福岡市交通局4000系電車
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福岡市交通局4000系電車 | |
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福岡市交通局4000系電車
(筑肥線・今宿 - 下山門、2025年4月) |
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基本情報 | |
運用者 | 福岡市交通局 |
製造所 | 川崎車両兵庫工場[1] |
製造年 | 2024年 - |
製造数 | 108両(6両×18本・予定)[2][3] |
運用開始 | 2024年11月29日[4] |
投入先 | 空港線・箱崎線 JR筑肥線 |
主要諸元 | |
編成 | 6両編成[5][3] |
軌間 | 1,067 mm(狭軌)[6][3][7][8][9] |
電気方式 | 直流1,500 V (架空電車線方式)[6][3] |
最高運転速度 | 85 km/h[3] |
起動加速度 | 3.5 km/h/s(最大) [6][3] |
減速度(常用) | 3.5 km/h/s[6][3] |
減速度(非常) | 4.0 km/h/s[6][3] |
編成定員 | 849(252)名[6][3] ()内は座席定員 |
車両定員 | 本文編成表参照 |
自重 | 本文編成表参照 |
全長 | 20,435 mm(先頭車)[6][3][7][8] 20,000 mm(中間車)[6][3][9] |
車体長 | 19,935 mm(先頭車)[7][8][9] 19,500 mm(中間車)[7][8][9] |
全幅 | 2,862.4 mm(先頭車、乗務員室握り棒間)[7][8] 2,845 mm(各車 車側灯間)[9] |
車体幅 | 2,800 mm[7][8][9] |
全高 | 4,078.3 mm(各車 空調装置高さ)[7][8] 4,135 mm(4200形・4500形、パンタ折りたたみ高さ)[9] |
車体高 | 3,725 mm(先頭車の前頭部高さ)[7][8] 3,605 mm(各車 屋根高さ)[9] |
床面高さ | 1,130 mm[7][8][9] |
車体 | アルミニウム合金 ダブルスキン構造[5][3] |
台車 | ボルスタ付きモノリンク式片軸操舵台車 SC-109MC形・SC-109M形[3] |
車輪径 | 860 mm[7][8][9] |
固定軸距 | 2,100 mm[7][8][9] |
台車中心間距離 | 13,800 mm[7][8][9] |
主電動機 | 三菱電機製 MB-5702-A形 同期リラクタンスモータ[3] |
主電動機出力 | 190kW [10][3] |
搭載数 | 2基/両×6両 ≒ 12基/編成[10][3] |
駆動方式 | 歯車形たわみ継手方式[3] |
歯車比 | 109 : 14(7.79)[3] |
制御方式 | 2レベルVVVFインバータ制御(ハイブリッドSiC素子)[3] |
制御装置 | 三菱電機製 MAP-196-15V365形[3](1C1M×6群制御) |
制動装置 | E122形 回生ブレーキ併用電気指令式ブレーキ(遅れ込め制御)、応荷重装置、保安ブレーキ[6][3] |
保安装置 | ATC : 高周波連続誘導式、並列2重系 ATO:地点検知車上演算方式、待機2重系(地下鉄線内) ATS-SK : 電圧レベル検知方式(JR筑肥線内) [6][3] |
福岡市交通局4000系電車(ふくおかしこうつうきょく4000けいでんしゃ)は、福岡市交通局(福岡市地下鉄)の通勤形電車。
概要

1981年(昭和56年)の福岡市地下鉄開業以来(当時は1号線)、1000系およびそのリニューアル車である1000N系が使用されてきたが、製造より40年を迎えることから、後継車両を導入することとされた[1]。のちに形式が「4000系」となることが発表された[11]。
1000N系の老朽化に伴う置き換え用として導入され、2024年度から2027年度にかけて1000N系と同数の6両編成18本(108両)が導入される予定であり、製造は川崎車両が全車を担当する[1][2][3]。2024年度は3本、2025年度から2027年度までは5本ずつの導入を計画している[12]。
2024年(令和6年)4月24日に最初の編成[注 1]が川崎車両より甲種輸送され、姪浜車両基地へ搬入された[13]。同年10月27日、最初の編成が姪浜駅にて開催された見学会に出展され、初めての一般公開となった[14]。同年11月29日には営業運転が開始された[15][16]。
本形式は1992年(平成4年)に登場した2000系以来、空港線・箱崎線用の車両としては32年ぶりの新型車両となる[17]。
2025年(令和7年)には鉄道友の会よりローレル賞を受賞した[18]。
車両概説
本形式は「一人ひとりにやさしい移動空間~福岡の次世代へ向けて~」をコンセプトにサービス面、静粛性、安全性と安心の確保、省エネと省メンテナンスを重点に置いて設計された[19]。
車体
車体は、全長20 m(車体長19.9 m)全幅2.86 m 全アルミ合金製ボギー客車である[7][8][9][3]。
前面形状は切妻形状であり、運転席前方の視認性やメンテナンスの向上を図っており、先頭部屋根側はアーチ構造とし、前面部・側面部のオフセット衝突の強化をするとともに意匠性を向上させている[19][5][20]。
車体配色は既存の1000N系・2000N系に準じたブルーのラインを継承しつつ、「空の玄関口」となる福岡空港と希望の未来をイメージしたスカイブルーのラインを新たに車体中央部へ配したものとした[11][2][19]。
内装
座席は既存車同様のロングシートとしたが、一般席は1人あたりの座席幅を国内最大級の 480 mm [注 2]として快適性を向上させた[11][2][20]。袖仕切りや荷棚などにガラスを用いることで明るさと広さを感じさせる空間としている[11][2][10]。
先頭車の車端部は片方を優先席、もう片方を車椅子・ベビーカースペースとした[11][10]。中間車の車端部は優先席または車椅子・ベビーカースペースで、優先席のうち片方は通常の座席よりも40 mm高くすることで、立ち座りのしやすさに配慮するほか、仕切りとなるひじ掛けを設置する(立ち座りしやすいシート)[11][2][10]。車内貫通扉には小さな力で開閉できるアシストレバーが取り付けられている[2]。
このほか、福岡空港・貝塚寄り先頭車となる6号車には「フリースペース」を設けている[20][10]。これは子供連れや車椅子・ベビーカー利用者およびキャリーバッグなどの大きな荷物を抱える利用者に配慮したもので、大型の荷物置き場や子供でも車窓を楽しめるよう、大型の窓を設置する。また、保護者などが2方向から腰掛けられる座席を配している[11][2][10]。
乗降扉は、車体片側4箇所に直流モーター駆動のラック・アンド・ピニオン式SY490571形・戸閉機で開閉する両開きドアを設け、幅は1,300mmとしてラッシュ時の乗降をスムーズにできる構造とした[3][7][8][9]。
車内案内表示装置は3画面の液晶ディスプレイ式となり、うち2画面を路線図や次駅等の案内用、残り1画面をニュースや広告用として用いる[11][2][20][21]。
車内防犯対策として、乗務員のほか、交通局の職員がリアルタイムで監視できるようにし、迅速な状況把握を行えるよう各車両に防犯カメラを4台ずつ設置する[11][2][3]。
空調装置は日立製作所製HRB504-14形集中式、能力は58.14kW (50,000kcal/h・CU731形) 品が搭載されている[21]。
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6号車海側に設けられた展望席。窓が通常より大きくなっているのがわかる。
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ドア上に設けられた3画面のLCD。
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仕切りが設けられ、座面が通常より高くなっている優先席。
乗務員室
乗務員室は視界を確保するため、非常用貫通開戸を右側に寄せている[20]。主幹制御器は左手操作式ワンハンドルマスコンを採用、デッドマン装置および力行ロック解除機能を搭載し、操作性の向上を図っている[20]。速度計や圧力計といった計器類、保安表示灯類は廃し、これらは液晶ディスプレイ(LCD)画面に表示するグラスコックピットを採用している[20][注 3]。
走行機器など
主電動機に営業列車への本格導入としては世界初となる同期リラクタンスモーターを採用した[11][2]。既存車両のかご形三相誘導電動機と比較してさらに高効率になっており、使用電力量は約20%の削減を見込んでいる[11]。また、全閉式となっているため、塵埃の侵入を防ぎ、内部清掃の省力化が図られている。[2]。制御装置は三菱電機製の2レベルハイブリッドSiC素子を使用したVVVFインバータ制御を採用した[21][22]。
台車は日本製鉄製のリンク式片軸操舵台車とし、曲線部通過時の走行安定性の向上、および走行音の軽減を図った[11][2]。基礎ブレーキについては非操舵軸(固定軸)は一般的な踏面ブレーキ方式(ユニットブレーキ)だが、操舵軸は1軸2枚のディスクブレーキ方式とされた[3]。
また、運行中の車両を遠隔監視できるものとして車両情報監視システムを導入する。これにより、車両故障などの運行障害が生じた場合に迅速な対応ができるものとしている[11][2]。
補助電源装置はIGBT素子を使用した静止形インバータ(SIV)を1編成で2台搭載する(富士電機製CDA2105形)[21][3]。定格容量は160kVA、出力電圧は三相交流440V,60Hzのほか、単相交流200V、100V,60Hz、直流100V、24Vが出力される[21][3]。
空気圧縮機(CP)は潤滑油が不要なオイルフリー式スクロール式を採用した(RR16T形・吐出量 1,360 L/min)[23][21][3]。装置はナブテスコ製で、1台の機器箱に2台のCPおよび周辺機器が収納されたもので、これを1編成で2ユニット搭載した[23][21][3]。
編成表
← 筑前前原・姪浜
貝塚・福岡空港 →
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||||||
号車 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 |
---|---|---|---|---|---|---|
形式 | 4100形 (Mc1) |
4200形 (M2) |
4300形 (M3) |
4400形 (M4) |
4500形 (M5) |
4600形 (Mc6) |
機器配置 | BT | VVVF | SIV,CP | SIV,CP | VVVF | BT |
車両重量 | 33.3 t | 31.5 t | 31.6 t | 33.4 t | ||
車両定員 | 134名 (座席39名) |
145名 (座席45名) |
135名 (座席33名) |
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車両番号 | 4125 : |
4225 : |
4325 : |
4425 : |
4525 : |
4625 : |
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凡例
- VVVF:VVVFインバータ装置(1C1M×6群)、SIV:補助電源装置、CP:空気圧縮機、BT:蓄電池
運用

2024年4月24日に前述の通り最初の編成が搬入され[13]、同年5月20日より試運転が開始された[24]。同年11月29日に姪浜駅で出発式を行い、同日の姪浜15:00発福岡空港行きより営業運転が開始された[4]。
地下鉄空港・箱崎線内のほか九州旅客鉄道(JR九州)筑肥線の姪浜駅 - 筑前前原駅間への直通運転にも使用される[11][2][15]。
注釈
- ^ 4125 - 4225 - 4325 - 4425 - 4525 - 4625。
- ^ 優先席は1人あたりの座席幅 470 mm、立ち座りしやすいシートは485 mm。
- ^ ただし、架線電圧計、バッテリー電圧計はアナログ計器として運転席左上部に設置されている。
出典
- ^ a b c 福岡市交通局向け地下鉄車両を受注
- ^ a b c d e f g h i j k l m n o 福岡市地下鉄空港線・箱崎線の新型車両4000系を報道公開、写真93枚
- ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s t u v w x y z aa ab ac ad ae RF765 江村 p.53
- ^ a b 福岡市地下鉄で新型車両「4000系」出発 「青い食パン」と話題に(毎日新聞)
- ^ a b c RF765 江村 p.49
- ^ a b c d e f g h i j 車両情報 4000系(福岡市交通局)
- ^ a b c d e f g h i j k l m n RF765 福岡市交通局 制御電動客車 形式4100(Mc1) 付図
- ^ a b c d e f g h i j k l m n RF765 福岡市交通局 制御電動客車 形式4600(Mc6) 付図
- ^ a b c d e f g h i j k l m n RF765 福岡市交通局 電動客車 形式4200(M2) 付図
- ^ a b c d e f g RF765 江村 p.51
- ^ a b c d e f g h i j k l m n 地下鉄空港線・箱崎線 新しい車両が決定しました!!
- ^ 令和7年度当初予算案等の概要
- ^ a b 福岡市交4000系が甲種輸送される
- ^ 地下鉄 空港線・箱崎線 新型車両4000系の見学会を開催します!
- ^ a b 地下鉄 空港線・箱崎線 新型車両4000系 運行開始日決定!
- ^ 福岡市地下鉄 新型車両が空港線営業運転開始 姪浜駅で出発式
- ^ 座席ゆったり国内最大級…福岡市地下鉄に新型車両デビュー 小さな子供が車窓楽しめる工夫も 32年ぶりに新規導入(テレビ西日本)
- ^ “2025年 ブルーリボン・ローレル賞選定車両”. 鉄道友の会 (2025年5月22日). 2025年5月22日閲覧。
- ^ a b c RF765 江村 p.48
- ^ a b c d e f g RF765 江村 p.50
- ^ a b c d e f g RF765 江村 p.52
- ^ 三菱電機『三菱電機技報』2025年2月号「福岡市交通局4000系向けVVVFインバータ―装置」 (PDF) (p.2-1-03)。
- ^ a b 日本鉄道車輌工業会「鉄道車両工業」2018年1月号(485号)会員会社紹介「ナブテスコ株式会社」44Pに「RR16T形」空気圧縮機がナブテスコの製品として解説している。
- ^ 【4000系の試運転を実施】(福岡市地下鉄【公式】)
参考文献
- 交友社『鉄道ファン』通巻765号(2025年1月号)
- 福岡市交通局 運転車両部 車両課 江村卓朗「空港線・箱崎線1000N系置換え用新形車両 福岡市交通局4000系」 pp. 48 - 53
- 編集部「福岡市交通局 制御電動客車 形式4100(Mc1) 付図」
- 編集部「福岡市交通局 制御電動客車 形式4600(Mc6) 付図」
- 編集部「福岡市交通局 電動客車 形式4200(M2) 付図」
Web資料
- 『福岡市交通局向け地下鉄車両を受注』(プレスリリース)川崎車両、2022年2月7日。オリジナルの2022年2月7日時点におけるアーカイブ 。2024年6月4日閲覧。
- 『地下鉄空港線・箱崎線 新しい車両が決定しました!!』(PDF)(プレスリリース)福岡市交通局、2023年11月30日 。2024年6月4日閲覧。
- “福岡市交4000系が甲種輸送される”. 鉄道ファン (交友社). (2024年4月25日) 2024年6月4日閲覧。
- @Chikamaru_info (2024年5月20日). "【4000系の試運転を実施】(福岡市地下鉄【公式】)". X(旧Twitter)より2024年6月4日閲覧。
- “地下鉄 空港線・箱崎線 新型車両4000系の見学会を開催します!”. 福岡市. (2024年10月10日) 2024年10月27日閲覧。
- “福岡市地下鉄空港線・箱崎線の新型車両4000系を報道公開、写真93枚”. マイナビ (2024年10月23日). 2024年10月24日時点のオリジナルよりアーカイブ。2024年10月24日閲覧。
- “地下鉄 空港線・箱崎線 新型車両4000系 運行開始日決定!”. 福岡市交通局. (2024年11月15日) 2024年11月15日閲覧。
- “福岡市地下鉄 新型車両が空港線営業運転開始 姪浜駅で出発式”. NHK. (2024年11月29日) 2024年11月30日閲覧。
- 「福岡市地下鉄で新型車両「4000系」出発 「青い食パン」と話題に」『毎日新聞』2024年11月29日。オリジナルの2024年11月29日時点におけるアーカイブ。2024年11月29日閲覧。
- 「座席ゆったり国内最大級…福岡市地下鉄に新型車両デビュー 小さな子供が車窓楽しめる工夫も 32年ぶりに新規導入」『』テレビ西日本、2024年11月29日。オリジナルの2025年3月18日時点におけるアーカイブ。2025年3月19日閲覧。
- “車両情報 4000系”. 福岡市交通局. 2024年11月23日時点のオリジナルよりアーカイブ。2023年4月6日閲覧。
- 『令和7年度当初予算案等の概要』(PDF)(レポート)福岡市交通局、4頁 。2025年3月23日閲覧。
外部リンク
4000系車両 - 福岡市交通局
- 福岡市交通局4000系電車のページへのリンク