『文筆眼心抄』
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同じく空海の手に成る『文筆眼心抄』は、全一巻。『文鏡秘府論』のダイジェスト版とも言えるもので、その要点をまとめて分量を三分の一ほどに圧縮している。『文鏡秘府論』の上梓後に執筆され、その完成時期は、弘仁十一年(820年)五月、空海四十七歳の時とされる。その内容は、四声譜、十二種調声、八種韻、六義、十七勢、十四例、二十七種体、八階、六志、二十九種対、七種言句例、文二十八病、筆十病、筆二種勢、文筆六体、文筆六失、定位四術、定位四失、句端の各項目に分けられる。 『文鏡秘府論』を縮小するに当たって空海は、引用諸文献が示す例文(中国の諸家が批評の対象とする詩文)とそれに附帯する諸家の解説を中心として大胆に切捨てている。ために本書は『文鏡秘府論』が持ち得た高い資料性を犠牲にすることとなったが、これは「ダイジェスト版」という本書の性格上、やむを得ないことである。なお、本書序文には「文筆眼心」とあるのみで「抄」の字を欠く。「抄」字は後人により附加された可能性もある。書名の「文」は韻文、「筆」は散文を言い、文の「眼」、筆の「心」というのがその意図するところであろう。
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