『文明の衝突』論との関りとは? わかりやすく解説

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『文明の衝突』論との関り

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/11 09:36 UTC 版)

「歴史の終わり」記事における「『文明の衝突』論との関り」の解説

フクヤマの説に対しサミュエル・P・ハンティントン著書文明の衝突』の中で「支配的な文明人類政治形態決定するが、持続はしない」とし「歴史終わらない」と主張したこのように「歴史の終わり」への批判として、ハンティントンの「文明の衝突」論が挙げられることが多いが、文明の衝突論と歴史終焉論はもともと思考軸が違うことに注意を払う必要があるハンティントンが言うように、文明による価値観違い衝突生むということは十分ありえる。しかし、フクヤマ考えによれば、その文明の衝突回避する唯一の方法は、リベラルな民主主義普及のみであり、発展途上国宗教戦争民族紛争は、民主主義理念普及不十分だから起こるのであるとする。また、フクヤマ9・11同時多発テロ後も「まだ歴史終わったままだ」という見解示している。フクヤマにとって、リベラル民主主義とは、文明圏宗教圏よりも高次にある普遍的なイデオロギーであり、けしてキリスト教圏アングロ・サクソン文化圏などに固有なものではない。日本大韓民国台湾インドといったアジア諸地域にも民主主義普及したウラジーミル・プーチン強権主義批判されるロシアも、一党独裁回帰するような動き見られない五大国最後独裁国家である中国段階的な民主化進めている。反米的なイスラム教国であるイラン・イスラム共和国限定的だが民主体制維持されており、フセイン体制崩壊後イラク国民議会選挙にも多く有権者参加したアフリカでも、2011年チュニジアでは「ジャスミン革命」が起き、約23年続いたベンアリ政権崩壊したエジプトでも約30年続いたムバラク政権崩壊したカダフィ政権の崩壊したリビアでもその原動力となったのは市民によるネット世論デモ盛り上がりである。「歴史の終わり」発表され30年近くたつが、その間フクヤマの「歴史とは世界民主化されていく過程である」という主張は、揺らぐどころか、ますます精度増しているとフクヤマ考えている。 「米ソ冷戦終結によってイデオロギー闘争の時代終わり次に文明の衝突が始まる」という言説は、フクヤマの歴史哲学対す誤解である。フクヤマにとって文明の衝突は、弁証法的に統一される歴史上ごくありきたりなイデオロギー対立しかないフクヤマ「歴史の終わり」で、共産主義に対してのみ勝利宣言行ったではなく、他のすべてのイデオロギーに対して民主主義勝利宣言行ったのである宗教戦争民族紛争は、はるか太古の時代から繰り広げられてきたものであり、新時代現象として、なんら目新しいものではない。弁証法的対立としてみたら、「民主主義vs共産主義」「民選政体vs共産党一党独裁政体」の冷戦イデオロギー対立よりも原始的低レベルなものである民主主義アンチテーゼとしても、宗教原理主義民族原理主義よりも、マルクス・レーニン主義のほうが理論性といい、普遍性といい、はるかに洗練されていた。現実に、宗教原理主義者はテロ行為行えても、正規軍抗争はまったと言っていいほど民主国家諸国に歯が立たないし、他宗国家からはまったくというほど支持共感されない。あくまで治安維持レベル問題であり、国家存亡左右する歴史的マクロ的な問題ではないのである共産主義という最強ライバル打倒し民主主義諸国からすれば宗教原理主義民族原理主義は、はるかに格下脆弱なライバルしかない宗教テロリズム新し時代矛盾ではなく近代化適応できないただの時代錯誤集団であり、時間経てば経つほど、弁証法的に切り捨てられ孤立化し、無力化していく存在のであるフクヤマにとって、それらは文明の衝突というよりも、あくまでも民主主義とそれに敵対するイデオロギーとのイデオロギー対立なのであり、民主国家独裁国家カルト的なテロ組織)、脱歴史世界歴史世界衝突のであるまた、歴史終焉論よりも文明の衝突論のほうが未来を予見していた事例として、中国急成長挙げる識者もいるが、これも典型的な誤解のひとつである。中国急成長遂げているのは、あくまで資本主義自由主義経済取り入れた結果であり、経済的な共産主義体制そのもの効果ではない。中国経済的に成長すればするほど、中国共産党支配正統性失っていくのである中国国力増大し国際的な影響力を増せば増すほど、むしろ中国共産党一党独裁による支配体制揺らいでいくという、まさに主人と奴隷の弁証法矛盾真っ只中に、中国共産党叩き落されているのである中国国民資本主義的な労働通して中国共産党反抗するだけの気概知恵技術確実ににつけていっているのだ。実際に中国国内では暴動頻発し将来体制崩壊予期して家族資産外国逃亡させている中国共産党幹部も多い。もはや共産党一党独裁体制長期維持することは困難だと、中国共産党もよく自覚しているのである。むしろ、膨大な人口という労働力需要力を持った中国が、自由主義経済取り入れてもまったく経済発展ないほうが、フクヤマからすれば大きな理論的矛盾抱えることになってしまう。中国成長は、どんな国や地域でも近代化をとげ、経済発展し、やがて民主化していくというフクヤマ歴史理論をむしろ典型的にトレースしているのであるまた、ハンティントン文明論文明の定義や境界曖昧であり、紛争起こった地域後付異なった文明同士境目であり、文明の衝突だと指摘することが可能である。それに対してフクヤマ国家体制論は、明文化され法制度に基づいたものであり、厳密な基準反証可能性有したのであるハンティントン文明の衝突論が、冷戦の終結によって、押さえ込まれていた民族紛争宗教戦争先祖返り的に復活する危険性を妊んでいるという問題提起であるのなら、フクヤマ歴史終焉論はその問題提起対するひとつの解決案である。

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