マスター・コントローラーとは? わかりやすく解説

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マスター・コントローラー

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/04/17 00:20 UTC 版)

マスター・コントローラー(Master controller,「マスコン」と略される)は、鉄道車両の出力・速度を遠隔制御するスイッチ装置であり、一般に鉄道車両の運転台に設置される。日本語では「主幹制御器」と翻訳される。


注釈

  1. ^ 電気車で、主回路切換えを運転者が直接行うものは「直接制御器」(後述)である。内燃車で、エンジンや変速機の操作をワイヤーやリンク機構で運転者が直接行うものについても、運転者が操作するものは「スロットル(又は燃料制御ハンドル)」「変速レバー(又は変速ハンドル)」などとなる。
  2. ^ 用語の意味を理解して執筆・編集された文献ではこのような誤りはない。例えば、1980年代保育社が発行した『私鉄の車両』シリーズ(2005年ネコ・パブリッシングから復刻版発行)は、上掲の広島電鉄編・名古屋鉄道編を含めいずれも「直接制御器」「主幹制御器」「マスター・コントローラー」等の用語を明確に区分して使用しており、上記のような誤用はない。直接制御器・主幹制御器を含めて運転台の制御器全般を指す場合は、単に「制御器」「制御器ハンドル」「コントローラー」などと表現している。吉谷和典 『第二すかたん列車』(日本経済評論社、1987年)における用語法も同様である。
  3. ^ 直接制御器を解説する際、誤って「この主幹制御器(あるいはマスコン)はXXXX形直接制御器である」と記述してしまうと意味の成り立たない誤文となってしまう。正しい表現は、「この制御器(あるいはコントローラー)はXXXX形直接制御器である」となる。
  4. ^ 車両間に架線電圧を扱うジャンパ線を引き通せば、物理的には一応可能であり、過去には蒲原鉄道などで直接式制御器搭載の小型電車に制御車を連結するために用いられた例があった。また、広島電鉄70形電車がそうであるように、電装品の絶縁処理やスイッチ機構の小型化に自信があったヨーロッパ、特にドイツのメーカーでは、2/3車体連接式の路面電車に超多段式の直接式制御器を搭載するケースが少なからず存在した(広島電鉄70形電車の例について、飯島巌、青野邦明、荒川好夫 『復刻版 私鉄の車両3 広島電鉄』 ネコ・パブリッシング、2002年、p.128 を参照)。
  5. ^ この機構についてはFrank E Caseを発明者として“Pneumatic system of motor control.”(US 795024 A)として1905年に、John B Linnを発明者として“Pneumatic train-control system.”(US 809707 A)の名で1906年に、それぞれ合衆国特許が成立しており、同時期にはそのほかにも様々な特許がGE社を出願者として取得されている
  6. ^ 厳密には抵抗器を挿入して降圧の上で使用する。また、直流1,500 V電化線区では電動発電機を用いて給電した。
  7. ^ この技術はFrank E Caseを発明者として“Pneumatically-operated cam-controller.”の名で1917年に合衆国特許(US 1221676 A)を取得している。
  8. ^ 1907年発売。比較的小型にまとめられながら耐久性に優れ、戻しバネを搭載しているため運転者が手を離すとノッチオフとなる安全性を備えていた。用途に応じて、低圧電源(14-32V)、100V、架線電圧(600V)と様々な電圧に対応でき、GE系以外の間接制御器を総括制御することにも適応できた。このため長年にわたるロングセラーとなり、名古屋鉄道の実務畑出身の鉄道研究者である白井昭はC36を「マスコンの王様」と評している。
  9. ^ 当初12/24Vバッテリーからの給電に依存していたため、このように命名された。アメリカではブレーキの電磁弁を駆動するのに用いられるのと共通の、32V動作のモデルが一般的に用いられていた。日本でも当初は南海鉄道電2形などでバッテリーが制御器の電源として使用されたが、電解液の補充や電極のメンテナンスなど煩雑な保守に手を焼き、早い時期に出力電圧選定の自由度の大きな電動発電機が多用されるようになった。そのため、長大編成化の際に電圧降下による誤動作が起こりにくい100V動作の高電圧モデルが広く普及した。
  10. ^ DBI-K4など。日本の路面電車で現在も標準的に使用されている三菱電機KR-8形制御器などの原型となったモデル。
  11. ^ 201系電車205系電車211系電車は民鉄と同様に、引いて力行、押してノッチオフである。
  12. ^ これらはいずれも日本と異なる縦軸式である。
  13. ^ なお、伊東線には伊豆急行から8000系が乗り入れており、これはJRの路線上で両手式ワンハンドルマスコン搭載車が走る唯一の事例である。
  14. ^ これは、京急800形と伊豆箱根3000系がほぼ同時期に東急車輛で開発されていた為であるが、伊豆箱根3000系の動作表示灯の表示方式は親会社の西武鉄道の様式を採用している。
  15. ^ ただし50000形以降のロマンスカーは、左手式を採用している。
  16. ^ ヨーロッパの路面電車車両では、ブレーキとして電磁駆動式のブレーキ(安全のため、ブレーキ力はバネを使用する)が使われることが多かったことも背景にある
  17. ^ 操作面以外では、東海道新幹線の設計陣に機関車担当者が多かったことや、新幹線を担当する運転士に機関車乗務経験者が多かったためという説も存在する。
  18. ^ 路面電車をメインとした「がんばれ運転士!!」を除く。なお、2017年11月に稼動開始した新シリーズは左手ワンハンドル式となっている。
  19. ^ 201系は基礎ブレーキ装置はSELR電磁直通ブレーキだが、保安ブレーキとしてCL自動空気ブレーキを搭載している
  20. ^ 2000形3050形5050形6000形。なお、2000形・5050形・6000形はATOによる運転がなされているため、通常はマスコンを使用しない。
  21. ^ 同形式のみ採用。8900形以降は両手ワンハンドルに移行したが、その後のN800形80000形の各型式でそれぞれ段数が異なる。
  22. ^ ツインレバーながら電気制動はマスコンと共用されている。もう片方(右側)は空気制動である。
  23. ^ 方南町支線用は製造当初から、丸ノ内線用はワンマン装置とATO装置が取り付けられると同時にワンハンドルマスコンに変更されている。
  24. ^ このほか、日本国外では台湾高速鉄道700T型電車が横軸ツーハンドル式を採用している。
  25. ^ もっとも、異なるJRどうしの直通運転の場合、マスコンの形状は自社の標準仕様のまま他社への直通運転に充てることがほとんどである。例えばJR東海東海道本線名古屋 - 米原間(回送列車を含めれば熱田 - 米原間)では縦横併用型ツーハンドル(311系など)・横軸ツーハンドル(681系683系285系などのJR西日本所属の車両)・左手ワンハンドル(313系など)の車両が混在している。さらに臨時列車を加えれば、ムーンライトながら185系などの国鉄型車両のように、縦軸ツーハンドルの車両も存在する。2016年3月ダイヤ改正以前は(JR西日本に在籍しない)左手ワンハンドルマスコンの車両である383系大阪駅まで乗り入れていた。なお、ワンハンドルマスコン車のJR西日本への乗り入れは、2022年12月よりHC85系がJR西日本エリアに乗り入れたことにより復活している。
  26. ^ 銀座線や丸ノ内線では在来車のATC化改造を避けるため、また日比谷線では全電動車方式でランニングコストが高く付くほか、初期のステンレス車体の老朽化が著しかったことに加え、3路線とも車両冷房が装備されていなかったこともあり短期間で置き換えた。これに対し5000系は国鉄103系電車に範を取った経済車であり、車両冷房の取り付け改造も実施されている。
  27. ^ ごく短い期間東西線で運用されていた8000系も、東西線で運用されていた間は縦軸ツーハンドルであった。本来の運用線区である半蔵門線に移動する時にワンハンドル化された。
  28. ^ その後、2020年にワンハンドルマスコンに統一された。
  29. ^ ただしブレーキ方式(電磁直通ブレーキと自動空気ブレーキ、回生もしくは発電ブレーキの有無等)等は混在
  30. ^ ただし3000形が回生併用電気指令式ブレーキ、名鉄100系は発電併用電磁直通ブレーキであり、ブレーキ方式が異なる。
  31. ^ 同じ年に、名鉄3500系が登場したため、名鉄犬山線の上小田井 - 犬山間に限れば3種類の異なるマスコンの車両が運用されていた。
  32. ^ 名鉄に在籍する電車に横軸ツーハンドルの車両は存在しないため、3050形が唯一名鉄に乗り入れる横軸ツーハンドルマスコンの車両となる。

出典

  1. ^ a b c 鉄道ファン』1983年9月号(No.269) pp.110-112
  2. ^ 吉谷和典 『第二すかたん列車』(日本経済評論社、1987年。著者は元大阪市電乗務員) p.203,p.206,pp.209-215 などを参照。
  3. ^ a b 飯島巌、白井良和、井上広和 『私鉄の車両11 名古屋鉄道』 保育社、1985年、pp.148-149,p.158 及び 飯島巌、青野邦明、荒川好夫 『復刻版 私鉄の車両3 広島電鉄』 ネコ・パブリッシング、2002年、pp.126-128などを参照。
  4. ^ a b c 小川裕夫 『路面電車で広がる鉄の世界 - チンチン電車と都市計画がわかる本』 秀和システム、2012年、p.76
  5. ^ a b 鉄道ピクトリアル』1994年7月臨時増刊号(No.593) p.74
  6. ^ 吉谷和典 『第二すかたん列車』(日本経済評論社、1987年) p.203,pp.213-214,p.264
  7. ^ 『鉄道ピクトリアル』1994年7月臨時増刊号(No.593) p.82
  8. ^ 吉谷和典 『第二すかたん列車』(日本経済評論社、1987年) p.165
  9. ^ 日立製作所『日立評論』1952年7月号「高速電車用電空併用ブレーキ方式とその試験結果 (PDF) 」pp.289 - 290・303。
  10. ^ 日立製作所『日立評論』1953年1月号「〔XVIII〕鉄道車両 (PDF) 」pp.289 - 290・303。
  11. ^ ネコ・パブリッシング RMライブラリー171「名古屋市電(中)」pp.15 - 17。
  12. ^ a b 日本鉄道運転協会『運転協会誌』1975年11月号「ワンハンドルについて」pp.16 - 19。
  13. ^ 東京地下鉄道千代田線建設史』帝都高速度交通営団、1983年6月30日https://metroarchive.jp/content/ebook_chiyoda.html/ p.890。
  14. ^ a b 鉄道ファン』 1992年9月号 p.108
  15. ^ ただし、2016年3月25日までJR東海383系電車大阪駅まで乗り入れており、2022年12月1日からはJR東海HC85系気動車高山本線富山駅まで、また2023年3月18日からも大阪駅まで乗り入れており、JR西日本の路線上でワンハンドルマスコン搭載車の運用が存在する。
  16. ^ 広島電鉄(株)電車カンパニー車両課「広島電鉄5000形」『鉄道ファン』第460号、交友社、1999年8月。 
  17. ^ 同一の運用に入るJR四国8000系と共通仕様にするため採用された。


「マスター・コントローラー」の続きの解説一覧

マスター・コントローラー

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/17 08:38 UTC 版)

上信電鉄250形電車」の記事における「マスター・コントローラー」の解説

主幹制御器はワンハンドル式の1000形6000形とは異なり力行のみ4ノッチとした縦軸マスコン採用した

※この「マスター・コントローラー」の解説は、「上信電鉄250形電車」の解説の一部です。
「マスター・コントローラー」を含む「上信電鉄250形電車」の記事については、「上信電鉄250形電車」の概要を参照ください。


マスター・コントローラー

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/04/11 16:00 UTC 版)

レバー (操作機具)」の記事における「マスター・コントローラー」の解説

レバーと名はつかないが、レバー一種である。

※この「マスター・コントローラー」の解説は、「レバー (操作機具)」の解説の一部です。
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