アサヒペンタックス Kシリーズ
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「PENTAXの銀塩一眼レフカメラ製品一覧:35mm判 (KマウントMF機種)」の記事における「アサヒペンタックス Kシリーズ」の解説
アサヒペンタックス Kシリーズとは、新規のバヨネット式のKマウントを採用した一眼レフカメラの初代シリーズ製品である。1975年6月に『K2』、『KX』、『KM』の3機種が同時発売された。アサヒペンタックスの名称は踏襲したもののロゴデザインやボディ外装デザインは一新され、新しいカメラであることを印象付ける配慮がなされた。あわせて登場したKマウントレンズ『SMCペンタックスレンズ』は基本フィルター枠を52mm径と、Sマウントのタクマーで一般的だった49mm径から拡大し、その大口径化を印象付けるような明るい新設計のレンズ製品の登場や、コストをかけた鏡胴の造りがなされ、従来のSマウントシリーズ機よりも高級感をもたせたものとなった。一方、従来のM42マウント機のユーザーからの移行を考慮し、M42マウントのレンズを装着するためのマウントアダプター(マウントアダプターK)が安価に供給された。これは、Kマウント時にフランジバック長が変更されず、単にマウント形状の変換にとどまっているためである。 しかし、見た目の印象は異なるものの、K2以外の普及型機種はカメラの内部構造、各部レイアウトは従来のSP系シリーズを踏襲している。同じく、Kシリーズの各種アクセサリーの多くが従来のSP系のものと互換性をもっている。その一方で、旭光学工業のペンタプリズムへの銀蒸着ペンタプリズムが社内基準に達したことにより実装され、従来のPSマウント機シリーズでは暗いと指摘されていたファインダーが明るくなったことや、内蔵露出計がCdSからSPDに変更され応答速度が速まっている。 翌年(1976年)、小型軽量一眼レフカメラの需要が高まる中、大幅に小型軽量化されたペンタックスMシリーズが登場すると主力はそちらに移り、シリーズとしては短命に終わった。 K2 1975年6月発売。Kシリーズの中で唯一の、完全新規設計されたシリーズ最上級機(発売当時)である。デザインの意匠がシリーズで統一されているために『KX』、『KM』と酷似するものの、細部の操作系レイアウトやデザインが異なる。先代のAPシリーズ初の高級機であった『アサヒペンタックスK』のネーミングを引き継いだところから、旭光学工業のKマウント機にかける意気込みがうかがえる。ステンレス製マウントの採用(他のペンタックスカメラでは『ペンタックスLX』のみ)など、最高級機にふさわしい贅沢な仕様の機種であった。 新機軸として、セイコー光機と共同開発された電子制御式の金属縦走行式フォーカルプレーンシャッターユニット『セイコーMF』が搭載され、オート時だけでなくマニュアル撮影時でも電子制御式になったことにより露出の精度がより高められた。また、『アサヒペンタックスESII』でも遅いと指摘されていた「絞り優先AE機能」も、受光素子を従来の「CdSセル」から「SPD(シリコン・フォト・ダイオード)」に変更されたことによって応答速度、省電力性が大幅に向上された。操作系レイアウトは機械的構造上、露出倍数設定、ASA感度設定ダイヤルがマウント部に集約されている。これら数々の新機軸を盛り込みながら、サイズは従来機とほぼ同じに抑えられた。ESIIで残された課題をマウント変更と新技術によって克服し、より実用性を高めた最新高級機に相応しい機種となっている。 KX 1975年6月発売。Kシリーズの中級機に位置する機種である。主な機械構造はSP系機種がベースとなっており、従来の「布幕横走り型シャッターユニット」を採用した"機械式フルマニュアル機"である。 しかしその一方では最新のSPDによる露出計や、ファインダー内情報表示の変更、銀蒸着のペンタプリズム、ミラーアップ機構など、K2の新機軸も新たに取り入れられており、さらには「絞り値の直読み窓」が設けられ、機械式フルマニュアル機ながらも「絞り優先AE機」のような使い勝手を実現した新しい一面がある。なお、特注品としてモータードライブ対応型が存在する。 KM 1975年6月発売。Kシリーズの普及機に位置する機種である。KXと同様にSP系機種がベースとなっているものの、Kシリーズで唯一ペンタプリズムが従来のアルミ蒸着のままであるほか、「フォトスイッチ」までもが継承されており、操作系レイアウト、内部構造ともに従来のPSマウント機である『アサヒペンタックスSPF』をほぼそのままKマウント化したような機種である。従来ユーザーの乗換えを配慮した製品であることがうかがえる。こちらも特注品としてモータードライブ対応型が存在する。 K2DMD 1976年9月発売。K2の後継機であり、結果的にKシリーズの最高級機となった。名称の"DMD"の由来となった「データバック(D)」、「モータードライブ(MD)」への対応など高級機に相応しいシステム面が強化された。また機能面では「メモリーロック機能(一般的にはAEロックと呼ばれる)」や、KXで採用された「絞り値直読み窓」の追加。ESIIに実装されたもののK2では省かれた逆入光防止のための「アイピースシャッター機能」の復活などの改良が加えられ、ここにてAPをルーツとする一連の流れのカメラの完成を見ることとなった。 しかし発売された時期には『オリンパスOM-2』を端緒とする、小型軽量で普及型一眼レフ機の時代に入っており、発売後間もなく次世代の小型軽量化されたMシリーズが登場しそちらが主力製品となったため少数が生産されるにとどまった。プロなどの上級者向け機種ということを意識したためブラックボディを中心に販売されたが、極少数クロームボディのものも存在する。 K1000 1986年6月発売。もともと1976年から輸出専用機種として、KMの「セルフタイマー機能」と「プレビュー機能」を省いた廉価機種として生産されていた機種。しかし、マルチモードAEカメラの全盛期であった1980年代後半、天文撮影や写真・美術系学生など一部に残っていた、要最低限の機能しかない機械式フルマニュアルカメラの需要に応えるべく、国内発売が開始された。 名称の"1000"は輸出版の名称でよく使われていた最高シャッター速度(1/1000秒)の数値より由来するものと思われる。1995年までの長期間に渡って国内外にて販売されたため数度のマイナーチェンジがあり、一例として国外にて発売された初期型の金属外装機やプラスチック外装機(国内発売された最後期型)などがある。国内発売時期の関係から、Kシリーズではこの機種のみが"AOCOマーク"と"ASAHI"銘の存在しないペンタックスブランドの機種となる。 なおペンタックスがM42マウントからKマウントに切り替えた時期は、ニコンが旧ニッコール(いわゆるガチャガチャ)からAi化し、キヤノンはFLからFD化、ミノルタは旧SRからMC化、オリンパスはOMシリーズをリリースするなど、国内大手メーカーが新世代に移行する時期でもあった。
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