保安ブレーキとは? わかりやすく解説

Weblio 辞書 > 同じ種類の言葉 > 工業 > 装置 > ブレーキ > 保安ブレーキの意味・解説 

保安ブレーキ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/02/16 02:43 UTC 版)

保安ブレーキ(ほあんブレーキ)は、日本の鉄道車両に備えられているブレーキ装置の1つで、常用のブレーキ装置が故障した時に用いられる多重化されたバックアップ用のものである。

背景

1971年(昭和46年)に富士急行(当時)大月線で、踏切に進入してきたトラックが列車と衝突し、列車の空気溜めを損壊してブレーキが全く使えなくなったことにより、列車が勾配区間を暴走して脱線転覆する事故が発生した[1][2]。この教訓から、通常のブレーキ系統とは独立した保安ブレーキを設けることになった[1][2]

2001年(平成13年)からは単行運転する旅客車(両運転台付車両)では、保安ブレーキの二重化が義務付けられている[1][2]。これは2001年2月に西日本旅客鉄道(JR西日本)越美北線で、踏切に進入してきた乗用車が列車と側面衝突し、列車のブレーキ配管などを損傷、非常ブレーキのほか保安ブレーキも使用できなくなり、列車が2 km逸走したため[1][2]

機構

保安ブレーキの機構は、常用ブレーキと同様に空気圧によりブレーキシリンダーを動かし、制輪子を車輪に押し当てて制動力を得る仕組みとなっている。このブレーキシリンダーや制輪子に関する基礎ブレーキ装置の部分は、常用ブレーキと共用となっている。空気圧を蓄積している空気だめが常用ブレーキとは別に独立して設置されており、常用ブレーキ系統からの空気圧とは逆止弁によって隔離する形で、1つのブレーキシリンダーに空気圧を供給している。

保安ブレーキの制御は電気制御式、空気圧制御式、非常ブレーキの回路を指令回路に利用した方式などがある。

JRグループにおいては、電気制御式でオン電磁弁を用いた方式のことを直通予備ブレーキ(ちょくつうよびブレーキ)と称している。

法制

鉄道に関する技術上の基準を定める省令の解釈基準においては、電車気動車など、動力分散方式の車両に関して保安ブレーキの装備を求めている。一方、機関車客車貨車など動力集中方式の車両にはこの義務はない。また保安ブレーキを装備していて、これにより留置中の車両の転動を防止できる車両は、留置ブレーキの設置を免除されている。

新幹線の補助ブレーキ

新幹線車両では常用ブレーキ、非常ブレーキとも故障が発生した際、電圧指令を直接電空変換弁に与えることで、空気ブレーキを制御する機能を補助ブレーキと呼ぶ[3][4]。保安ブレーキとは異なり、4段階(200系)または3段階(100系)のブレーキ力を制御することで、ごく低速での走行が可能となる[3][5]

ただし、N700系以降の東海道・山陽新幹線車両ではバックアップ用に予備指令回路を新設することで補助ブレーキは廃止している[6]。東北・上越新幹線車両ではE5系E6系以降、補助ブレーキを廃止している[7][8]

脚注

  1. ^ a b c d 鉄道に関する技術基準(車両編)における基礎知識(8)-ブレーキ装置」 (PDF) 」(一般社団法人日本鉄道車輌工業会・インターネットアーカイブ)。
  2. ^ a b c d 公益財団法人鉄道総合技術研究所「車両ニュースレター」2014年1月号解説「ブレーキシステムの変遷と多重化への経緯」(インターネットアーカイブ)。
  3. ^ a b 日本エヤーブレーキ『ナブコ技報』No.53(1982年1月)「JNR200系新幹線のブレーキシステムについて」pp.27 - 33。
  4. ^ 車両電気協会『車両と電気』1986年4月号新幹線シリーズ「100系電車『ニュー新幹線!』(完)」pp.28 - 33。
  5. ^ 日本地下鉄協会『SUBWAY』1997年5月号車両紹介「E2、E3新幹線車両の開発経緯」pp.42 - 45。
  6. ^ 交友社『鉄道ファン』2005年5月号新車ガイド「JR東海・JR西日本N700系量産先行試作車」p.81。
  7. ^ 交友社『鉄道ファン』2011年4月号新車ガイド2「JR東日本E5系量産車」p.112。
  8. ^ 交友社『鉄道ファン』2013年2月号新車ガイド1「JR東日本E6系量産車」p.60。

参考文献

  • 電気鉄道ハンドブック編集委員会 編『電気鉄道ハンドブック』コロナ社、2007年。ISBN 978-4-339-00787-9  pp.191 - 192

関連項目


保安ブレーキ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/09/05 05:34 UTC 版)

鉄道のブレーキ」の記事における「保安ブレーキ」の解説

「保安ブレーキ」も参照 保安ブレーキは、他のブレーキ系統故障などにより使えなくなった場合用いられるバックアップブレーキである。JRグループにおいては、この種のブレーキのことを直通予備ブレーキとも呼ぶ。また、留置中の車両動き出さないようにする目的でもこのブレーキ用いられる。この場合留置ブレーキなどと呼ばれることもある。通常のブレーキ系統とは独立した系統になっている一部車両では、ばねなどの働きにより制輪子常時車輪押し付けられる機構になっており、これを空気圧により抑えておくことでブレーキ解除して走行し空気圧抜けると特に保安ブレーキの操作をしなくても自動的にブレーキが掛かる仕様になっているものがある。これは、運転士車両留置時に保安ブレーキの使用忘れた場合でも、ブレーキ管の空気圧抜けて通常のブレーキが効かなくなった時点自動的に保安ブレーキが作動するフェイルセーフ機構となっている。 新幹線では、保安ブレーキに類似する補助ブレーキ装備している。

※この「保安ブレーキ」の解説は、「鉄道のブレーキ」の解説の一部です。
「保安ブレーキ」を含む「鉄道のブレーキ」の記事については、「鉄道のブレーキ」の概要を参照ください。

ウィキペディア小見出し辞書の「保安ブレーキ」の項目はプログラムで機械的に意味や本文を生成しているため、不適切な項目が含まれていることもあります。ご了承くださいませ。 お問い合わせ



保安ブレーキと同じ種類の言葉


英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「保安ブレーキ」の関連用語

保安ブレーキのお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



保安ブレーキのページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアの保安ブレーキ (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。
ウィキペディアウィキペディア
Text is available under GNU Free Documentation License (GFDL).
Weblio辞書に掲載されている「ウィキペディア小見出し辞書」の記事は、Wikipediaの鉄道のブレーキ (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。

©2025 GRAS Group, Inc.RSS