サル痘とは? わかりやすく解説

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サル痘


ヒトのサル痘は、サル痘ウイルス感染による急性発疹性疾患である。2003年11月感染症法改正に伴い、親規に四類感染症規定された。自然宿主アフリカリスで、サル感染するヒト痘そう天然痘)様の症状呈するヒト感染すると、重症例では臨床的に天然痘区別できないヒトのサル痘での致死率は1~10%程度である。

疫 学
  サル痘は1958年に、ポリオワクチン製造のために世界各国から霊長類集められ施設で、カニクイサルの天然痘疾患として初め報告された。その後サル施設サルにおけるサル痘の流行があり、致死率は3~48%であった当時種痘天然痘ワクチン接種が行われていたため、ヒト感染例報告されていない
1. WHOに報告されヒトのサル痘患者数

ヒトのサル痘は、1970年ザイール(現コンゴ民主共和国)で天然痘疾患として初め報告された(表1)。その後ヒトのサル痘は中央・西アフリカの主に熱帯雨林散発的に流行している。WHOの報告では、1981年から1986年ヒトのサル痘患者数は338人である。1996年から1997年にかけてコンゴ民主共和国大流行し511名の患者発生している。
流行地の動物血清疫学的解析等から、サル痘ウイルス自然宿主アフリカリスであることが明らかにされた。サルおよびヒト終末宿主である。

アフリカ大陸以外では、ヒトでのサル痘は報告されていなかったが、2003年アフリカから愛玩用輸入され齧歯類を介してサル痘ウイルス米国テキサス州持ち込まれ動物業者北米原産のプレーリードックに感染し、これをペットとして購入したヒト感染することで流行起きウィスコンシン州39名、インディアナ州16名、イリノイ州12名、ミズーリ州2名、カンザス州およびオハイオ州各1名、計71名の患者発生した小児1名は重症となったが、水痘との重感染であることが明らかになっている。

病原体
ポックスウイルス科は、感染細胞細胞質増殖する巨大な二本鎖DNA遺伝子に持つエンベロープウイルスで、脊椎動物感染するChordopoxvirusと、節足動物感染する Entomopoxvirus 亜科分類される。Chordopoxvirus 亜科はOrthopoxvirus(オルソポックスウイルス), Parapoxvirus, Capripoxvirus, Sulpoxvirus, Leporipoxvirus, Avipoxvirus, Yatapoxvirus, Molluscipoxvirus の8属と、未分類ウイルスからなる

 オルソポックスウイルス属ウイルスの形態レンガ状で、その長径は300nmを超える巨大なウイルスである(写真1)。感染性ウイルス粒子は、細胞内形成される細胞内成熟ウイルスと、細胞内成熟ウイルス感染細胞膜から出芽し、細胞膜由来脂質膜をさらに被った細胞外外ウイルスからなる両者脂質上のウイルス糖タンパク異なる。個体間の感染には細胞内成熟ウイルス関与し感染個体内での感染の拡大には主に、細胞外外ウイルス関与する考えられている。
写真1. 天然痘ウイルス電子顕微鏡写真
形態的にはサル痘ウイルス天然痘ウイルスワクチニアウイルス等を相互に区別できない

オルソポックスウイルス属には、サル痘ウイルス痘瘡ウイルス天然痘ウイルス)、ワクチニアウイルス種痘用いられるウイルス)、牛痘ウイルス等が含まれるヒトへのサル痘ウイルス感染は、主に感染動物患者との接触感染である。ヒトからヒトへの二次感染天然痘比べて少なく、数%である。

2003年米国での流行では、4月9日ガーナからペットとしてテキサス州輸入され齧歯類により、サル痘ウイルス持ち込まれ、プレーリードックに感染し、プレーリードックからヒト感染したことが明らかにされた。輸入され齧歯類のうち、サバンナオニネズミ(ガンビアンラット)、アフリカヤマネ、キリスからサル痘ウイルス検出されている。北米大陸原産とするプレーリー ドックサル痘ウイルス感受性高く感染する発症する米国調査で、テキサス州輸入され齧歯類のうち、アフリカヤマネ17匹が2003年5月8日日本輸出されたことが判明した厚生労働省の調査により、7月3日時点では輸入されたアフリカヤマネ17匹中15匹がすでに死亡し2匹のみが生存していた。この2匹について、国立感染症研究所サル痘ウイルス検査PCRウイルス分離抗体検査)を行った結果陰性であったアフリカからの輸入禁止されている齧歯類は、ラッサ熱媒介するマストミスのみであるため、日本にも輸入感染症としてサル痘患者発生する可能性否定できない

サル痘ウイルスには大きく分けてコンゴ型と西アフリカ型があり、前者病原性が高い。米国での流行は、西アフリカ型のサル痘ウイルスによることが明らかになっている。

サル痘ウイルスヒトへの感染経路は、感染動物咬まれること、あるいは感染動物血液体液皮膚病変(発疹部位)との接触よる。ヒトからヒトへの感染は稀であるが、患者飛沫体液皮膚病変(発疹部位)との接触により感染する可能性がある。

臨床症状徴候

 ヒトにおけるサル痘の潜伏期間は7~21日平均12日)で、その後発疹写真2)、発熱発汗頭痛悪寒咽頭痛リンパ節腫脹現れる重症例では臨床的に天然痘区別できない

致死率は、アフリカでの流行では数~10%報告されているが、2003年アメリカ合衆国での流行では、死亡例報告されていない

写真2. サル痘患者顔面発疹(WHO提供)

アフリカでの致死率が高いのは、報告され流行大部分コンゴ民主共和国で、病原性の高いコンゴ型のサル痘ウイルスによること、医療体制栄養状態問題HIV感染による免疫低下等によると考えられる動物ではサルウサギ、プレーリードック等が高感受性で、感染する発症する

病原診断
オルソポックスウイルス属ウイルス抗原的には相互に区別できないため、サル痘特異抗体検出できないまた、種痘歴のある場合はすでに抗体があるため、血清診断できない。しかし、未種痘者では元々オルソポックスウイルス抗体陰性であること、既種痘者でも発症5日目からIgM抗体の上昇が見られることから、血清診断少なくともオルソポックスウイルス感染有無判定できるこのため、サル痘流行時には診断的価値は高い。特異的な実験室診断としては、病変部位からのウイルス分離や、PCRによるサル痘ウイルス遺伝子検出が行われる。


治療・予防
特異的治療法はないため、対症療法が行われる。サル痘ウイルスを含むオルソポックスウイル スにシドフォビルが有効であることが実験的に明らかになっているが、サル痘患者への投与例はない。現在、シドフォビル以外にも、いくつかの有望なポックスウイルス開発が行われている。種痘はサル痘にも有効であるが、日本では1976年以降種痘行われていない。

感染症法における取り扱い
サル痘は四類感染症定められており、診断した医師直ち最寄り保健所届け出る義務がある。



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