W・トムソン (Thomson, William)
W・トムソンという人は
北アイルランドのベルファストで二人兄弟の次男として生まれる。知名な数学教授である父親の教育により幼いころから神童と呼ばれ、10歳の若さで大学入学を許可される。グラスゴー大学とケンブリッジ大学で学び、22歳でグラスゴー大学の物理学教授に就任する。 大西洋横断電信ケーブルの敷設に技術顧問として従事し、この功績により1866年にナイトに叙せられサー・ウィリアムとなる。1892年には男爵位を授けられてケルヴィン卿と称す。 ケルヴィンの名はグラスゴー大学付近に流れる川の名からとったらしい。
W・トムソンの主な経歴
1847年、電磁気現象による数学的表現についての論文を発表する。 非圧縮性流体の取扱いで電気力・磁気力および回転の数学的取扱いに関する先導的な論文を発表する。 ファラデーの電磁誘導を数学的に表現しようとしていたマクスウェルに重大な示唆を与えるものだった。
1847年、トムソン効果を予見する。 ゼーベック効果とペルチェ効果を熱力学的に考察し、両者には密接な関係があることを発見する。 さらに、ゼーベック効果、ペルチェ効果、ジュール効果のいずれにも属さない熱効果があることを予見する。 これが最後の熱電効果となるトムソン効果で、温度勾配のある導体に電流が流れると熱の移動が発生するとしたものである。
1851年、熱力学の第二法則を一般化する。 仕事のエネルギーを無制限に熱エネルギーに変えることはできても,熱エネルギーをすべて仕事のエネルギーに変えることはできないとした永久機関を否定した法則である。 クラウジウスとは別にこの法則を発見した。
1848年、絶対零度を基準とする温度目盛りを提唱する。 あらゆる物質は、その気体、液体、固体の状態を問わず、-273℃でエネルギーがゼロになるという絶対零度を基準とした温度単位を提唱した。 水の凝固点のセ氏0℃は273度となる。これが後にケルヴィン卿の頭文字Kをとって273Kと表すようになった。 この絶対零度の概念は、熱力学の分野で重要な役割を果たすことになる。 また、現在における絶対零度は273.15Kである。
1853年、磁気系エネルギーの表現式を提唱する。 W・トムソンはファラデーが発見した常磁性と反磁性、およびその理論を一般化するするための研究を行っており、透磁率と磁気感受率という概念を導入して、磁石のもつ全エネルギーを表す式∫∫∫HBdxdydzを導いた。 B=μHもW・トムソンによる式である。
1858年、大西洋横断海底電信ケーブル敷設。 予備調査を経て大物実業家数人の手により資本金35万ポンドの大西洋電信会社が設立された。 大西洋横断通信がもたらす利益は想像に安く、資本金35万ポンドは2,3週間で調達され、英国政府からの補助金も約束された。 W・トムソンはスコットランドの株主たちに推され、18人から成る理事会の会長に就くことになる。
アメリカの巡洋艦ナイアガラ(5000t)とイギリスの汽船アガメムノン(3200t)によりアイルランド~ニューフィンランド間、1834マイルの海底ケーブルを敷設した。 海底ケーブルへの期待が高まるが実現には海水に侵されないケーブルが必要であり、1851年のブレットーによるドーバー海峡横断ケーブルの成功をみて、1857年の着手であった。 何度かの断線を乗り越え1858年に完成するが、当初は高圧で信号を送ったために絶縁を破壊してしまった。 W・トムソンによって微弱信号方式が検討され、一部絶縁破壊したケーブルを修復し、1865年に実用化する。
この快挙を祝う祝典が行われ、W・トムソンにはナイトの称号と、グラスゴーの名誉市民権が与えられた。
1902年、ケルヴィンの原子模型を発表する。 原子は非粒子的な陽電気がおよそ1Å程度の球状に一様に広がり、この内部にその陽電荷を打消すだけの何個かの電子が連動している。 このようなモデルについて、その安定なつりあいにおける電子の分布などを論じた。
ウィリアム・トムソン
電磁気学や流体力学などをはじめ古典物理学のほとんどの分野に661篇もの論文を発表した。また、電磁誘導や磁気力を表すためにベクトルを使い始めた人物でもある。 1883年、ロンドン王立協会からコプリ・メダルを受賞。1890年、ロンドン王立協会会長に就任。1896年、ロイヤル・ヴィクトリア勲章を授けられる。 1902年、メリット勲位を授けられる(創設時の12人の一人)。 1904年、グラスゴー大学総長に就任。
社会的な成功としては、科学者として最大のものを手中にした一人である。死にあたってはイギリス中が深い悲しみに暮れ、 全世界の科学者がその死を悼んだ。ウェストミンスター寺院にニュートンと隣り合わせで葬られた。
絶対温度の単位・ケルビン
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