オリジナルキャラクターとしては悪徳ジャーナリストのリチャード・ソーンバーグが登場する。 西部劇の名優ジョン・ウェインのファンだったスチュアートは、カウボーイ言葉を含めて、脚本全体に西部劇の要素を盛り込んだ。また、彼はロサンゼルスに建設中だったフォックス・プラザの工事責任者と親しくなり、建物の中に入って登場人物やシーンの配置のアイデアを得ることができた。そして、1987年6月に完成した脚本を提出した。フォックスが1988年の夏の大作映画(ブロックバスター)を必要としていたこともあり、この作品は翌日には許可された。
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