ネトルズの死
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/11 06:30 UTC 版)
「マーシャル・アップルホワイト」の記事における「ネトルズの死」の解説
ネトルズは癌の診断を受けた数年後の1983年に片目の摘出手術を受け、さらにその2年後の1985年に死去した。アップルホワイトは彼女の死について、「彼女の内には地球に留まるには多すぎるエネルギーがあったため、彼女は肉体を捨てて、ネクスト・レヴェルに向けて旅立った」と、信者達に説明した。この説明は教団の教義に沿った内容であり多くの信者が教団にとどまったものの、1人の信者が脱会した。深い抑うつ状態となったアップルホワイトは、ネトルズは未だに彼とコミュニケーションをとっていると主張したが、信仰の危機に瀕していた。彼の信徒達は、この時彼を支え、彼を大いに元気づけている。それから彼は、信者達と象徴的に結婚する儀式を執り行うようになった。ラリックは、これを教団の団結を確実にする試みであったと見做している。アップルホワイトは、信者達に、自分が学ぶべきものが更にあったため、彼はネトルズの傍を離れたと語った。彼は、彼女が彼が行ったよりも「より高い精神的任務 (a higher spiritual role)」に従事していると感じていた。彼は、彼女の事を「父 (the Father)」であると見做すようになり、しばしば彼女の事を男性代名詞で呼ぶことがあった。 アップルホワイトは、強固なヒエラルキーに重きを置き始め、彼がネクスト・レヴェルの指導が必要だったので、彼の信徒達には彼の導きが必要であると教え始めた。ゼラーは、これが自然と、アップルホワイトが死んでしまったならば、教団が存続する可能性が無いことを確実にしてしまったと書いている。アップルホワイトとの関係は、救済への唯一の道であると呼ばれていた。彼は、自身の事をキリストであると見做すこと奨励した。ゼラーは、この教団は以前は個々人の選択に重きを置いていたが、それに代わって、アップルホワイトの調停者としての役割が強調されるように変わったと述べている。アップルホワイトは、科学的教育の側面をいくつか維持していたが、1980年代には、この教団は信仰と権力への服従に力を入れる様になり、より宗教的な集団となった。 ネトルズの死後、アップルホワイトはまた、焦点についての彼の考え方を作り替えた。以前、彼は、教団は物理的に地球から天へと昇る、死は生まれ変わりの源となると主張していた。だが、ネトルズが何の変化もなしに肉体を残して逝ってしまったことを受け、彼は「昇天は精神的なものである」と強く主張するようになった。彼の思想においては、彼女の魂は宇宙船へと旅行し、新たな肉体を得たと結論付け、彼の信者達や彼もいずれは同様になるとした。彼の思想では、聖書の天国は、遥かに進化した生物が居住する実際の天体であり、物理的肉体を其処まで昇天させる必要があるというものであった。アップルホワイトは、ひとたび彼らがネクスト・レヴェルへと至れば、彼らは他の天体で進化を促進されるだろうと信じていた。彼は、イエス・キリストは地球外生命体であると信じており、地球へ来て、殺され、宇宙船へと移送される前に、死から復活したと強調していた。アップルホワイトの教義に拠れば、イエス・キリストは天国への入り口だったが、彼が最初に地球に来た時に、人類は昇天する準備ができていない事を知った。そして、アップルホワイトは「二千年紀毎」に、人類がネクスト・レヴェルに達する機会が存在し、従って1990年代初頭が、イエスの時代から起算して、天国 (the Kingdom of Heaven)に達するための最初の機会となると定めた。ゼラーは、彼の教義はキリスト教の聖書を下敷きとしていたが、宇宙人が人類と接触したという彼の信念を通して、再解釈していたと書いている。 アップルホワイトは、自分のことをウォーク=イン(英語版)と呼ばれるものであると考えていた。ウォークインは「人類を教育するために、大人たちの体を操作する、より高位の生命体」についての思想であり、この思想は1970年代後半に起きたニューエイジ運動の中で有名となった。この考え方は、アップルホワイトの復活に関する思想を特徴づけるものになった。教団信者の魂は、宇宙船へと移され、そこで彼らはは新たな肉体を手に入れると、アップルホワイトは信じていたのである。アップルホワイトは、蝶の比喩を使わなくなり、肉体が単なる入れ物であり、魂の乗り降りが可能な車両であると述べるようになった。この二元性は、おそらくアップルホワイトが若い時期に学んだキリスト教論の産物であるとされる。ルイスは、この教団の教えは、「基本的にニューエイジの基盤と融合させられたキリスト教の要素」を持っていたと書いている。ニューズウィークが行った教団の分析では、ケネス・ウッドウォードが、アップルホワイトの二元性と太古のグノーシス主義との比較を行っている一方で、ピーターズは、彼の神学は、物理的な世界を特別視していることから、グノーシス主義とは異なっていると記載している。 ネトルズの死の後、アップルホワイトは偏執病を発症し、教団に対する陰謀を恐れるようになった。1980年代半ばに加入したある信者は、新たな改宗者が潜入者であることを恐れ、アップルホワイトは新たな改宗者を拒否していたと回想している。彼は、政府が教団本部を襲撃することを恐れ、ローマ帝国に対して完全な抵抗を示した古代イスラエル・マサダのユダヤ人抵抗者について大いに語っている。次第に彼は終末について語るようになり、再利用、または再起動され大きくなりすぎた庭や、実験に失敗した人類と、地球とを比較した。この庭は比喩であり、彼は、地球は「下に踏みすきで掘られる (spaded under)」だろうと述べた。ウッドウォードは、アップルホワイトの地球の再利用に関する教えは、仏教に見られる時間の循環的視点との類似性していると書いている。アップルホワイトは、同様にニューエイジの考え方を使ったが、地球においてすぐに変化が起こるというユートピア主義よりも、終末論について予言する点において、ニューエイジ運動とは異なっていた。彼は、大多数の人類はルシファーによって洗脳されており、彼の信者はこの洗脳から脱することが可能であると強く主張した。彼は、特に性的衝動がルシファーによるものであると述べている。更に、彼が「ルシフェリアン (Luciferian)」と呼ぶ邪悪な地球外生命が、彼の任務を妨害しようとしていると述べた。彼は、多くの有能な道徳教師とポリティカル・コレクトネスの代弁者は正にルシフェリアンであると論じた。このテーマは1988年に出てきたものであり、おそらくこの時急増した不気味な宇宙人によるアブダクションの話に対する反応であった。
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