ノスタルジアを基調とした作品など
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/12 13:28 UTC 版)
「ノスタルジア」の記事における「ノスタルジアを基調とした作品など」の解説
古今東西を問わず、個人的な郷愁や故郷へのメランコリックな心理や感情の昂ぶりを文学や歌舞音曲などの作品へ昇華させた例も多く、古典の名作にも見られる。 楽曲に関しては、恋人や家族、知人との「懐かしい思い出」、またそれらから派生して「別れ」や「後悔」、「未練」などをテーマにした楽曲がかつての日本では絶大な人気を博していたため、ノスタルジアの表現が1970年代から1980年代における作詞作曲の核となっている一面がある(一説に、楽曲に好まれる傾向は、その時代の現実世界での景気動向や社会心理と相反するとも言われる)。なお昨今の音楽事情においても題材としてノスタルジアは重要な意味を持っており、聴き手にエモーショナル、センチメンタルな感情を想起させることがある。 フォーク、ブルース、カントリー、ハワイアン、ボサノヴァ、フラメンコ、ファド、シャンソン、演歌、琉球民謡といった、民謡や民族音楽の影響を色濃く残したままポップ化されたワールド・ミュージックの類は、ノスタルジアの中でも「郷愁」の思想が核となったポピュラー音楽ジャンルである。また時代劇、歴史劇、歴史映画、西部劇なども同様にして、民族意識に基づく一種の「郷愁」的な思想(あるいは「歴史的ノスタルジア」)が強い演劇・映像作品である。 スタジオ・ジブリ作品では、建物や街並みをその映画舞台以前の古い様式に変更したり(意図的なアナクロニズム)、或いは住む人々の生活様式を詳細に建物や背景に描写する(質感表現)などの工夫がなされており、登場人物の劇的な人間模様も加味されることで観客にノスタルジアを感じさせやすい作品になっている。また『男はつらいよ』シリーズや『ALWAYS 三丁目の夕日』などは、人情という人間本来の情感とそれに付随するように存在している古めかしい人工物(日本らしさを連想させ、かつ生活様式が色濃く現れている古い木造建築群)が観客を感情移入しやすくし、またその要素を現代の無機的な要素と対比させることで、観客に「懐かしさ」を想起させている。 また『となりのトトロ』に見るノスタルジアを分析した吉岡史朗は、特定の年代を指し示すような要素を排除し「特定の過去という時間的なコンテクストに依存しない」描かれ方をすることによって、個人的・直接的な経験の有無に関わらず懐かしさを感じることにつながっているという。すなわち、ある特定の時代や場所についての「「リアル」な設定や大衆文化への言及を欠いている」ことによって、作品の「普遍性」が生まれ、それにより「トトロ」 の世界が世代を越えた過去の記憶となり得るとした。 そして、宮崎駿が作品を通して提示するノスタルジアについて、「むしろ現在と過去はつながっているということ、単に現代人はそのつながりを忘れているだけだという継続の意識」に基づいたものとして高く評価し、失われた過去ヘ戻りたいというホームシックの念に基づいた『ALWAYS 三丁目の夕日』に代表される「昭和30年代ブーム」や「レトロブーム」とは対極にあると位置づけた。 作家の大塚英志は、『ちびまる子ちゃん』に見るノスタルジアについて、「作品中のサブカルチャー的固有名詞は具体的な時代を特定するためのものではなく〈懐かしいあの頃〉というフィクショナルな過去に物語を設定する仕掛けである。この種のレトロ的固有名詞は具体的な時代や体験ではなく、あくまでも無根拠なノスタルジーを呼び起こす符丁のようなものだといえる」とし、この「レトロ的固有名詞」の存在により、「誰もが心地良く懐かしがれる万人向けのノスタルジアの対象を提示した」と分析する。すなわち、〈懐かしいあの頃〉という抽象化した記号を通して、「まる子」の時代を直接経験していない若者でも、 ノスタルジアを感じるような仕掛けが施されているのだという。 ノスタルジックとされる作品の制作プロセス・内容には、制作者が想起した「ノスタルジア」の感情表現を作品として描出する場合がある。この場合、客観的にもわかりやすく(言語的思考の補助が認められる)、歌曲や映画、小説にその表現が多く見られる。これらには、単に視聴者の自伝的記憶を対象として、懐古的なイメージを前面に表現した作品も含まれることがある。 あるいは、作品内容に関してはあくまでも事象・音階の羅列に過ぎないが、作品の視聴者に対して「ノスタルジック」な感情を抱かせるような工夫や構成がなされている場合もある。これには言語的思考の介入が少ないため、主観的な面も大きくなり、一概には判断しづらい要素を持っている。しかし一定数以上の共感が一般視聴者の批評から見られ、またそれらは言語的思考を伴わないため人種や文化の相違も影響していない。インストゥルメンタルや一部の漫画、映画などに見られる(特にスタジオジブリ映画やその関連音楽において顕著に見られる)。 ただし、当時の流行などがその過去の時点での日常として”その当時に”制作された作品については、現在の視点から見た場合「ノスタルジア」を感じやすいものであることは自明であるが(「懐メロ」はその典型例である)、上記の作品群には該当しないため混同しないよう注意が必要である。 具体的な作品については、「ノスタルジア (曖昧さ回避)#作品タイトル」「Category:失恋を題材とした楽曲」「Category:追悼の音楽」「Category:青春を題材とした楽曲」「Category:別れを題材とした楽曲」「Category:卒業ソング」等を参照。
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