ECVT
電子制御電磁クラッチ式無段変速機。富士重工業が1987年にスバルへ搭載して発売したCVTの呼び名である。金属ベルトはファンドルネ社のものを使い、油圧制御でプーリー溝幅を変更し、プーリー径を変え無段変速する。発進クラッチに電磁パウダークラッチを使って電子制御したので、Eが付いてECVTとなっている。
ECVT(スバルジャスティ搭載)
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電子制御電磁クラッチに高度なエレクトロ技術を導入し、これにスチールベルト・プーリーを組み合わせて画期的な無段変速機の実用化に成功したことは、省資源時代に相応しい技術として、顕著な役割を果たした。 |
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保管場所 | : | 富士重工業株式会社東京事業所技術1号館1階 (〒181-8577 東京都三鷹市大沢3-9-6) |
製作(製造)年 | : | 1987 |
製作者(社) | : | 富士重工業株式会社 |
資料の種類 | : | その他 |
現状 | : | 展示(静態)・公開 |
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名称 / 製作 | ![]() |
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仕様 | ![]() |
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効能 | ![]() |
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エピソード・話題性 | : | 世界初の電子制御電磁クラッチ式無断変速機 |
特徴 | : | ・電磁クラッチの励磁コイルをドリブンメンバ側に配置換えし、放熱性の向上と大幅な軽量化を実現。 ・発進クラッチ制御とCVT制御部を完全に独立させ、全体の信頼性を向上させた。 ・コンベンショナルなシンクロ機能を採用し、コンパクトな構成とした。 |
参考文献 | : | スバル技報No.13およびNo.15 |
その他事項 | : | 搭載車用途:小型乗用車;実物所在:富士重工業東京事務所;搭載車スタイル:ハッチバック;ドア数:3;乗員:5;車両重量:660kg;全長:3,535mm;全幅:1,535mm;全高:1,390mm;タイヤサイズ:145SR12;軸距:2,285mm;冷却:水冷;気筒配列:OHC3気筒;内径x行程:78.0x69.6mm;排気量:997cc;馬力/回転数:63/6,000(PS/rpm);燃料タンク容量:35L;トランスミッション型式:TB40型自動無断;駆動方式:FF;クラッチ形式:電子制御電磁クラッチ; |
ECVT
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/10/10 10:23 UTC 版)
ECVT(イーシーブイティー、Electro Continuously Variable Transmissionの略称)は、富士重工業(現・SUBARU)とオランダのVDT(Van Doorne's Transmissie BV; 現Bosch Transmission Technology)との共同開発によって世界で初めて実用化された金属プッシュベルト式無段変速機(CVT)である。ECVTは、電磁クラッチ、前後進切換機構、ベルト・プーリー機構、差動装置(デフ)を含む減速装置、油圧制御装置から構成されている[1]。富士重工業はこれを「電子制御電磁クラッチ式無段変速機」と称した[2]。当初は変速比制御は油圧機械制御であり[1]、フル電子制御化されたのは1997年にヴィヴィオに採用されたスポーツシフトECVTからである[2]。
ECVTの後継であるi-CVTについても本項で記述する。
概要
通常のオートマチックトランスミッション(AT)は摩擦クラッチの代わりに流体継手の一種であるトルクコンバータを使っているが、富士重工業はECVTにおいて「電子制御電磁パウダークラッチ」を使った。これはレックス(1980年)・サンバー(1982年)に採用されていたクラッチペダル無しの「オートクラッチ」システムの技術であり、「クリープ現象が無く安全である」と富士重工業は考えていた[3]。無段変速部はスチールベルト式CVTを採用した。
小排気量車にとっては変速ショックのない理想のATとして、富士重工業はECVTをジャスティ(1987年)を皮切りにレックス(1987年)、サンバー(1990年)、ヴィヴィオ(1992年)、ドミンゴ(1994年)と拡大採用していった。
しかし無段変速のATということで、通常のATと違う特性にドライバーは戸惑った。[要出典]ECVT車のスロットルには、電子スイッチがいくつか取り付けられており、アクセルペダルの踏み込み量(スロットル開度)と共に踏み込み速度を検知して、電磁クラッチの制御を行っていた。電磁クラッチとプーリーの油圧は電子制御であるが、変速比は機械制御のままで、少々癖があった。例えば、完全に停止しないと変速比が低速寄りにならず、停止寸前からの再加速などのとき、エンジンの出力は増加するもののプーリー比は小さいままで、ドライバーの操作に対し、思ったような加速力が得られない弱点がある。これは、変速比も電子制御となったスポーツシフトで改善された。
このCVTが開発された経緯は、クリープ現象を伴わない種類のクラッチ[注 1]を持つCVT車は、ことに発進時、繊細なアクセル操作を行なわなければぎくしゃくして円滑さに欠ける車両挙動を示したため、より滑らかな動作を求めてのことであった。しかし、それでもこの問題の解決には至らなかった上に、最大の売りである電磁クラッチが逆に最大の弱点となった。低速走行時のぎくしゃく感を嫌って上り坂でブレーキを使わずにアクセルペダル操作だけで停止したり、(サンバーにおいては)過積載で走行するような使用方法を続けていると、電磁クラッチに負担がかかって故障が頻発し、ECVTのイメージ悪化の一因となった。
これを反省点として、サンバーおよびヴィヴィオのマイナーチェンジでは、一部グレードを除き通常のトルクコンバーター付きステップATに変更された。
歴史
- 1984年2月 - ジャスティ用TB40型を開発したと発表
- 1987年- レックス、ジャスティに搭載
- 1990年- サンバーに搭載
- 1992年3月 - ヴィヴィオに搭載
- 1992年4月 - 日産・マーチ1300にN-CVTとして搭載。のちに日産・マーチ1000にも搭載された
- 1994年- ドミンゴに搭載
- 1997年- ヴィヴィオに「6速マニュアルモード付スポーツシフト」を採用
このほかフィアットへも供給され、パンダとウーノに採用された。また、スズキ・カルタス(2代目ジャスティ欧州仕様)にも搭載された(SCVT搭載のカルタス・コンバーチブルを除く)。
公益社団法人自動車技術会の委員会が「後世に語り継ぐべき特徴を持つ故実」として選定した「日本の自動車技術330選」に、ECVTが選ばれた[4]。
i-CVT
1998年(平成10年)、富士重工業は新しくi-CVT(インテリジェントCVT)を登場させた。i-CVTでは、電磁粉体クラッチが廃止され、ロックアップ機構付トルクコンバーターが採用された[3]。これによってクリープ現象が復活し、過負荷によるクラッチトラブルも解消されたため、市場の支持を得ることに成功した[3]。プレオ以降は軽自動車の全車種にi-CVTが採用された。
プレオ、R2、R1の一部グレードに搭載された7速マニュアルモード付きi-CVTは、スポーツシフトi-CVT(SS i-CVT)と呼ばれる[5][6][7]。
2009年(平成21年)、富士重工業は金属チェーン式リニアトロニックCVTを発表した。2011年(平成23年)には富士重工業が軽自動車の自社製造を終了したことで、富士重工業の金属ベルト式CVTの歴史に幕が下ろされた。
搭載車種
脚注
注釈
出典
- ^ a b 岡村 實、森本 嘉彦「自動無段変速機「ECVT」」『精密工学会誌』第55巻第5号、1989年、806-809頁、doi:10.2493/jjspe.55.806。
- ^ a b 『SUBARUのクルマづくり 開発ストーリー:リニアトロニック篇』(プレスリリース)SUBARU 。2022年6月13日閲覧。
- ^ a b c “【技術革新の足跡】CVT――段階不要論(1987年)”. Gazoo (2015年3月6日). 2021年9月13日閲覧。
- ^ “ECVT(スバルジャスティ搭載)”. 日本の自動車技術330選. 自動車技術会. 2021年9月13日閲覧。
- ^ 『新・コンパクトワゴン スバル「プレオ」を新発売』(プレスリリース)富士重工業、1998年10月9日 。2021年9月14日閲覧。
- ^ 『スバルR2を発売』(プレスリリース)富士重工業、2003年12月8日 。2021年9月14日閲覧。
- ^ 『スバル R1シリーズを一部改良 あわせて、R1「S」を追加設定』(プレスリリース)富士重工業、2005年11月24日 。2022年8月14日閲覧。
関連項目
外部リンク
- 日本の自動車技術330選 - ECVT(スバルジャスティ搭載)
ECVT
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/09 03:48 UTC 版)
「SUBARUのトランスミッションの一覧」の記事における「ECVT」の解説
詳細は「ECVT」を参照 スバルは、スバル・ジャスティの小排気量3気筒エンジンから合理的な加速と燃費を得るためにCVTを開発した。プッシュベルトシステムを使用しており、シフター上のボタンが押し下げられた時に後輪をエンゲージするオプション4WDユニット付きであった。また、牽引または登坂時により良いトルク配分を得るためにエンジンの回転数をほぼ2倍にする「スポーツモード」も備えている。シフト表示はP-R-N-D-Dsと読め、DsはDrive Sportを意味する。このCVTトランスミッションは総走行距離が蓄積すると信頼性がないことが判明したため、スバルは第5世代レガシィ/アウトバックまでCVT搭載車の北米への輸出を停止した。スバルは日本での販売のためだけにCVT付きの軽自動車の製造を続けた。長年にわたるトランスミッションの設計の改良に加えて、スバルは他メーカーにCVTを提供した。ジャスティのECVTは1988年11月に油圧作動4WD仕様も利用可能となり(5MT車は空気圧作動であった)、このモデルはジャスティ4WD ECVTと呼ばれた。 採用車種: 1987–1994 スバル・ジャスティ 1987–1992 スバル・レックス 1990–1995 スバル・サンバー 1992–1995 スバル・ヴィヴィオ 1994–1998 スバル・ドミンゴ
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