転換プロセス
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/21 09:00 UTC 版)
メートル法は1799年12月にフランスで公式に導入された。19世紀、メートル法はほとんどのヨーロッパの国で採用された(ポルトガル(1814年)、オランダ・ベルギー・ルクセンブルク(1820年)、スイス(1835年)、スペイン(1850年代)、イタリア(1861年)、ドイツ(1870年。法的には1872年1月1日)、オーストリア=ハンガリー(1876年。ただし法律上は1871年に採用))。タイでは、公式には1923年まで採用していなかったが、王立タイ測量局(英語版)では地籍の測量に1896年初頭から使用していた。デンマークとアイスランドでは1907年にメートル法を採用した。 国家が伝統的な単位からメートル法に転換する手法には3つある。1つ目は、期限を決めて迅速に切り替える手法である。これは、1960年代のインドや、それ以降のオーストラリア、ニュージーランドなどで使われた。2つ目は、時間をかけて次第に伝統的な単位の使用を禁止してゆく手法である。この手法は、いくつかの工業国により採用されているが、時間がかかり、また、一般的に完全実施にならないことが多い。3つ目は、メートル法によって伝統的な単位を再定義する手法である。これは、伝統的な単位が不明確で、地域により値が異なっていた場所でよく使われた。 1つ目の手法は、メートル法以前の単位の使用の禁止、メートル法化、全ての政府出版物・法律の再発行、教育システムのメートル法への変更をほぼ同時に行うものである。インドでの転換は、メートル法の使用が法制化された1960年4月1日から始まり、メートル法以外の単位が禁止された1962年4月1日に終了した。インドのモデルは極めて成功し、他の多くの発展途上国で模倣された。 2つ目の手法は、伝統的な単位と並行してメートル法の使用を法制化し、教育はメートル法で行ったうえで、段階的に古い単位の使用を禁止してゆくものである。これは、一般に長い時間をかけてメートル法化を進めてゆく手法である。大英帝国は1873年にメートル法の使用を法制化したが、1970年代と1980年代に各国政府が積極的に行動するまで、ほとんどの連邦国でメートル法への転換は完了しなかった。日本もこの手法を採用したが、メートル法への転換に約70年を要した。イギリスでは、移行プロセスはまだ不完全である。法律で、ばら売りの商品は、メートル法で重量を測定して売ることが義務付けられている。2001年、EU指令80/181/EEC(英語版)により、包装のラベルに補助単位(メートル法の単位に付記されたヤード・ポンド法の単位)を表示することが2010年から禁止されることとなった。2007年9月に会議が行われ、その結果、補助単位の使用が無期限に許容されるように指令が修正された。 3つ目の手法は、メートル法の単位を用いて伝統的な単位を再定義するものである。メートル法化が完了したと宣言された後でも、これらの再定義された「準メートル法」の単位が長い間使用されている例が多くある。 フランス革命後のフランスのメートル法化への抵抗により、ナポレオンは以前の習慣的度量衡(英語版)に戻すことを余儀なくされた。1814年にポルトガルはメートル系を採用したが、単位の名称はポルトガルの伝統的な単位(英語版)の名称が使用された。この単位系では、1mão-travessa(ハンド) = 1デシメートル(10mão-travessa = 1vara(ヤード) = 1メートル)、1カナダ(英語版) = 1リットル、1libra(ポンド) = 1キログラムとする。オランダでは、非公式に500グラムをpond(ポンド)、100グラムをons(オンス)と呼ぶ。ドイツとフランスでは、500グラムを「1ポンド」という意味のein Pfund、une livreと非公式に呼ぶ。デンマークでは、500グラムと再定義されたpund(ポンド)が、特に老人や(年輩の)果実栽培者の間で時々使われる。これは、元々生産された果物のポンドの量に応じて支払いが行われたためである。スウェーデンとノルウェーでは、mil(スカンジナビア・マイル(英語版))は非公式に10 kmと等しく、会話において、地理上の距離を表す時に主に使われた。19世紀に、スイスは非メートル法の単位をメートル法により再定義した(例えば、1 Fuss(フィート) = 30 cm, 1 Zoll(インチ) = 3 cm, 1 Linie(ライン) = 3 mm)。中国では、斤は500 g、両は50 gと再定義されている。 普通の人々が日々の生活でメートル法を使うようになる程度を判断することは難しい。最近転換した国では、高齢者ほど古い単位を使い続ける傾向がある。また、単位の地方的な変種は、メートル法の単位に丸められる場合と、そうでない場合がある。例えばカナダでは、オーブンや料理の温度は摂氏度と華氏度の両方で測られる。輸入品を除いて、全てのレシピや包装には、摂氏度と華氏度の両方が記載される。そのため、カナダ人は一般に、両方の単位に対してもあまり苦痛を感じない。これは製造業でも同じことで、カナダの企業はヤード・ポンド法とメートル法の両方に対応することができる。主要な輸出先はヤード・ポンド法が広く使われているアメリカであるが、国内向けとそれ以外の国への輸出にはメートル法を使用する必要があるためである。
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